あなたが、人との距離感に悩むのはどんな時ですか?
今回は、仕事として精神疾患を抱えた子供を支援するという方の相談をもとに、愛着理論について解説させてもらいます。
「Q. 愛着障害や自己愛性などの精神疾患の診断をされた小学生の支援をする仕事をするようになります。参考になる本やアドバイスをお願いします。」
愛着障害について学ぶのであればこちらの本が参考になると思います。
愛着障害の克服 「愛着アプローチ」で、人は変われる (光文社新書)
自己愛性障害については、そこまで必要になるのかどうかはわかりませんが、認知行動療法について学んでみるのもいいと思います。
僕はこちらの本が好きです。
専門家レベルの知識まで必要なのかどうかはわかりませんが、知識は別に専門家でなければ持ってはいけないということではありません。
もちろん免許がいるような医療行為は行なってはいけませんが、医療に関する知識も持っていてもいいと思います。
このような知識も勉強しておくのは良いと思います。
以上がDaiGo師匠からのアドバイスでした。
親と子供の距離感
人は幼少期の経験や環境によって人との距離の取り方が変わってきます。
これは愛着理論と言われますが、愛着理論はイギリスの児童精神分析学者John Bowlby氏が提唱したもので、人が生物として生まれつき備わっている自分の安全を確保しようとする本能に基づく違いです。
自分の愛着スタイルを理解すれば、人間関係における問題を改善する糸口を見つけることもできますし、他人の愛着スタイルを理解することができれば、相手がどんな時に不安を感じたり嫌な気分になるのかということも把握できて、職場でのマネジメントやプライベートでの人間関係にも役に立ちます。
子育てでは「自分は愛されている」「自分は守られている」という感覚を子供に自然と感じさせることが重要です。
もちろん親の育て方で子供の未来が大きく変わるということは基本的にはありませんが、守られている感覚を自然と感じられるように育ててあげないと、他人との距離の取り方が難しくなってしまいます。
生まれた子供が養育者との間で愛着(アタッチメント)が形成されることが、将来安定した対人関係をつくりあげる礎になるというのが愛着理論です。
自分を助けてくれる人がいるという自信を持った状態で、様々な人と関わる広い世界に出て行くことによって、人間関係からさまざまなことを学んでいくことができます。
もしこの時に親から守られている感覚がない状態で育ってしまうとさまざまな問題を抱えてしまいます。
子供は生後6ヶ月の頃から親の反応に合わせて自分の行動を決めていくと言われています。
ですから、そんな幼い頃からの親の接し方が将来の行動に影響を与えていくわけです。
ということは、仕事でもプライベートでも関わる相手の幼い頃の親との接し方によって、その人の対人関係の距離の取り方がある程度理解できます。
この個人差を、回避型、安定型、不安型の3タイプに分類する枠組みが作られましたが、現在では、これに別の研究者による無秩序型を加えた4タイプで人のアタッチメントを分類することが一般的です。
幼い頃の親との関係から大人になってからの人間関係を予測したり、逆に人間関係における接し方から幼い頃の親との関係を予測することもできます。
過去を変えることはできませんが、自分も他人も愛着スタイルを理解することで、どのように対処すればいいのかということも見えてきます。
それぞれ4つのタイプに明確に区別されるわけではなく、基本的には、それぞれグラデーションのようになっていますが、大きくは次の8つのタイプのいずれかに人は分類されるとされています。
不安型・回避型とも低く、もっとも安定したタイプ
不安型の傾向がみられるが、全体には安定したタイプ
回避型の傾向がみられるが、全体には安定したタイプ
不安型が強く、対人関係に敏感なタイプ
不安型が強いが、ある程度適応力があるタイプ
回避型が強く、親密な関係になりにくいタイプ
回避型が強いが、ある程度適応力があるタイプ
不安型回避型とも強く、傷つくことに敏感で疑り深くなりやすいタイプ
以下に示す質問は、主に幼少期の経験に基づいて、個人がどのように愛着関係を形成するかを判断するのに役立ちます。
なんとなくで構いませんので自問自答してみてください。
質問1:子供の頃、あなたはどのような感覚を持っていましたか? 両親があなたのニーズに対応するかどうか、不安に感じましたか?
質問2:あなたは、不安定な感情を持っていますか? 例えば、不安、うつ病、怒り、自己犠牲、自分を理解されていないと感じることがありますか?
質問3:新しい人々と会ったとき、あなたはどのように反応しますか? 自分を開放して、素直に感情を表現することができますか?
質問4:あなたはどのように、親しい人たちと過ごすことを好みますか? 一人でいることが好きで、親しい人たちと時間を過ごすことが苦手ですか?
これらの質問に回答することで、愛着スタイルをある程度は判断することができます。
1.安定型
基本的にはこの安定型を目指すことが重要です。
全体人口の6割ほどが安定型だと言われています。
幼い頃に親に対して素直に頼ることができて、ひとりになると当然寂しいとは感じますが、親と一緒の場面では積極的に親に頼ったり甘えることができます。
子供が親に頼るのは当たり前のことですが、この当たり前の状況が安定型を作ります。
安定型は大人になってからも人間関係での問題を抱えづらいと言われています。
親は子供が可愛いからといって過保護になって外の世界は危険だからといって外出を禁止したりはしません。
ひとりの人間として外出したり自分のしたいこともさせるけれど、外の世界から帰ってきた時にはちゃんとそばにいてあげて安心や安らぎを与えてあげます。
ですから、子供が可愛いからといって過保護に育てると安定型にはなりません。
自由に外出させてあげたり冒険もさせてあげるけれど、家に帰ってきた時には安心感を与えてあげることが大切です。
安定型は親を信頼して育つので他人を信頼することができるようになります。
親を見て人を信用したり他人を頼ることができるということを学ぶので、それによって自尊心が身について、大人になってからも自分の考えや言いたいことをちゃんと口に出すことができるようになります。
当然コミュニケーションも上手になって人間関係もうまくいきます。
もちろん愛着スタイルは性格特性と同じで個人ごとにグラデーションがあります。
100%安定型という人もいませんし、それそれが混ざり合っていることが多いです。
場面や状況によっても変わることもありますので、仕事では安定型だけれど恋愛では不安型になってしまうというパターンもありえます。
2.不安型
全体人口の10%ほどが不安型だと言われていて、子供の頃の特徴としては、親から離れることができないとされています。
親がいないと寂しがるのを通り越して、親がいなくなると激しく動揺してしまいます。
親が帰ってくると安心するのかと言うとそうではなく、そばにいてくれなかった親に対して怒ります。
不安型は親から離れることができず依存的になります。
親がいなくなると激しく動揺して、親が帰ってくると親に対して怒ります。
不安型は大人になってから依存的な恋愛をしやすくなります。
親から離れられない子供が大きくなると恋人やパートナーと離れられなくなります。
自分から大切な人が離れると感情的になります。
これは幼い頃に親が自分のニーズに答えてくれる時もあれば答えてくれない時もある状況が原因だと言われています。
親が自分を守ってくれる時もあれば守ってくれない時もあるとなると、子供は親に対して全幅の信頼を寄せることができなくなります。
自分が不安や恐怖を感じても親に正直に相談したり頼ることが難しくなります。
それにより自分が感じている不安や苦痛を誇張して親に一生懸命伝えようとします。
そして、相手に対する要望もどんどん膨らんでしまいます。
場合によっては依存的かつ粘着的な態度が増えます。
このような性質は大人になると当然コミュニケーションでの問題を抱えやすくなりますので、経済的な問題にも繋がります。
不安型の人は恋愛ではやばいパートナーから離れられなくなるという研究もあります。
ペンシルベニア州立大学の研究で、自分のことをケアしてくれなかったり、完全に冷めきっている関係であるにも関わらず、なぜか関係をズルズルと続けてしまうという人にはどんな特徴があるのかということを調べてくれています。
1,757人を対象に全員の愛着スタイルを調べています。
自分に自信がないので自分は常に嫌われるかもしれないと考えてしまい、パートナーがいて誰かに認められている状態でないと、自分が無価値な人間だと感じてしまう人が多いです。
自分に自信のない不安型の人ほど、どんなにダメな相手であったりダメな関係であったとしても、自分を彼氏や彼女としてある程度認めてくれる人が側にいないと不安でしょうがないという状態になり別れられないわけです。
ですから、結局のところダメな恋愛を終わらせることができない理由は何かというと、自分を認めることができていないからです。
目的が間違ったものであっても、自分を必要として認めてくれる人がいないと不安で不安でどうしようもなくなってしまうというのが、この不安型の人の特徴です。
不安型の人は、自分のことを認めてくれる人が周りにいない孤独を恐れすぎるあまりに、ダメな関係や、むしろ自分を傷つけるだけの関係であってもしがみついてしまいます。
不安型は仕事における面でもデメリットになります。
プライベートでも仕事でも対人関係で問題が起きたらちゃんと話し合って解決しなくてはなりません。
もちろん、関係が終わって二度と会わない可能性もありますが、ちゃんと話し合って乗り越えていかなくては自分が生きづらくなるだけです。
不安型の人は嫌われるのが怖くてひとりになるのが嫌なのでそれができません。
恐れるあまり人間関係の問題を解決しようとする意志が非常に弱くなります。
人間関係の問題に向き合うのが怖くて自分の人間関係を変えたくないわけです。
そのためダメな人間関係だとわかっていてもそれを維持してしまいます。
特に好きなわけでもない人と男女関係を持ったりすることも起こります。
不安型の人はストレスによって太りやすいという研究もあります。
マギル大学が行なった研究で、ストレス食いをしやすい人はどのような性格的な特徴があるのかということを調べたものがあります。ストレス食いについて調べた70件の論文から集めた19,407人分のデータを使ったメタ分析です。
相関としては、強い相関とまでは言えないけれど、間違いなく相関はあると言えるレベルでした(r = 0.266)。太ってしまう原因がそれだけだということはできないけれど、大きな原因のひとつだとは言えると思います。
不安型の愛着スタイルを持つ人は、実際に BMI の数値も高いということがわかっています。
実際にストレス食いをして太ってしまい、より自分に自信がなくなってしまいます。さらに人との関わりが薄くなってしまうことに繋がってしまいます。
不安型の人の他の特徴としては、ネガティブなことに気づきやすいということもあります。
例えば、レストランの中で、機嫌の悪そうな人がいたりカップルが喧嘩を始めると、そのネガティブの方に自分の注意が引き寄せられてしまい、そっちが気になってしょうがなくなります。
さらに、ネガティブな感情を処理するのが苦手です。不安な感情が頭の中を巡ったり、何かを心配すると、そればかりが気になって戻って来れなくなります。
しかし、ライマン大学の研究によると不安型にもメリットがあるようです。
ポーカーのトーナメントでの成績と愛着スタイルについて調べたところ、不安型のスコアが高い人ほどトーナメントでより多くの賞金をゲットしていたそうです。
不安型の人は心理戦や駆け引きに強い傾向があるようです。
ポーカーでは勝ちに行くというよりも負けないことが大切です。
勝ちに行こうとする人は一歩間違うと大きな負けにつながります。
不安型の人は他人よりもネガティブな感情や脅威に敏感です。
それにより相手の嘘を見抜くこともできて、心理戦やギャンブルで強くなるのではないかと考えられています。
ネガティブな感情に敏感なこと自体はメリットです。
ネガティブな感情や脅威に敏感すぎてそれに負けてしまうと苦しくなります。
他人よりも気づきやすいというメリットを活かしながら、徐々に安定型を伸ばして感情を処理できるようになってください。
さらに、自分に知識がないトラブルが生じた時に周りに助けを求めることができるというメリットもあります。
実験ではパソコンの知識がない参加者がパソコンのウイルスにさらされた際に、不安型の人は周りにすぐに助けを求めることができたそうです。
ところが、外向的な人やメンタルが弱い人は、ウイルスにさらされたパソコンを目の前にしても対策をしようとしませんでした。
自分でどうにかなると考えたり、自分のパソコンではないから構わないと考えていたそうです。
深刻な脅威にさらされた際に助けを求めることができない人も多いです。
困っている人がいても気づけない人も結構います。
不安型の人は他人に助けを求めることも困っている他人に気づくこともできます。
これはいざという時には強みになるのかもしれません。
3.回避型
全体人口の15%ほどが回避型だとされています。
幼少期は親にほとんど頼りません。
そもそもひとりになっても寂しさを感じませんし、親が戻ってきても気にしなかったり無視します。
これは親が子供の感情を押さえつけたことが原因だとされています。
寂しさも言いたいことも言わせません。
あるいは、子供の要求を常に拒否します。
これが続くと回避型になると言われています。
親は頼りにならないし、親に自分の感情を言ってもどうせ答えてくれないと考えてしまいます。
自分の感情をオープンにすることをしなくなりますし、その術を学ぶこともできなくなります。
結果的に、大人になって必要以上に近づかれることを嫌がります。
これは自分の問題を解決するために他人の力に頼ってはいけないという考えになります。
自分の感情を封印してひとりで生きていくのが最善策だというマインドになります。
仕事ではチームや仲間に必要な情報を共有することもできなくなります。
自分が苦しくても隠し続けます。
自分の問題は自分で解決するマインドなので、他の人が困っていても助けようとは思いません。
チームワークに問題を抱える可能性が高いです。
不安型と回避型のカップルは長続きしないという研究もあります。
バスク大学の研究で、気分のアップダウンが激しい不安型のタイプの人と相手との親密な関係を避ける回避型のタイプの人の組み合わせが最も別れる可能性が高いとされています。
もちろん不安型と不安型のカップルも別れる可能性は高いですし、回避型と回避型のカップルはそもそも恋愛が始まらない可能性が高いです。
ですが、一番別れる可能性が高いのは不安型と回避型のカップルです。
自分が回避型であれば不安型の人と付き合うとうまくいきませんし、自分が不安型であれば回避型の人と付き合うのは避けた方がいいです。
この研究では、どちらかが安定型の性格であれば恋愛の満足度は高くなり長続きしやすくなるとも言われています。
ですから、重要なのは自分を安定型にすることです。
あるいは、自分のネガティブな感情と向き合うことが苦手な性質を改善することが大切です。
回避型と不安型はお金で困る可能性が高いという研究もあります。
回避型と不安型の人は人生の満足度が低くなり金遣いが荒くなります。
不安型の人はみんなにすごいと言われないと生きていけません。
そのため他人からの注目を集めるために無駄にお金を使います。相手の気を引くために一生懸命お金を使ってしまいます。
回避型の人は自分のためにお金を使い過ぎてしまいます。
自分の見た目を良くすることに一生懸命になり、絶対に必要のないブランド品で身を固めたりします。
いずれにせよお金がなくなっていきます。
回避型の人は自己開示をしっかりと学んでみてください。
最初は苦しいかもしれませんが、自己開示を技術として身につけて慣れてくれば回避型の傾向はかなり改善されます。
人は心理を変えて行動を変えるのではなく行動を変えて慣れてくることによって心理を変えることができます。
科学的根拠に基づいた知識の実験、実践コミュニティ!〜メントレラボ〜
一問一答「あなたは、初対面の時にどんな自己紹介をしますか?」【好かれる自己開示】
4.無秩序型
全体人口の15%ほど無秩序型だと言われています。
回避型と安定型と不安型が入り混じっている状態です。
時に不安型が出てきたり時に回避型が出てきたり、自分でもコントロールできません。
トロント大学の研究で、幼い頃にネグレクトを受けたり心理社会的リスクが高い環境で育てられた子供の82%が無秩序型になり、心理社会的リスクが低い環境で育てられた子供の15%程が無秩序型になるとされています。
全てが親のせいだというわけではありませんが、不安定な環境で育てられると無秩序型になりやすいようです。
この場合大抵親が無秩序型です。
子供を安心させたり大切にするというよりも、いじめっ子のように子供に接してしまいます。
解決されていないトラウマを抱えている親である可能性が高いです。
特に子供の頃に親に対するトラウマを抱えている人が子育てをすると子供が怖くなってしまいます。
どう接していいかわからず子供が不安や恐怖の対象になってしまいます。
その結果子供も無秩序型に育ってしまいます。
ここから先は、幼少期の愛着スタイルが年齢によってどのように変化し影響を与えるのかということを解説していきます。ぜひ続きもチェックしてみてください。