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人のウンチで病気を治す「糞便移植」、やり方と安全性は?
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人のウンチで病気を治す「糞便移植」、やり方と安全性は?

2019-09-23 23:00
    聞こえは気持ち悪いけれども……。

    巷で話題の医学用語が「糞便移植」。しかし、その治療法には命にかかわる感染リスクが潜んでいる可能性があることが、最近アメリカで分かってきました。

    話題の治療法で死亡例が発生

    image via shutterstock

    2019年6月、FDA(米国食品医薬品局)は、患者が糞便移植後に死亡したことを受けて警告を発出。この治療法は便をドナーから患者の腸内に戻すもので、FDAの承認を得ていません。

    今回の死亡事例では、免疫機能が低下していた患者2名が、ひとりの提供者からの便の移植を受けました。そして2名とも抗生物質に耐性を持つ大腸菌による感染症を発症。移植に際し医療スタッフは、便の大腸菌のスクリーニングを怠っていたのです。そして、そのうちの1名が感染症により死亡しました。

    その結果を受け、FDAは、移植前にまず、便のサンプルに対し薬物耐性菌の検査を実施し、提供者に対し薬剤耐性感染症のスクリーニングを実施することを呼びかけています。

    糞便移植は、徐々に主流な治療法となってきています。しかし、そもそもなぜそのような治療法が必要とされるのでしょうか? 糞便移植がどのように行われるか、そして、気をつけるべきリスクについて医師らが解説します。

    糞便移植って、一体なに?

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    糞便移植は、比較的新しい治療法で、有益な細菌を含んだ健康な人の便を、患者の腸内に戻すというものです。通常、下痢や腸内に炎症を引き起こす細菌であるクロストリジウム・ディフィシルの症状がある人で、抗生物質による治療を行っても効果が出ない場合に行われます。

    「糞便移植は、本当に必要な患者にのみ行います。結局のところ、これは移植という医療行為です」と、オハイオ州立大学ウエクスナー医療センターで糞便移植を専門とする消化器専門医のヒシャム・ハッサン医師は説明します。「抗生物質が効かない重度のクロストリジウム・ディフィシル関連下痢症の患者が対象となります。このような患者には、感染症による死亡リスクがあるためです」

    糞便移植の流れ

    糞便移植は、結腸内視鏡検査と非常に似通っています。クリーブランド・クリニックの説明によると、患者は結腸内視鏡検査の準備をし、ドナーは排便があるよう下剤を飲みます。その上で採取された便は生理食塩水に入れて攪拌されて、細菌のみが含まれる茶色い液体になるまでろ過されます

    「患者は、下痢止め薬の投与を受けた上で、大腸内視鏡により提供者の便を投与されます」と説明するのはプロビデンス・セントジョーンズ・ヘルスセンター(カリフォルニア州サンタモニカ)の消化器専門医であるルドルフ・ベッドフォード医師。患者は、健康な細菌が腸内に定着するよう、できるだけ長時間、便意を我慢するように言われます(そのために下痢止めを使います)。

    「いくつかの症例では最長4日かかった場合もありましたが、通常24時間から48時間以内に下痢症状に改善がみられます」とベッドフォード医師。

    では、便はどうやって採取されるの?

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    ベッドフォード医師によれば、糞便移植が導入された当初、医師らは患者のパートナーなどから便を採取していたそう。

    今では、便の提供を行っている企業がいくつかあります。ベッドフォード医師は、それらの企業から郵送で、カプセル入りのフリーズドライされた便を受け取っているのだそうです。

    糞便移植は安全?

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    概して、安全といえます。そして、アメリカ国内ではクロストリジウム・ディフィシル関連下痢症の患者が増加していることから、これからさらに積極的に取り入れられる方向となっています。

    「移植を受ける患者がなんらかの免疫障害を持たない限り、この治療法は安全です。そしてそれが最大の問題でもあります」と、ベッドフォード医師は指摘します。というのは、がんや遺伝性疾患や、糖尿病などで患者の免疫機能が損なわれていると、感染症は防げないということなのです。

    また移植される便は、感染症を引き起こす細菌が含まれていないか「適切な検査」を受けなければならず、これこそが今回FDAの警告で示された最大の問題点となっていました。

    けっして自分でやってはいけない!

    image via shutterstock

    「便には、細菌と病原体が存在します」と説明するのは、感染症専門医で、ジョンズ・ホプキンズ大学保健保障センターのシニア・スカラーであるアメッシュ・A・アダルジャ医師。「なので適切なスクリーニングの実施が非常に重要です」

    また、この方法は自宅で簡単にできそうでもありますが、アダルジャ医師は「けっして自分でやるものではありません。医学的管理下で実施されなければ、病原体を移植してしまいます」とそのリスクを強調します。

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    Korin Miller/What Is a Fecal Transplant? Patient’s Death Linked to the Procedure, FDA Warns/STELLA MEDIX Ltd.(翻訳)

    RSSブログ情報:https://www.mylohas.net/2019/09/198933pvn_transplant.html
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