1年前、中学受験をしないことを決めた我が家。
江戸川区で4人の男児を女房と共に育てている。通塾はむしろ子どもの好奇心の芽を摘む可能性があるし、小学生にとっては勉強よりも友達と遊ぶことが一番だ。
我が家の4人の息子たちは、全員が区立保育園、区立小学校に進んだ。そして、全員が中学受験をしないこと、塾に通わないことを決めて、区立中学校という選択をした。
2年前のコラムで強調したのは、子どもは親だけではなく地域社会によっても育まれることだった。区立中学が属する地域社会。地域は玉石混合、多種多様。
そこで強い心、創造性、感受性等を育む試みだ。
区立のよさは、健常者と障害者とが一緒に学び、一緒に育つこと。
いじめや不登校をクラス全体で解決していくことであった。(2年前の主張)
http://www.okuchika.net/?eid=4789
■子どもに教えすぎない
わたしの父は教員だった。
中学生のころ、父は地域野球の名選手だったらしい。
教員のとき野球部顧問をしていた。
ところが、父はわたしに野球を教えなかった。
なによりも、学校の先生であるにも関わらず、
わたしは父から勉強を教えてもらったことさえない。
また、母は、絵師の娘で絵が得意だった。
家でデッサンを教えていた。
だが、わたしにデッサンを教えたことがない。
子どもを相手に、大人が教えない。
親が教えないから、子どもは安心して、心から、ただ遊ぶ。
保育園に5年通った。保育園では勉強を教えない。
わたしは小学生になったとき、自分の名前も書けなかった。
いまも保育園では字を教えない。
保育園っていい。
どうか、いつまでも、幼子に勉強を教えるような浅はかな真似はしないでほしい。
保育園が勉強を教えないから、クリエイティブな大人へと
育つのかもしれない。
■ハウツー:高い目標を長期で達成する
方法論は単純であり、自ら決意し、何かをやると決めたら自己責任でやればよいだけ。
一般的に以下の命題は正しい。
1)どんなに難しい仕事も細分化できる。
細分化したひとつひとつの仕事は簡単になる。
2)仕事は繰り返し行うことで生産性が上がる(=学習能力による効率の向上)
以上2点、困難と思われる目標であっても、長期の計画に沿ってコツコツと努力すれば、目標は達成できる。
例その1:
「ピアノ初心者がベートーベンのピアノソナタをどうしても弾きたい場合」
ピアノを習い始めたばかりの初心者にとって、ベートーベンのソナタを弾くことは困難だ。しかし、通常のテンポの10分の1にしてみるとどうか。
一番、難しい8小節を選ぶ。その8小節だけを繰り返し練習する。
そして、徐々にテンポを上げていく。
こういうプロセスをとり、最終的に、ソナタを習得していく。
最終的に2分の1のスピードまでテンポ上げる。
例その2:
「英単語を3000語覚えたい場合」
1回10分間で単語帳の見開き10単語を覚えようと努力する。
翌日、もう一度、その10単語を5分で覚え直す。
同時に、新しい10単語を10分間で覚えようと努力する。
3日目、初日の10単語を今度は2分30秒で覚え直す。
2日目に覚えた10単語を5分で覚え直す。
その後、10分間をかけて、新しい10単語を覚えようと努力する。
(トータル勉強時間は17分30秒)
以降、略。
■誰でもできる細分化と反復練習
ピアノの例では細分化、英単語の例では学習能力の向上を示した。
これらの手順により、長期に渡り、ひとつの高い目標を設定すれば、
誰でも高みに上ることが可能だ。
これは単なるハウツーだ。それができれば世話ない。
■やる気がなければ、ハウツーは無意味
やる気のない子どもをやる気にさせることは無理だ。
やる気のない子どもがいて、親がいる。親には何もできない。
ところが、親は子どもを「やる気」にさせたい。
親の気持ちはわからないでもない。
だが、それは無理な相談だ。
なぜならば、それは本末転倒だから。
そんなことをすれば親が子の人生を生きることになる。
子の人生を生きるのは子である。
親が子になれば、子には行き場がない。
■覚悟を決めるのは子どもだ。親ではない。
子どもは勉強が嫌いだ。
そして、意識も低い。
公立中学生にとって、最大の試練の一つは、高校入試。
小学校と違い、中学生には、定期テストがあり、
区立中学の場合、5段階の通知表がある。
受験では通知表が大きなウエイトを占め、
その通知表は学校の定期テストの出来が反映される。
高校受験への覚悟の有無はあるや否か。
中学生になったら親として子どもに問うてもよいだろう。
もし、高校には特に拘らないなら、それはそれで十分に正しい選択だ。
公立中学を選択しつつ、学者、医者、国家官僚、宇宙飛行士や一流企業就職等を希望するなら、自己の可能性を狭めないために、難関高校から難関大学へ行けばよい。
我が家は、長男は医者志望、二男は官僚(文部科学省)志望であったため、
二人とも難関高校へ行った。
公立中学からも難関大学への道がある、という程度で本コラムを読んでもらえばよい。
中学生になったら、こんな高校がある、こんな大学があるという情報を与えるようにした。それでも、志望校を決めるのは子ども自身であるべきだ。
なぜならば、覚悟を決めるのは子どもだからだ。
中学生になれば、多少の道理もわかる。
自我もある。意思もある。
子に覚悟があれば、親は程々に応援すればよい。
子に覚悟がなければ、親にできることは何もない。
(続く)
日本株ファンドマネージャ
山本 潤
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