それは、生活環境も、食事環境や内容も十人十色、みんな違うから。そのヒントとなるのが不調ではないでしょうか。
例えば、「経理職でデスクワークをしている人」「営業職で歩き回っている人」「小さい子を育てていて自宅での家事がメインとなっている人」の三者を、オーソモレキュラーの視点で見てみましょう。
人によって変わってくる栄養状況
最初の方は集中力を酷使するために、脳ホルモン作りに関わるビタミンB群を多く消費する(=不足しやすい)のに対し、次の方は歩きまわって筋力を多く使うためタンパク質やエネルギーを消費しがち。また商談やプレゼンなどで気をつかう場面も多く、抗ストレスホルモンの材料であるビタミンB群、ビタミンCの消費が多いのでは、と想像できます。
最後の方は子どもの抱っこやお世話で筋力を使っていることに加え、出産でも大量のタンパクや鉄が失われていることが想像できます。もちろん、これ以外にもたくさんのビタミン、ミネラルが関わっています。
さらには外食が多いか、自分で調理することが多いか。お酒好き、スイーツ好き、カフェイン好き、さらには夏の暑さ、冬の寒さでも消費される栄養素はおおいに変わります。
不調の理由にはさまざまありますが、オーソモレキュラー栄養医学では、栄養の過不足によって細胞が機能的に動くことができなかった結果、起こるのが不調である、と考えられています。
つまり不調が出ているということは、今の食事が、その人に合っていないところがある(=バランスを欠いている)ということ。消費する栄養素をきちんと補充できているか。多すぎる栄養素をコントロールできているか。それがバランスのよい食事につながると考えることができます。
ビタミンB群を意識して、疲れやイライラを遠ざける
例えば「疲れた」が口癖になっている、いつも不機嫌でイライラしている、神経過敏でピリピリしている、肩こりがひどい、そして電車で集中して本が読めなくなったというタイプ。もしかしたら、先に紹介したビタミンB群が足りないかもしれません。
このほか、次のようなトラブルが出やすくなります。
日中眠くなる 寝ても疲れが取れない 口内炎、口角炎ができやすい 風邪をひきやすい 下肢がしびれるB群不足の人のなかには、甘いもので疲れを癒そうとするタイプも少なくありません。菓子パンやスイーツに多い糖質はビタミンB群を大量消費するため、食べすぎにも気を配る必要があります。
このタイプに本当に必要なのは、ビタミンB群の多い肉や魚、大豆、卵などのおかず。このタイプの方のお食事をじっくり聞いてみると、朝はパンとコーヒー、昼はコンビニパスタ、おやつはチョコレート、といったパターンがとても多い様子。糖質を減らしおかずをしっかり食べることが、疲れやイライラを遠ざけてくれます。
美容にも深く関わる、鉄不足
そして、朝の寝起きが悪い、頭痛に悩んでいる、ニキビが治りにくい、ほっぺたや唇に赤みが少ない、体を動かすと動悸や息切れが激しい、髪を洗うと排水溝が抜け毛でいっぱいになる、という人は鉄不足が関係している場合も。
このほか次のような不調も鉄が関係しています。
立ちくらみ、めまい、耳鳴りがする 疲れやすい 顔色が悪い 風邪にかかりやすい 歯茎の出血、体にアザがよくできる 注意力の低下、イライラしやすい 喉の不快感 食欲不振 神経過敏 むくみがある 湿疹ができやすい 肩こり、腰痛、背部痛 便秘や下痢をしやすい 吐き気がする 胸が痛む まぶたの裏が白い 皮膚が青白く、または黄色っぽくなる くしゃみ、鼻水、鼻づまり 口角、口唇炎、舌のしびれと赤み肌に存在するコラーゲンも、材料のひとつが鉄。さらにはシミを防ぐ酵素、カタラーゼを体内で作るのにも鉄を必要とします。キレイな肌をキープしたいなら鉄はマストと言えます。
しかしながら、女性にとって鉄は不足しやすい栄養素の代表格。毎月の生理で失うほか、妊娠や授乳時にも優先的に赤ちゃんに渡されるため、自らの鉄はどんどん目減りしていきます。産後の抜け毛も、シミも、実は鉄不足が一因。ママになってもキレイでいるために必須なのが鉄なのです。
不調を回避するためには、一にも二にも鉄をしっかり摂ること。レバーや赤身の肉、カツオ、あさりを食卓にたくさん登場させましょう。煮干しにも多いのでおやつ代わりに食べるのもおすすめ。コツコツ鉄をとることでトラブルを和らげることにつながります。
バランスのよい食事が目指すもの、それは不調のない、心地よい体を手に入れること、未来に起こりうる変化に備えて準備をすること。そう私は考えています。
不調はひとつだけではありません。そして体調は日毎に変わります。そういったことを観察し、栄養面から整えていくことが、その人なりの「バランス」なのだと感じます。
(不調のリストは「オーソモレキュラー栄養医学研究所」より引用)
鉄不足を解消しましょう
肌や髪のツヤ、鉄不足を解消すれば手に入るかも。コツコツ鉄を摂る方法
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