岡田斗司夫プレミアムブロマガ 2018/04/18
おはよう! 岡田斗司夫です。
今回は、2018/04/01配信「初の徹底解説!岡田斗司夫が『新世紀エヴァンゲリオン』を読み解く!」の内容をご紹介します。
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2018/04/01の内容一覧
- 視聴者からのお便り①
- アニメオープニングの歴史『狼少年ケン』、『レインボー戦隊ロビン』、『ファイトだ!!ピュー太』、『マジンガーZ』、『ポプテピピック』
- 『エヴァンゲリオン』オープニングの徹底解説
- 実相寺アングルの追求から生まれたエヴァ独特の映像スタイル
- エヴァの根本にあるテーマ
- SFファンにはわかる、オープニングで描かれている衝撃的な事実
- 「岡田斗司夫アーカイブチャンネル」告知
- 「アニメで特撮を撮る」とはどういうことか?
- 使徒登場シーン
- ハーモニー処理の歴史
- 特撮を超える映像への挑戦
- 実写映像では不可能な「レンズの嘘」
- 庵野の映像作家としての凄さ
- 視聴者からのお便り②
- エヴァ最終回の真実とは?
特撮を超える映像への挑戦
では、特撮を超える映像を作ることはできないのか? 特撮を真似てばかりではしょうがないわけですからね。
『エヴァ』の冒頭シーンではそこにも挑戦しています。
『エヴァ』の第1話では、おそらく、世界中の特撮スタッフが「これをやりたかったけど、絶対に特撮では出来ない!」と、悶絶するほど悔しがったシーンがあるんです。
それが、これですね。
(パネルを見せる)
使徒が飛んでくるミサイルを受け止めて、そのミサイルがグチャッと潰れるシーンなんですけども、みなさん覚えてますか?
「ミサイルがロボットや怪獣に当たった場合、本当はどうなるのか?」というのは、特撮とかアニメが好きなファンのみならず、プロも散々考えてきたことなんです。
こういうシーンを描く時に一番ラクなのは「無敵」なんですよ。「バババーンとミサイルが当たって煙が出るんだけど、煙が晴れたらへっちゃら平気で立っている」というのが、一番ラクで、おまけにカッコよく見えるから、まず、これをやりたくなるんですよね。
だけど、この表現はラクでカッコいいんですけども、ありきたりなんです。みなさんも、たぶん、これまで100万回はそんなシーンを見たと思うんですけど(笑)。
では、実際、どうなるのかというと。例えばデカい戦艦に細いミサイルがガーンと当たると、「一瞬、すごい煙が立つんだけど、煙がはけると、戦艦の一部が欠けて、真っ黒なススまみれになっていて、そこから火が出てる」というのが、リアルな映像なんですね。
逆に、飛んでる飛行機のようなものにミサイルが当たったら、「一瞬でふっ飛ばされて、空中に煙しか残らない」となります。つまり、飛んで来るミサイルと、当たるものとの質量の差によって、どうなるか変わるんですね。
戦艦とミサイルくらい極端な質量の差があったら、戦艦は形としては屁でもないんだけども、実はよくよく見たら穴が空いている。飛行機みたいに軽いものにミサイルが当たったら、両翼が吹き飛ばされるんです。
じゃあ、これが怪獣とか使徒みたいなものだったらどうなるか? どういう風に見えるのかは、質量の差で実は自動的に決まるんですけど。これが使徒みたいな存在となると、すごく描きにくいんですよね。
例えば、お化けのような存在にマシンガンをぶっ放したらどうなるのか? これは国によって違うんです。
アメリカ映画でお化けといったら「ゾンビ」じゃないですか。ゾンビにマシンガンをぶっ放したら、ゾンビは吹っ飛ぶんですよ。「吹っ飛ぶんだけど、なおも起き上がってくる」というのがゾンビの怖さです。
ところが、これが日本のホラー映画になってくると、話は変わってきます。例えば、貞子がTVから出た時にマシンガンぶっ放したとしても、貞子は吹っ飛ばないんですよ。全然平気なんです。
こういう辺りで「ゴジラはお化けと同じだ」って言われるんです。ゾンビのようなモンスターは、ふっ飛ばされるけど平気なところが怖い。だけど、お化けのようなゴーストは、フィジカルなものではまったく効果がないところが怖い。日本人は後者についてより強く考えるから、貞子みたいなものを本当に怖い存在として捉えるんですね。
「では、使徒は、このどちらなのか?」と考えると、たぶん、ゾンビの側なんですよ。
使徒にミサイルが当たった瞬間の分解写真というのを作ってみたんですけども。
(パネルを見せる)
まず、ミサイルが着弾した瞬間に、腕の周囲に細い輪のようなものがポンと現れます。これは「ATフィールド」が微かに出ているということですね。実は、ミサイルが着弾した瞬間、このフィールドが運動エネルギーを吸収していることが、ここからわかります。
だから、この使徒は、ミサイルが直撃したショックを受けていないんです。
ただし、ミサイルの推進機はまだ機能していて、噴射している最中なので、受け止められてからも、さらに前に進もうとする。ここで使徒の右肩を見ると、筋肉の盛り上がりのような描写から、力が腕に集中されているのがわかります。
その結果どうなるのかというと、押してくるミサイルに対して、筋肉で押し返す使徒との間で、まるでズゴックの爪のような形をした使徒の指が、ミサイルを魚みたいに三枚におろしてしまうことになるんです。
実は、ミサイルというのは、その大部分が燃料であって、加速が終了した時というのは燃料がなくなってるので、中味が空っぽの空き缶みたいになっているんです。つまり、兵器について知っている人間にとっては、この三枚におろされてしまうミサイルの描写というのは、ものすごくリアルなんですよ。
そして、この描写こそが、「破壊されるシーンを描くことで初めて、本当の姿を描くことができる」という、庵野秀明の映像スタイルの根底にあるテーマなんですね。
つまり、「ミサイルというのは、鉄の塊のような硬い物質ではなく、本当は薄いアルミのビール缶みたいな存在であって、爪みたいなもので押し返すと、こんなふうに三枚にひしゃげる。なぜかと言うと、ミサイルを構成する金属板というのは、それくらい薄いものなんだよ」と。こういった本質を、破壊して見せることによって描いているんです。
つまり、このシーンは「破壊されることによって存在の本質が暴かれる」という、庵野の思想がものすごく強く出ているシーンなんです。これは、宮崎アニメの食事が美味しそうだということとまったく同じなんですね。
そんな、「破壊を描くことで、ようやく存在そのものをハッキリ描くことが出来る」という庵野秀明の思想がものすごく伝わりつつ、普通の特撮では絶対に描けない特撮的なシーンを描いたという、名場面だと思います。
(続きはアーカイブサイトでご覧ください)
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