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【第308号】『チェンソーマン』と新しい貧困とジャンプシステム(その2)
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【第308号】『チェンソーマン』と新しい貧困とジャンプシステム(その2)

2021-01-27 07:00
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    マクガイヤーチャンネル 第308号 2021/1/27
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    おはようございます。マクガイヤーです。

    緊急事態宣言を受けて、自分が通っていた全ての映画館でレイトショー上映が無くなってしまいました。

    ほとんどの映画をレイトショーで観ていたので、辛いです。

    仕方が無いので日中に映画館に行くと、明らかにレイトショー上映よりも人が多いです。ウイルスは夜行性じゃないのだから、レイトショー上映辞める必要無いのに……と思っちゃいましたね。


    マクガイヤーチャンネルの今後の放送予定は以下のようになっております。



    〇2月8日(月)19時~「私小説としての『エヴァンゲリオン』と『ヱヴァンゲリヲン』 接触編」

    2021年1月23日より公開予定だった『シン・エヴァンゲリオン劇場版』が公開延期となりました。「ヱヴァンゲリヲン新劇場版」の四作目にして、1995年にTVアニメとして発表された『エヴァンゲリオン』から続くシリーズ全体の最終作ですが、新型コロナウイルス禍を受けての公開延期だそうです。

    TVアニメ放送当時にちょうど二十歳だった自分にとって『エヴァンゲリオン』は思い入れ深い作品です。庵野秀明(総)監督にとっての私小説ともいえる作品で、庵野が生きている限り新作がされ続けるものと思っていましたが、8年ちょっとぶりに公開される新作映画がしっかり最終作となることに、感慨深いものがあります。


    そこで、『シン・エヴァンゲリオン劇場版』の予習として、TVアニメから『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』まで、『エヴァンゲリオン』シリーズ全体を解説するようなニコ生を行います。


    ゲストとして編集者のしまさん(https://twitter.com/shimashima90pun)をお迎えしてお送り致します。



    〇2月21日(日)19時~「最近のマクガイヤー 2021年2月号」

    詳細未定

    いつも通り最近面白かった映画や漫画について、まったりとひとり喋りでお送りします。



    〇藤子不二雄Ⓐ、藤子・F・不二雄の作品評論・解説本の通販をしています

    当ブロマガの連載をまとめた藤子不二雄Ⓐ作品評論・解説本『本当はFより面白い藤子不二雄Ⓐの話~~童貞と変身と文学青年~~』の通販をしております。

    https://macgyer.base.shop/items/19751109


    また、売り切れになっていた『大長編ドラえもん』解説本『大長編ドラえもん徹底解説〜科学と冒険小説と創世記からよむ藤子・F・不二雄〜』ですが、この度電子書籍としてpdfファイルを販売することになりました。

    https://macgyer.base.shop/items/25929849


    合わせてお楽しみ下さい。




    さて、今回のブロマガですが、前回書いた『チェンソーマン』まとめの続きです。



    ●マキマさんとは何者か

    高度経済成長期の格差社会が『あしたのジョー』『男一匹ガキ大将』『リングにかけろ』を産んだように、「失われた30年」の格差社会が『チェンソーマン』を産んだ……そんなふうに考えるとスッキリしますが、ことはそう単純ではありません。


    『チェンソーマン』で誰もが気になるキャラクターとして、主人公の上司であり公安特異4課のリーダーであるマキマが挙げられるでしょう。自分の目的を果たすためには他人の命をなんとも思わないシビアさと、デンジが一目ぼれするほどの女性的魅力を持ち合わせています。劇中人物のみならず、読者である我々も、思わず「マキマさん」と呼んでしまうほど、圧倒的なキャラクターです。




    以下、単行本派にとってのネタバレ。




    マキマの正体は、内閣総理大臣と契約を結んだ『支配の悪魔』でした。デンジにあえて公安の同僚(や敵)との愛や友情を与え、取り上げることで、人間でも悪魔でも魔人でもない「チェンソーマン」に心の傷を負わせ、支配しようとしていたのでした。


    ここで、どうしても頭に思い浮かんでしまうのは、編集者と漫画家の関係性です。

    チェンソーマンであるデンジに、マキマは「私はあなたのファンです」と語りかけます。「昔から先生のファンです」とか「私が先生の一番最初のファンということになりますかね(笑)」とかいった台詞は、編集者が漫画家を籠絡しようとする常套句ではありませんか。

    また、伝統的に新人発掘を重視するジャンプでは、最初の持ち込み時に対応した編集者がその後の担当となります。編集者が出世し、担当が変わっても、持ち込み時の編集者との親子や子弟のような関係性は途切れません(ここら辺は『バクマン。』でも描かれましたし、前述した西村茂男と本宮ひろ志の関係性も同様でした)。

    つまり編集者は、何者でもなかった漫画家志望の貧乏な若者に、愛と友情……というか普通の生活を与え、漫画を描かせるわけです。漫画がヒットしたら、恋人を作らせ、クルマや家を買わせ、更に漫画を描かざるをえない状況を作るわけです。

    漫画家からみた編集者は「支配の悪魔」そのものではないでしょうか。


    や、あるいは、中間管理者兼プレイヤーであるアキが編集者で、マキマは編集長や漫画雑誌というシステムそのものの象徴なのかもしれません。


    これが普通の漫画家なら、他の雑誌や発表媒体に乗り換えればいいだけですが、「週刊少年ジャンプ」ではそうもいきません。

    ジャンプでデビューした作家は必ず集英社と専属契約を結ぶ――専属作家制度があるからです。

    つまり、「契約」です。



    ●専属作家制度とアンケート至上主義

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    しかし物理的に執筆できるかどうかは別として、物を書く人間にとっていろいろな雑誌や出版社から声がかかることは、それだけ自分の作品や才能が評価されていることの証しであり、何より嬉しいことのはずであった。

    また、担当編集者にとっても、自分がデビューにかかわった作家や漫画家が、評価され成長していくのは喜びであった。人気漫画家になれば、幾つかの出版社に執筆するのは、ごく自然なことであった。

    (中略)

    わたしも、中野も、加藤にしても、その出版社の常識の中で編集経験を積んできた人間であり、『少年ジャンプ』の作品執筆に支障をきたさないかぎり、あるいは『少年ジャンプ』の作品を最優先で考えてくれるかぎり、他紙執筆は時間の問題であるとしか考えていなかったのである。

    ところが、ここに出版界の常識を無視する考え方が登場することになる。

    長野が漫画家専属性なる、独断的な考えを披露したのである。

    (西村茂男 『さらばわが青春の『少年ジャンプ』』より)

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