胃が整えば、心も身体も健康になる」と語るのは、内科・循環器科のエキスパートであり、自らも胃弱を克服した経験を持つ池谷敏郎先生。著書『人生は「胃」で決まる! 胃弱のトリセツ』(毎日新聞出版)から、胃弱にまつわる意外な話をご紹介します。

意外に多い“隠れ胃弱”。よくある不調は?

胃弱とは、何らかの理由によって胃や食道がうまく働かず、不調が起きる状態のこと。池谷先生によると、現代人は生活習慣の乱れやストレスから胃弱になりやすく、「自分は胃弱だ」と自覚している人も増えているといいます。

しかしなかには、「食べ過ぎたときや揚げ物を食べたときに胃がもたれるのは、当たり前」と思っている人もいるはずです。池谷先生によると、これはれっきとした胃弱。自分が胃弱であることに気づいていない“隠れ胃弱”を含めると、胃に不調を持っている人は意外に多いのではないかと池谷先生は指摘します。

たとえば、

朝食が食べられない 脂っこいものが食べられない 緊張すると胃がキリキリする すぐにおなかが一杯になる げっぷが出やすい

……といった症状も、じつは“隠れ胃弱”によくある不調。食事やストレスなどのダメージにより胃の不調が顕在化しやすい状態、つまり胃弱と考えるべきなのです。

胃弱をもたらす“容疑者”3つ

胃弱の要因としては、ストレス生活の乱れ加齢などが考えられると池谷先生。しかし、それだけではありません。

池谷先生によると、胃弱をもたらす“容疑者”は次の3つ。ピロリ菌機能性ディスペプシア(FD)胃食道逆流症(GEAD・ガード)です。

近年ピロリ菌の危険性は周知されるようになりましたが、第2、第3の容疑者については、初耳という人も多いのではないでしょうか。

機能性ディスペプシアとは、「胃の働きに異常があるために消化不良が起きる」病気のことです。代表的な症状に、胃痛や胃の気持ち悪さ、食後の胃もたれ、腹部膨満感、げっぷ、早期満腹感、食欲不振、吐き気、胸やけ、胃酸が逆流する感じ、口のなかに酸っぱさや苦みを感じる、などがあります。

(『胃弱のトリセツ』81ページより引用)

機能性ディスペプシアが怖いのは、検査を受けても炎症や潰瘍など、それらしい元凶が見つからないこと。2013年にやっと保険病名として認められ、治療を受けられるようになったといいます。

内視鏡検査で異常が見当たらないのに、慢性的な胃の不調があるならば、機能性ディスペプシアの治療で改善するかもしれません。治療は薬物療法が中心で、LG21乳酸菌も症状の軽減に役立つと期待されているといいます。

胃酸の逆流を防ぐ寝姿勢は?

第3の容疑者である「胃食道逆流症(GEAD・ガード)」は、中高年を中心に増えているといわれる病気です。胃から上がってきた胃酸によって食道が傷つき、炎症を起こすというものです。

池谷先生によると、胃酸が逆流しやすいタイミングは食後と夜間。眠るときには、寝姿勢に気をつけると症状の改善が期待できるといいます。

睡眠中の胃酸の逆流を防ぐには、左向きで寝ることを心がけてみましょう。胃の入り口である噴門は胃の右上側にあるため、そちら側が上になるように寝ることで胃酸が逆流しにくくなるのです。覚えるコツは、「『いさん』も『ひだり』も3文字なので、左向き」。

(『胃弱のトリセツ』96ページより引用)

病院で「胃食道逆流症」と診断された場合は、薬物療法とともに、ストレスを緩和するための生活改善が行われます。胸やけなどの症状がひどいときは、GEADを視野に入れた検査をしたほうがいいかもしれません。

「胃弱は体質」とあきらめないで

本書では、このほかにも日常生活のなかで胃弱を克服するメソッドや、胃にやさしい食べ物などがくわしく紹介されています。

胃弱を改善すると、栄養がいきわたることであらゆる臓器の働きがよくなり、肌や髪は美しく、疲れにくくなるのだそう。胃弱を治すだけで、生活の質は格段に上がると池谷先生は語ります。

「胃弱は体質」とあきらめることはないという池谷先生の言葉に、救われた気持ちになる人も多いはず。胃腸に優しい生活や食事を学ぶ上でも、役立つ知識が満載の一冊です。

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