おっちょこちょいでのんびり屋、それでいてロマンチストで負けん気の強い"のび太くん"をはじめ、登場人物の誰もが愛すべきキャラクターです。
一見、日々のドタバタ劇が描かれていると思われがちですが、じつはとても深い気づきや学びを得られる物語りでもあるのです。
作者である藤子・F・不二雄さんは「ドラえもん」を通して、大切なメッセージを伝えようとしていたのかもしれません。
ブックディレクターが選ぶ、珠玉のドラえもん名言集
今年2月末に発売された「のび太くん、もう少しだけがんばって」(小学館)は、ご自身も「ドラえもん」の大ファンだと言う、ブックディレクターの幅允孝さんのセレクトによるドラえもんの名言がつまった1冊です。
全45巻という超大作であるてんとう虫コミックスの「ドラえもん」のなかから、今を生きる私たちにとって響く言葉が、人生・時間・真理・愛・励ましの5つのカテゴリーに分け紹介されています。
・未来なんて ちょっとしたはずみで どんどん変わるから。(時間/14ページ)
・すぎたことばかりくよくよしたってしかたがないだろう。目が前向きについてるのは、なぜだと思う? 前へ前へと進むためだ!(励まし/16ページ)
・ものをつくるということは、自分ではじめからくふうしてこそ、値うちがあるんだよ。(真理/26ページ)
・あわてなくていいよ。人生は長いんだ。(時間/58ページ)
(「のび太くん、もう少しだけがんばって」より引用)
きっと誰の心にも、のび太くんのような気弱さや強い依存心、頑固さが少なからずあるのではないでしょうか。
ドラえもんはそんなのび太くんを、温かくも厳しい眼差しで見つめています。それは私たちにとっても核心をつくものばかりなのです。
今、この瞬間を大切に
一生けんめいのんびりしよう。(人生/6ページ)
(「のび太くん、もう少しだけがんばって」より引用)
冒頭を飾るこのフレーズは、ドラえもんが私たちに伝えようとしていることをひと言で表している気がします。それは、いつでもどこでも「今、この瞬間」を大切にしよう、というメッセージのように捉えることができます。
この「今、この瞬間」を大切にする、という考え方は、じつは禅の世界でも同じような意味合いの教えがあります。
作者の藤子・F・不二雄さんがそれを意図していたかは定かではありませんが、大切な気づきを与えてくれる言葉のひとつではないでしょうか。
ともすれば、忙しい毎日に翻弄され自分を見失ってしまったり、大切なことを忘れてしまったりする私たち。新しいスタートを切りたい4月にこそ、「ドラえもん」のメッセージから、たくさんの気づきを得たいものです。