最新の研究やデータをもとに、ムダなく栄養を摂るさまざまなコツを教えてくれる『その調理、9割の栄養捨ててます!』(東京慈恵会医科大学付属病院 栄養部監修、世界文化社)から、保存の法則をもとに、野菜やフルーツのフレッシュな栄養を体に届ける方法をご紹介します。
トマトは常温保存でリコピン増
夏野菜や原産地が熱帯の野菜は、寒いところが苦手です。低温障害を起こさないよう、常温か野菜室保存がマスト。
定番野菜のトマトもそのひとつです。 水分の多いトマトは痛みやすいから……といって、すぐに冷蔵庫へ直行させていませんか? 温かい地域が原産のトマトは、寒いのが大嫌い。
冷蔵庫に入れっぱなしでは、アンチエイジングの救世主・リコピンが大幅ダウンしてしまいます。
トマトをすぐに食べない場合、少し固さのあるものを選んで「追熟」させれば、リコピンが最大60%もアップします。ひとつずつ新聞紙などで包み、ヘタを下にしてカゴに入れ、15~25℃の直射日光が当たらない場所に置きましょう。
夏場は2~3日、冬場は一週間の常温保存がおすすめです。
しいたけは日光浴でビタミンDが10倍に
しいたけを代表する栄養素といえば、カルシウムの吸収を高めるビタミンD。しかし日の当たらない室内で栽培されたしいたけのビタミンDは、出荷時はほぼゼロなのです。
じつはしいたけの「エルゴステロール」は、紫外線を浴びることでビタミンDへと変化します。そのため、調理前に30分~1時間干せば、ビタミンDはなんと10倍に! 食物繊維やビタミンB1も10倍にアップするので、美容効果も抜群です。
市販の干ししいたけのなかには熱風などで乾燥させたものもあるので、確実にビタミンDをモノにしたいなら「天日干し」を。自家製の場合は、1~2日干してしっかり水分を抜くと保存性が高まります。
おいしさも栄養も3倍になる〇〇きのこ
きのこの旨みのもとであるグアニル酸やアミノ酸、アスパラギン酸などは、生活習慣病予防や疲労回復に効果あり。
これらの働きを3倍以上にしてくれるのが、きのこの冷凍保存です。きのこを冷凍すると、水分がふくらんで細胞壁を壊し、RNA分解酵素という酵素が働いて、生のきのこにはない旨み成分をつくり出します。
冷凍したときと調理するときの2度、この酵素が働くために、グアニル酸やアスパラギン酸などの成分が3~4.5倍にアップするのです。
とくに冷凍をおすすめしたいのは、えのきだけ、ぶなしめじ、まいたけの3つ。えのきは「ミキサーにかける&冷凍」のダブルで、ダイエットに有用なキノコキトサンが12倍にアップします。
一週間で、タマネギのポリフェノールを4倍にする方法
タマネギの皮に多く含まれる「ケルセチン」は、血液をサラサラにして動脈硬化を防いでくれます。皮をそのまま食べるのは難しいけれど、可食部分のケルセチンを増やすよい方法があるのです。
それは、タマネギを日に当てること。皮を取り除いてから約1週間日光に当てると、細胞を守ろうとしてケルセチンが4倍に増えるのです。
加熱や冷凍でも成分は壊れませんが、水に溶け出しやすいので、調理するならスープや煮込み料理にして汁ごと食べるのがおすすめ。
前回お伝えした通り、タマネギを細かく刻めばアリシンも活性化します。取り除いた皮は煮出して「皮茶」にすれば、さらにお得に栄養が摂れますよ。
冷凍バナナでアンチエイジング効果が倍増
生活習慣病の予防やアンチエイジングにも役立つポリフェノール類。バナナは赤ワイン、緑茶に続いて第3位の実力ですが、ポリフェノールをよりお得に摂るなら冷凍がおすすめです。
バナナは黒い斑点(シュガースポット)が出るのが完熟の合図。糖度が増すだけでなく、ポリフェノールも倍増します。しかしシュガースポットが出始めたバナナは酸化しやすく、ポリフェノールの働きもすぐに鈍くなってしまいます。
そこで、シュガースポットが出始めたらすぐに冷凍保存を。バナナの皮をむき、食品用フィルムで包んで冷凍するだけで、シャリッとおいしくて栄養満点のおやつになります。
最長1か月も長持ちするため、頼もしい栄養補助食品になってくれるでしょう。
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──この記事は、2010年9月25日の記事を再編集して掲載しています。
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文/田邉愛理 、Shutterstock