書評:とことんやさしい宇宙線と素粒子の本
山崎耕造著、 日刊工業新聞社
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キリスト教は「終末論」で信者を増やしてきた宗教であり、初期の終末論として有名な「ヨハネの黙示録」(執筆年代はローマ皇帝ドミティアヌスの治世(西暦81年~96年)の末期といわれる)は、遠い未来の話では無く、当時キリスト教を迫害していたローマ帝国が神の怒りに触れて滅亡し、キリスト教徒が救われるというリアルタイムの話(いろいろな説がある)であった。
しかし、その後なんとコンスタンティヌス1世は、311年に「ミラノ勅令」を発布。325年にはニカイア公会議を開催してキリスト教を国教化している。
さらに西暦1000年のミレニアムには、終末論が再び高まり、贖罪のために全財産を貧者にばら撒いた金持ちも少なく無かったようだ。
西暦2000年の際にも、Y2K問題というコンピュータプログラムに関わる一種の終末論が流布したが、まったくの空騒ぎに終わった。
その他惑星が地球に衝突する「ハルマゲドン」など、「人類滅亡」「地球滅亡」は我々をひきつけて離さないテーマであるが、そのような終末論のすべてが外れたからこそ、我々人類はいまだに存在しているのだ。
だから「終末論」には警戒しなければならないが、地球に生命に誕生したとされる38億年前から、今日までに生命の大量絶滅は5回あったと考えられる。
また、マヤ、インカ、イースター島、メソポタミアなどの多くのすぐれた文明が滅んできたのも事実である。
だから、文明の滅亡というのは無視できないテーマだが、私が現在リアルに危機を感じているのは「太陽嵐」による「電気文明」の終焉である。
現代は、石器時代、青銅器時代、鉄器時代などになぞらえて「電気時代」となぞらえてかまわないと思うが、この電気時代が始まったのは、せいぜい150年ほど前である。エジソンが白熱電球を発明した1879年以前に遡ることは難しい。
そして、私が心配している「スーパーフレア」の(記録に残る)最大のものは1859年のキャリントン・フレアだから電気時代以前の話である。
当時は、実用的な電球さえ無くモールス信号での通信がようやく実用化された時代であったから、大きな被害は無かったが、もし現在同じ規模の太陽フレアがやってきたらどのような惨事になるかはまったく想像がつかない。
電気文明を完全破壊するほどの大規模な太陽嵐がたった150年前に起こっていることに我々は注目しなければならない。
1989年にも、カナダのケベック州で9時間におよび大停電を引き起こした太陽フレアが発生している。
また、太陽の極大期にあたる2003年11月には、「X30」クラスの太陽フレアが発生している。「X30」とは30メガトン級の水爆3億個に相当する爆発である。ただし、太陽フレアは年に1回~10回の頻度で発生しており、それぞれの規模は30メガトン級の水爆100万個から1000万個に相当する。
また、太陽フレア以外にも「地球寒冷化」に注目すべきであろう。
決して世間で空騒ぎしている「地球温暖化」では無い。
ガリレオ・ガリレイは1612年には太陽黒点の観測を行っていたが、それから約30年後の1645年から70年近くの間ほとんど姿を消してしまった。この時期は「マウンダー極小期」と呼ばれているが、その後1790年~1830年まで続いた「ダルトン極小期」とともに、黒点やオーロラの発生が極端に少なかっただけでなく、平均気温も低かったことが分かっている。
干ばつによる食糧生産低下によって生じる飢饉もしばしばあるが、寒冷化による農作物の被害の方が少なくとも北半球では深刻だ。
1836年の大塩平八郎の乱は、1833年の大凶作を発端とする天保の大飢饉が原因だが、ダルトン極小期の寒冷化によって、すでに農村が疲弊した可能性があるし、凶作もダルトン極小期と無関係では無いかもしれない。
人類は太陽の恵み無しでは存在できないが、その太陽は巨大な核融合炉で、常に放射線を発生させ続けているということも忘れてはいけない。
(大原 浩)
★2018年4月に大蔵省(財務省)OBの有地浩氏と「人間経済科学研究所」
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