スローガン~ゆっくり考え ゆったり投資~
本日の内容
■プロセス1 アイデア■
■プロセス2 取材■
■プロセス3 結論 1)■
■プロセス4 結論 2)■
■まとめ1 アイデア→取材→結論■
■まとめ2 株式投資の基礎学力■
■プロセス1 アイデア■
前号では、日経エレクトロニクス(以下NE)を読んで、気が付いたアイデアを実例として列挙しました(前号を参照してください)。
⇒ http://okuchika.net/?eid=8652
良質な雑誌には、最新の業界動向や技術動向、そして、注目されるトピックが満載されており、株式の投資のアイデアの有効な源泉になるものです。
!→良質の業界雑誌は、よいアイデア源になる
前号のアイデアのひとつは、パーソナル・コンピューターの大手、デル・コンピューターが液晶テレビなどのフラットパネルTVへ意欲を持って参入してくることです。そこで問題になるのが画質が十分かどうかということでした。PCモニターとTVは違うプロダクトだからです。NEでは、画像処理やビデオ信号処理をPIXCEL WORKS(ピクセルワークス、以下、PWと略)などの海外の画像ICメーカーを取り上げていました。彼らがデルに提供している画像技術の善し悪しが今後の鍵を握るだろうということが前号で紹介したNEにありました。
ここでのアイデアは、こうです。
アイデア
!→PCメーカーとして大成功を収めたデルが、テレビメーカーとしても成功を収めることができるなら、デルは「買い」かもしれない。しかし、画質などは十分なのだろうか。
■プロセス2 取材■
アイデアを確かめるために、取材をします。
わたしは、直接、PWの方に取材しました。たまたま、ラスベガズの2004年の家電ショウ(CES)に参加しました。そこにいたPWのエンジニアをたまたま話をすることができました。日本でもシーテックやいろいろなショウが開かれます。そういうところで、取材するのは有効な手段です。また、PWへ直接電話して、聞いてもいいでしょう。そういうとき、英語が問題になりますが、もし、日本に事務所があるなら、日本の事務所に日本語で電話をかけてみるのもいいかもしれません。
PWには偶然出くわしました。驚いたことに、彼らは、CESの台湾や中国のパネルメーカーのブースを回っていました。特にいい絵を出しているアジアメーカーに声をかけていました。わたしは、いい絵の出せるアジア企業には本当に興味がありました。いわば、同じ興味を持ってCESに参加していたのです。技術を持ったアジア企業はあまりいません。しかし、たまたまSKYWORTHというHKの企業(経営者や技術者は松下出身の方です)は、日本やオランダの技術を受け継いでいましたので、いい絵を出していました。そのブースを取材していたら、ばったりとPWのエンジニアに鉢合わせました。すばらしいことに、ブースには、SKYWORTHのCEOや工場長もいらっしゃって、十分な取材をすることができました(ここでも松下の技術がアジアに流出していることが確認できました)。
さて、PWは、なんとフィリップスやソニーへも画像エンジンを供給しているということです(もちろん、多くの機種の中の一部ではありますが)。
■プロセス3 結論 1)■
これを聞いて、フラットパネルの分野でデルは必ず成功できるだろうと確信を持つことができました。TV信号処理や画像処理といっても、毎年、大きな進歩のある分野です。PCメーカーやアジアメーカーが何を考えているのかを知ることができたわけです。
さて、デルのCESのブースは、やりたいことがはっきりわかるよい展示でした。30インチのLCDテレビが展示されていました。
→十分なブランドと販路を持つデルは有力なフラットTVメーカーとなり得る。
わたしは、今、米国の大学院で信号処理の授業を履修していましたからわかるのですが、画像処理はもっとも人気のある講義のひとつなのです。多数のエンジニアが毎年輩出されています。米国も負けず劣らず、ソフトウエア処理をIC化することが得意な国です。日本が将来にわたって優位性を維持できるかは予断を許さないところです。
■プロセス4 結論 2)■
多くの日本企業がすばらしい展示をしていました。画質に対するこだわりと消費者が使いやすい操作性のよさが、日本企業の展示では目に付き、日本ブランドの評価の高さが確認できました。
ブランドやテクノロジー別にすみわけが上手くできています。
価格はブランドと画像などの品質に比例しています。
テクノロジーではPDP、液晶、プロジェクションTVともはっきりとしたすみわけがあります。
株式投資では、どちらがいいかという議論をしがちですが、いまのところは、誰が究極の勝者かをあえて決めてしまわないで、「フラットパネルは非常に大きな市場になる。どの企業も勝てる可能性がある」というスタンスでよいのかなという感触を得ました。
→大規模な市場が創出されるため、今回は、全員が勝利できる可能性がある。
■まとめ1 アイデア→取材→結論■
このように、雑誌からのアイデアをもとにして、取材を行い、あるいは、インターネットのサイトから情報を選び取り、分析して、結論を出すという作業をすることで、株式投資の成功の確率を少しでも上げていく努力をするのです。
■まとめ2 株式投資の基礎学力■
ところが、アイデアを出す段階で、どうしても、必要な基礎的なロジックや基礎的な知識が必要になります。
たとえば、今回の場合では、デルがどうして脅威になりえるのか(基本的に個別の会社がなにをしているかという理解と知識)、あるいは、PWがどうして重要か(テレビという製品の理解やテクノロジーへの理解)、あるいは、どういうメーカーが乱立しているのか(業界や製品市場に対する知識)。あるいは、デルにとって、テレビはどの程度の業績へのインパクトがあるのかという分析(財務分析)も必要です。
いつか、わたしは、新聞を読まないということを言っていました。しかし、株式の初心者の段階では、わたしも、日経や日経産業などの業界新聞を読むことで、どの企業がどんなことをしているのかという基礎的な学力を数年間かけてつけていったものです。ですから、効率的にアイデアを消化していく段階では、大変な記憶力が必要になります。思えば、英語を勉強するときには、少なくとも1000や2000もの単語を暗記することは当然のことです。同じ事が投資にもいえます。コード番号や銘柄名、セグメント、セクターなどがポンポンと出てくれば、当然、株同士の結びつきから、ひとつのアイデアが、10や20の投資先の検討に結びつくことになるのです。
そういう意味では、アイデアは、記憶力や知識量に比例するということがいえます。わたしは、多くのすぐれたファンドマネージャーを知っていますが、彼らは例外なく実に多くの銘柄のことを知っているものです。
(つづく)
山本 潤 2004年スローガン
「~ゆっくり考え ゆったり投資~」
~本レポートに関する重要な事項~
本レポートは投資教育やイベント紹介などを目的に2004年01月12日に執筆されたものです。本レポートは、個別株の売買などの投資決定を下す上での参考にはなりません。本レポートは、その正確性もしくは完全性などについては保証するものではありません。本レポートで紹介した見解などが今後変化したとしても、億の近道発行プロジェクトは、それを読者に通知する義務は負いません。