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「女性なら、誰もが受けるべき」は間違い。乳がん検診の真実/ピンクリボン強化月間
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「女性なら、誰もが受けるべき」は間違い。乳がん検診の真実/ピンクリボン強化月間

2020-10-16 18:00
    自分の体をきちんと知ろう! がテーマの連載「カラダ戦略術」。ピンクリボン強化月間の10月は、乳がん関連の記事をお届けしています。今回は「誤解されやすい乳がん検診の真実」と「乳がんが見つかりにくい乳房タイプ」について、女性医療ジャーナリストの増田美加がお伝えします。

    女性ホルモンのエストロゲンは、乳がんにも関わっている

    9人に1人の日本女性が乳がんにかかる今。40歳からは「がん適齢期」に入る世代です。

    大切にしたいのが「がん検診」ですが、「受ければいい」というものではないことを知っていますか? 正しい検診を選んで受けないと“不利益”につながることもあるのです。今回は、がん検診の真実をお伝えします。

    乳がんの原因は、はっきりとはわかっていません。ただ、女性ホルモンのエストロゲンが深くかかわっていることは明らかです。

    初経(初潮)年齢が早い、閉経年齢が遅い、初産年齢が遅い、出産経験・授乳経験がない、などの要素がリスクを高めるといわれています。これらはいずれも、「生理がない期間が短く、エストロゲンが分泌し続けている期間が長い」という状態であり、このことが乳がんになるリスクを高めるということを表しています。

    また、飲酒、閉経後の肥満、身体活動度(運動など)が低い、乳がん、卵巣がんになった血縁者がいる、良性乳腺疾患がある、あとで詳しく解説しますが「高濃度乳房(デンスブレスト)」であることもリスクになります。

    40歳未満の乳がん検診は、利益より不利益が上回る?

    20代、30代の女性からは、「若い世代でも、検査を受けることに越したことはないのでは?」という不安の声が聞かれます。

    しかし、乳がん検診は「40歳から2年に1回のマンモグラフィ検査」というのがエビデンス(科学的根拠)のあるがん検診です。つまり、「乳がん検診は、30歳から受けたほうがよい」というのは、間違いなのです。

    がん検診は、何歳から、何年に1回の頻度で、どのような検査を受けたらいいか、エビデンスをもとに定められています。

    これらの年齢と受診間隔には、検診による利益(がんによる死亡率の減少)があって、逆に検診による“不利益”が最も小さくなる内容が考慮されています。

    乳がん検診の場合、若い年齢や短い受診間隔で受けると、不利益が大きくなります。検診の不利益とは、命に影響しない見つける必要のないがんの発見や検診による偶発症の発生、被曝、身体的心理的経済的負担など、さまざまです。

    ただし、血縁に乳がん、あるいは卵巣がんの方が複数いる場合は例外です。20代、30代であっても、一度乳腺外科を受診して、どのような検診を受けていったらよいのかを相談してください。

    40歳以上で症状がない人は、マンモグラフィ検査でOK

    乳がんによる死亡を減らせることが科学的に認められ、乳がん検診として推奨できる方法は、40歳以上なら2年に1度の「マンモグラフィ単独法」です。

    「超音波とマンモグラフィの併用」や「超音波単独」あるいは「視触診単独」は、死亡率減少効果を判断する証拠が不十分なのです。

    そのため、これらの検査は、国ががん検診で行うことは勧められないとしています。自治体検診(対策型検診)としての実施も勧めていません。

    人間ドックなど(任意型検診)で行う場合には、死亡率を減らす効果が不明であること、不利益が上回ることについて、医療者が適切な説明を行うべき、とされています。

    ただし、乳がん検診が推奨されるのは、40歳以上の“症状のない”女性です。

    症状がある人は、話は別です。検診ではなく乳腺外科を“受診”して検査してください。しこりや乳頭分泌などの症状があったら、次の検診を待つのではなく、乳腺外科を受診することが大切です。

    マンモグラフィでは、がんが見つかりにくい乳房がある

    今、乳がんのマンモグラフィ検診で論議を巻き起こしているのが「高濃度乳房(デンスブレスト)」です。

    高濃度乳房とは、乳腺の濃度が高く、マンモグラフィでは、しこりが見えにくい乳房のタイプのことです。乳腺濃度とは、乳腺が乳房内にどれだけ存在するかの割合です。この高濃度乳房は、日本人を含むアジア人に多いタイプの乳房です。

    乳腺濃度によってしこりの見つけやすさが異なる

    資料画像提供:NPO法人乳がん画像診断ネットワーク

    乳がん検診のマンモグラフィの画像を診断する放射線科の医師は、マンモグラフィの画像を「脂肪性」「乳腺散在」「不均一高濃度」「極めて高濃度」に4分類して判定しています。

    上の写真では、右2つが高濃度乳房です。日本女性の4~7割が高濃度といわれています。乳腺濃度が高いと写真には白く写るため、同じく白く写るがん(しこり)があっても、見えにくいという問題があります。

    一方、欧米人に多い脂肪性乳房は乳腺が少なく、マンモグラフィで黒く見えるので、白く写るがん(しこり)が見つけやすいのです。

    がんの有無がわからないのに「異常なし」と出てしまう危険

    高濃度乳房の問題点は大きくふたつあります。

    ひとつは、高濃度乳房はマンモでは乳腺もがんも白く写るため、乳がんがあっても見つけにくいのです。

    もうひとつは、高濃度乳房は脂肪性の乳房に比べて乳がんの発症リスクが高いことです。

    今年春に、日本女性を対象にした重要な研究論文が発表になり、高濃度乳房の人は、乳がんにかかるリスクが高いことが明らかになりました。

    さらに、高濃度乳房の中でも、閉経後でBMIの高い人は、乳がんにより気をつける必要があることも報告されています。

    それにもかかわらず現状では、高濃度乳房でがんの有無がわからなくても「異常なし」という結果が、多くの自治体検診で伝えられています。

    一部の自治体や施設で、乳がん検診結果のレポートに「高濃度乳房」などの乳腺濃度を伝えているところがありますが、ごくわずかです。

    現状で、自分の乳房が高濃度乳房かどうかを知るには、マンモグラフィ検診後に「私は高濃度乳房ですか?」と、医療機関に自分で聞くしかありません。

    そして、もし高濃度乳房なら、がんがあってもわからないだけでなく、乳がんのリスクもあるため、マンモグラフィだけでなく、自己負担になりますが、超音波検査乳房MRI検査を加える選択肢があります。

    まとめ。更年期世代が「乳がん」で気をつけるべきこと

    40代、50代は、まさに乳がんの適齢期です。2年に1回のマンモグラフィ検診を欠かさず受けましょう。

    さらに、自分が高濃度乳房かどうかを確認しましょう。もしも高濃度乳房なら、超音波検査や乳房MRI検査を組み合わせます。

    また、血縁に乳がん、卵巣がんの方が複数いる場合は、遺伝性の可能性があるので検診でなく、乳腺外科を受診しましょう。

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    増田美加・女性医療ジャーナリスト
    予防医療の視点から女性のヘルスケア、エイジングケアの執筆、講演を行う。乳がんサバイバーでもあり、さまざまながん啓発活動を展開。著書に『医者に手抜きされて死なないための 患者力』(講談社)、『女性ホルモンパワー』(だいわ文庫)ほか多数。NPO法人みんなの漢方理事長。NPO法人乳がん画像診断ネットワーク副理事長。NPO法人女性医療ネットワーク理事。NPO法人日本医学ジャーナリスト協会会員。公式ホームページ

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