「ありのままの自分を、世の中に受け入れてほしい」「ありのままの自分で必要とされたいし、愛されたい」「もっと、自分らしく生きたい」……そう思うことはありませんか?
そして、同時に「でも、そんなの無理だよね」とも。
周りの人に受け入れてもらうためには、仮面を被って、本当の自分とは別の素晴らしい人間を演じなければならないのでしょうか?
『すべての涙を笑いに変える黒いユニコーン伝説』#心に効く言葉
今回紹介するのは、アメリカの女性コメディアン、ティファニー・ハディッシュの言葉です。
1979年アメリカ・カリフォルニア州生まれのティファニーは、実の両親からの肉体的・精神的虐待、その後入れられた児童養護施設や里親の家庭でのいじめ、元恋人・元夫からのDVなど、つらい経験をたくさん経験してきた女性です。
しかし、それでもティファニーはめげることなく、一流コメディアンとして才能を開花させます。
ティファニーの自伝『すべての涙を笑いに変える黒いユニコーン伝説』(訳:大島さや、CCCメディアハウス)には、冒頭のテーマについて考えるヒントとなるこんな一節がありました。
みんなが憧れる人を演じること。それが、わたしにとって唯一の心の拠りどころだった。ただのティファニーじゃない。自分の殻を破って、より自分らしい自分になること。わたし自身は、そんなに優れた人間じゃないしね。ありのままの自分でいるだけではまったく足りなかった。
両親のためでも、学校のためでも、他の誰のためでもない。芸能の道へ進んだのは、演技をすることで受け入れられた気持ちになれたからだ。ステージの上は、わたしが初めて愛を感じることができた、安全な場所だった。
『すべての涙を笑いに変える黒いユニコーン伝説』357-358ページより引用
子どもの頃から、“周りを笑わせる”、“演技をする”ことで、自分の居場所を作ってきたティファニー。
本当はありのままの自分を受け入れられたいのに、演技しなければならないなんて……と思うかもしれません。
でも、ティファニーの考える“演技”とは、「自分の殻を破って、より自分らしい自分になること」。
つまり、“演技している自分”も、広い意味では「ありのままの自分」。自分の中の良い部分、魅力的な部分、カッコいい部分が最大限に表に引き出されている、ということなのです。
「ありのまま」の私を見せるには、演技も必要
このことについて、もう少し掘り下げて書いている箇所があります。
離婚した後は、エンジン全開!って感じだった。自分のコメディーの質がグッとアップした。コメディーというアートに集中する時間ができたことで、自分自身のことをもっと理解できるようになった。いろいろな場面で自分がどう感じたのか、注意深く考えるようになった。
『すべての涙を笑いに変える黒いユニコーン伝説』288ページより引用
よいコメディー、よい演技をするためには「自分自身のことを深く理解する」「自分の気持ちに敏感になる」ことが大切だというのがティファニーの考えです。
“演技”という言葉からは偽りの自分を作り上げることを連想してしまいがちですが、じつは、それとは真逆の作業をしていることになります。
自分をさらけ出すには、どうすればいい?
スタンドアップでは、リチャード・プライヤーが言ったように自分自身が楽しんでいなくちゃいけないのももちろんだけど、自分のことをいかに深くまで理解できているかもすごく重要だ。(略)
そういうことができるようになるには、まず自分をさらけ出さなくちゃいけない。自分をさらけ出すには、自分がどんな人間かをよく理解して、周りの人が自分に対してどういう反応をするかを心得ていないといけないのだ。
『すべての涙を笑いに変える黒いユニコーン伝説』289ページより引用
ティファニーは表舞台で表現することを仕事にしていることもあり、“自分をとことん客観視して、他人目線で深く理解する”ことを非常に重要視していることがわかります。
ティファニーが言っている通り、ありのままの自分をさらけ出すためには「他人の目で見た自分」を隅々まで熟知していなければならないのではないでしょうか。
よく「自分らしくいるには、他人の目を気にするな!」というアドバイスがありますが、自分目線だけしかないと自分を本当に深く知ることはできません。
他人目線で自分を分析して、求められることに応えて、他人を真剣に喜ばせてみる。そうすることで初めて現れる「自分」は、「自分らしさ」のもっとも綺麗な部分の結晶のようなものかもしれません。
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【今週のお悩み】ナチュラルに自分をアピールする方法があれば教えてください
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