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株の玉手箱 過去の栄華を振り返り、相場の心得を知る
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株の玉手箱 過去の栄華を振り返り、相場の心得を知る

2019-11-23 12:49



     皆さん、こんばんは。あすなろ投資顧問の藤井勝行です。


     早いもので今年も後1ヶ月と10日ぐらいになりました。毎年この時期になると思い出すのは私が以前勤務していた山一證券の自主廃業を発表した時のことです。

     今から22年前の11月23日でした。
     私は山一證券の東大阪支店で個人営業に従事しておりました。時に自主廃業1か月前の【1997/10/24日経平均は17363円】。

     私は山一の毎月給料天引きで貯めた自社株も保有していたので、それなりに自社株価がいつになく気になり始めたのはこの頃でした。そんな時11月に入ると山一株が毎日のように下がり、遂に100円を割れるところまで売られました。

     拓銀、三洋証券が次ぎ次ぎと倒産して行くのを見ていると、私のお客様も山一から株券や出金を要請することが頻繁になり、経理の女性社員に頼むと泣きべそをかきながら淡々と業務処理をしてくれていた時の罪悪感は何とも言えないものがありました。この時「もしかして」と思い始めましたがしかし、当時は外資系証券との資本提携話しなどで最悪、看板は代わっても会社はなくならないと正直思っていました。


     ついに【その日】がやって来ました。

     私は【自主廃業】この四文字の意味が全く分かりませんでした。
     私は相撲部屋でもあるまいし、勝手に業務を止めるってどういうことだ?
     一体本当は何が起こったんだ?と何度も思い返しました。
     3連休明けの11/25は予想通り開店した東大阪支店は株券や出金を求めるお客様が殺到しました。
     この日の【1997/11/25日経平均は15867円】でした。

     日経平均は前日比854円安と暴落し山一ショックでした。
     皮肉にも山一證券が100周年を迎えたのが廃業を発表する約7か月前の4月15日でした。次の100周年に向かって我武者羅に突き進み、山一と共に殉職しても本望と思っていました。
     今では101年目の幻の毎年お客様にお配りする1998年版の山一證券製作のカレンダーを大事に実は保管しています。不思議なもので山一の伝統や歴史、功績等の思い出話しが廃業直後から絶え間なく、いろんな所から聞こえてきました。


     中でもこれだけは是非お伝えしたい。
     山一證券は1897年、小池国三商店として山梨で創業。1926年に山一證券株式会社になりました。この頃、伊勢神宮の一番神楽になったと云われています。日本を代表する企業であるという自負が窺えます。実際、かつては業界のトップ企業で東証の値付けの9割は山一経由で断トツでした。

     伝統と格式、経歴と実力からみても、最も日本民族を象徴する企業だったのです。
     一般的にはほとんど知られていませんが、山一證券は伊勢神宮の「一番神楽」でした。
     それは、氏子のトップの座で由緒ある伊勢神宮の氏子の代表であります。
     この一番神楽がどれほど名誉ある地位かといえば、毎年1月1日に伊勢神宮
    で行われる「歳旦祭」がありそれがよく物語っています。

     伊勢神宮と皇室が一体であることは、誰もが知っています。天皇をはじめとする皇室の面々は、伊勢神宮の奥の院でお祓いを受け、お神酒を拝領する。
     一番神楽は、その次の部屋で同じようにお祓いとお神酒を受けるのである。
     つまり、天皇家の次に日本を代表する儀式に与ることができる栄誉をもっていました。

     この名誉ある地位を、かの松下幸之助(松下電器の創業者)が切望し、お金はいくらでも出すからと、山一證券に一番神楽の権利を譲ってくれるよう直に交渉したのですが、山一が承諾しないと、今度は伊勢神宮の遷宮祭(20年に一度、内・外宮の正殿などの諸殿を建て替え、そこに納められている装束神宝も新たに整える式典)などに莫大な費用を寄付して、一番神楽の権利を求めましたが、ついに手に入れることができなかったのです。

     因みに廃業までの松下電器の主幹事は歴代山一證券が務めました。山一證券は、その権利を有する民族派企業で、ある意味では日本を象徴する株式会社だったのがお分かり頂けると思います。


     1997年当時、日本で1996年から2001年度にかけて行われた大規模な金融制度改革を指す所謂【金融ビックバン】が始まっていました。

     この時期に銀行など金融機関の「護送船団方式」を崩壊させるような改革が進行し、その後2002年以降には、銀行業・保険業・証券業の各代理業解禁など規制緩和が進行しました。これにより外資系証券、銀行が雪崩の様に日本に入り込みビジネスを拡大しました。

     廃業後は米系のメリルリンチ証券が山一の主要店舗と人材を受け入れ、米国流の資産管理型営業を導入するも4年で日本撤退となりました。


     ここで疑問が残ります。飛ばしは当時他の大手他3社も多少なりともあったとされており、金融ビックバンで日本を象徴する会社を政府が差し出したのではないかとされる考え方がありました。
     それに山一は昭和40年証券不況時に一度倒産しかけており、社風もおっとりとしている山一を外資の生贄にするには丁度良かったとのではないか、と。

     金融業界は規制が厳しく外資が中々参入できないので、山一を解体する事により金融自由化の門戸を開いたのではないか。やはりこの時期以降に外資系証券に人材が大量に流れ始めた契機になったと思われます。


     なぜ山一證券が突如、自主廃業を選択しなければならなかったのか。

     そこには恐ろしい旧大蔵省の「思惑」が潜んでいたようです。
     当時の首相は橋本龍太郎(皮肉にも岡山出身)で、最大の政策は行政改革でした。しかしそこで掲げる「財政と金融の分離」は、当時の旧大蔵省にとって絶対に潰したいものでした。

     1997年11月14日大蔵省の長野証券局長を訪ねた山一證券の野沢社長に対し、長野局長はハッキリと【山一證券は三洋証券とは規模が違う】と支援を約束したとされています。この時点では山一の抱える巨額簿外損失も長野局長に詳しく説明してありました。
     ところが同じ1997年11月14日に橋本首相が小村大蔵省次官に「財政と金融の分離」を最終通告したため、そこで旧大蔵省の態度が一変したのでした。

     つまり山一證券が破綻して財政出動となるなら、金融政策も一体として旧大蔵省が主導権を取らなければならないという理屈でした。三洋・拓銀・山一證券「消滅」は、すべて橋本行政改革とくに「財政と金融の分離」を潰すための旧大蔵省のクーデターだったことになると考える向きがありました。

     当時山一は株主資本で4300億円あり2600億円の簿外債務が発覚してもなぜ潰れるかが私には理解できませんでした。やはり今でもスケープゴートにしか私には思えてなりません。


     前置き長くなりましたが、そもそも山一證券が顧客の損失を補填し、行き場の無くなった含み損玉を抱え耐え切れなくなって行った事実があります。そこには1990年以降バブルがはじけて日本株が暴落し、その後いつかは株価は反発して、含み損が解消出来るだろうと言う経営者の浅はかな相場観が廃業への道を選択したのです。

     歴代山一の社長は日本最高学府に近い大学出身がなり、舵を取ってきました。もう少し真摯に相場を分析し素直に立ち向かえば最悪の結果は免れたと思われます。
     今となっては日本四大証券の一角を担う企業のトップが相場の本質を何代にわたっても理解していなかったという情けない話しとなります。

     相場の本質を理解しないと山一證券のような企業でも簡単に無くなってしまうことも皆様は決して忘れないで下さい。


     最近でもカルロスゴーン元日産会長は評価損含む私的なディリバティブ契約を日産に付け替え、日産の子会社の資金を流失させたと話題になりました。
     この損失も相場での損失です。


     相場の本質を正しく理解してからの投資が鉄則です。希望的観測は結果損失の拡大につながる可能性のあることを理解して下さい。

     くれぐれも読者の皆様も決して相場を軽んじらないで下さい。
     株式投資をするからにはちゃんとした心構えで臨んで下さい。
     株式投資は人間の欲の塊が渦巻く世界です。


     大事な資金を無くすことなく、しっかりした知識を持ち立ち向かいましょう。


    (あすなろ産業調査部 藤井勝行)

    [藤井勝行氏の過去コラム]
     相場の本質を知ろう http://okuchika.net/?eid=8755


    [藤井勝行氏プロフィール]
     1991年中央大卒業後、山一證券で個人営業を担当。その後国内外の証券会社で機関投資家向けに日本株式セールスを担当、独自のファンダメンタル・チャート分析に定評がある。経済専門新聞や週刊誌、国内外情報ベンダー等に市況コメントを掲載し株式セミナー講師としても活躍。相場の本質を伝えることをモットーとする。


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    株式会社あすなろ/関東財務局長(金商)第686号/加入協会 一般社団法人日本投資顧問業協会

    (提供情報はあくまでも情報の提供を目的としたものであり、投資勧誘及び、売買指示ではございません。株式投資には価格の変動等によって損失が生じるおそれがあることをご理解の上、投資にあたっての最終判断はご自身の判断にてお願い致します。信頼できると思われる各種情報、データに基づいて作成しておりますが、その正確性及び安全性を保証するものではありません。)
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