明治時代から続くリンゴ農家に生まれた「石岡りんご園」の石岡紫織さんは、元航空自衛官だったという異色の生産者。もともと就農する気がなかったという石岡さんは、父親の急逝により、家業を助けるために園主になったといいます。
その後、近隣の方からの助けを受けながら勉強を重ね、技術を向上。成果が評価され、先日、2013年産「サンつがる」の高品質出荷者として表彰されました。
以前は、公務員で定期的にお給料もらっていたのに、りんご農家の作業は、休みもなく、雨でも作業を止めることはできません。就農したての頃は、草刈り機に乗りながら「なんでこんなことやっているの?」と毎日泣いていました。
実際に儲かる仕事ではありませんし、自分が休んだらまわらなくなります。でも、冬に樹の形を整えるところからはじまり、秋の収穫まで1年を通して育てたりんごがお客さんの手に届き、それをおいしいと言って食べてくれる。
これがいちばん嬉しくて。お金が稼げるとかではなくて、仕事をやっただけ、返ってくるものがある。これが、やりがいなんです。
成功の裏には、ひたむきな努力がありました。
おいしいりんごづくりを追求最近生産量が増えてきた甘くておいしい黄色いりんごトキ
りんごは品種によって枝の切り方など管理の仕方が違います。作業が大変になるにも関わらず、石岡さんは新しい市場を開拓したいと意欲をみせています。
女性たちの力を活かす有名な品種だけではなく、いろんなリンゴをつくりたいです。グラニースミスやブラムリーといった新しい品種もどんどん試していきたい。りんご農家としては、ないりんごはない、と言えるようにしたいのです。
今後は、直売所やインターネットで珍しいりんごをどんどん売っていきたいですね。
品種によっておいしさも変わってきますが、どんな品種でも満足できるりんごをつくる技術を身につけていきたい。価格が高いのがいいりんごではなくて、食べたときにおいしいと感じるりんごこそが、いいりんごだと思っています。
そんな石岡さんは、20代から30代の若手女性による農協内のグループ「あぐりガールズ弘前」でも活躍中です。
農協に男性主体の組織はあったのですが、そこでは重い肥料を配ったり、運んだりする力仕事も多いんです。新たに就農した女性はその組織に入りにくそうだったり、勉強会でもなかなか質問できなかったり......。
それなら女性だけでグループを作ってしまえ!という流れで誕生したのが「あぐりガールズ」です。ここでは定期的に集まって勉強会を開いたり、園地を見に行ったり、機械の整備を習ったりしています。みんなが集まると情報交換ができて、刺激になるんですよ。
石岡さんたちの活動を知り、問い合わせも増えてきているそうです。
状況が苦しくても自分を信じて続けていれば、いつかは認められる。実際に石岡さんのお話を聞いて、そう感じずにはいられませんでした。さまざまな苦労を経てわたしたちに届くりんご。1個1個が愛おしくなります。