“座り病”。こんな名前を聞くと、異国でのバカンスから持ち帰ったなぞの病気のように聞こえますよね。でも実際には、すぐそこにある病気です。

朝食の食卓から車のシート、職場のデスク、ふたたび車のシート、そして家のソファーへと、ほぼ身体を動かさず、座りっぱなしの生活をすることが原因となって起こるものです。

ある研究によると、オフィスでのデスクワークの場合、1日最大15時間も座っていることもあるそうです。

パソコンを直視して仕事をすることで引き起こされる身体の痛みに、あなたはすっかり慣れてしまっているかもしれませんが、長い時間を座ったまま過ごすと、身体の中にも外にも問題が起こるものです。

椅子に座ったまま長時間過ごしたり、ソファーにへたり込んだりすることだって、血栓や非アルコール性脂肪肝、心臓病、がんといった、生命を脅かすような状態と関わりがあります。

座りっぱなしは、脳の健康にも影響している

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そして、脳への影響も例外ではありません。2018年4月に発表された研究によると、座りっぱなしの生活を送ることで、記憶の形成にまつわる重要な脳のエリアが縮小することが示されました。

太りすぎは病気のリスクを高めるのですが、座りすぎの問題は、太ること以上なのです。確かに座っている時間が長くなると、健康的な体重をキープすることが難しくなります。

「座っていると、立っている時や軽く歩いている時の半分しかカロリーを消費していません」と、デービッド・アルターさん(UHN-Toronto Rehabilitation Institute で循環器および代謝の研究で教授を務める)は説明します。

でも、もしあなたがやせていても、座りっぱなしの生活スタイルは健康に大きな問題をもたらす可能性があります。「身体を動かしていないと、脂肪の燃焼や糖の代謝のほか、インスリンに対する反応などに影響を与えるのです」とアルターさんは解説します。

座りっぱなしだと、コレステロール値や炎症マーカー、トロポニン(心臓の筋肉細胞が損傷している場合に作られるたんぱく質)も上昇する可能性があります。そういった生理学的な変化は、糖尿病になるリスクをほぼ2倍にし、循環器系の病気になるリスクを14%高めます。

実験でわかった! 座りっぱなしで体脂肪が増える

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そこで、1日に最低でも1万歩以上歩いている健康な若い成人を集めて、1日に歩く歩数を1500歩に制限する実験が行われました。

英国リバプール大学の加齢・慢性疾患研究所のダン・カスバートソンさんによると、実験の参加者は、その状態でいつも通り仕事に行ったり、家族の世話をしたりしました。予想されたように、2週間のうちに実験の参加者たちの体脂肪がとくにウエストまわりに増え、総筋肉量が減りました

でも、驚くことに、インスリン感受性が減り、肝臓に蓄積する脂肪と中性脂肪も増えるという変化も起きたのです。

座りっぱなしの生活は“すぐに現れる問題”ばかりではなく、“あとあと深刻な結果につながる問題”も引き起こします。これらの変化は実験の参加者たちがいつもの生活を再開すると、すべて元に戻りました。

座りすぎによる健康への影響

座っている時間が普通程度だったとしても、35の深刻な問題につながる可能性があるのです。

起き上がって動くことが、タンパク質や遺伝子、そのほかの病気に対する感受性をコントロールするカギだからでしょう。以下に、“座り病”の影響を挙げます。

1. うつ病と不安

『Mental Health and Physical Activity』誌に掲載されたある研究によれば、仕事中に座っていれば座っているほど、たとえ運動をしていても、うつ病と不安のリスクは大きくなります。

ほかの研究によると、逆に言えば一日中動けば動くほど、より幸せを感じるのです。

2. 背中と首の痛み

「わずか数時間座っているだけでも、背中の下のほうの椎間板が圧迫されてしまうのです」と、ペンシルバニア州立大学で整形外科・リハビリテーションの准教授を務めるグレゴリー・ビリーさんは解説します。

姿勢が悪いと、首の椎間板に問題を起こす可能性も出てきます。

3. がん

座りっぱなしだと、運動をしていても、炎症のほか、体重の増加などにより大腸がんや子宮内膜がんのリスクが高まります。

『Journal of the National Cancer Institute』誌のある研究によれば、座っている時間が1日に2時間増えるごとに大腸がんのリスクが8%、子宮内膜がんのリスクが10%上昇します。

4. 肥満、糖尿病、心臓のトラブル

「長時間座っているとカロリー消費が少なくなるばかりではなく、インスリンによってブドウ糖を血液から細胞に取り込む能力も低下してくるのです」と、アルターさんは指摘します。

コレステロールと炎症マーカーの値も上がる可能性があります。また、脂肪をどのように代謝するかが変わって、血管の機能も低下する可能性があります。

5. 骨が弱くなる

立っていることや歩くことを含む体重負荷運動を行うと、骨に刺激が加えられ、特定の細胞が反応することで、古い骨が新しい骨に置き換わっていくのです。

座りすぎていると、骨の量は減っていくのに、新しい骨で置き換えられずに、骨がもろくなっていきます。とくに歳を取ると、骨粗しょう症のリスクが高まってくるのです。

6. 血栓

座りっぱなしの生活スタイルを送ると足の血流が滞り、血栓ができるのを防いでくれるタンパク質が減る可能性が出てきます。そうなると、血栓ができるリスクが高まります

1週間に40時間以上座っている人は、10時間以下しか座っていない人に比べて、血栓が肺に移動するリスクは2倍以上になるのです。

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訳/STELLA MEDIX Ltd.

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