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金融市場の行方
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金融市場の行方

2013-04-15 12:00
    前回までのコラムにて2週続けて金融当局のマヌケ仕事について書いたところ、読者の方から「当局ってどこなのか?」との質問を頂きました。ご存じの通り、金融業については財務局です。地方毎に財務局、財務事務所などがあり、その地域の金融機関の監督・指導にあたっています。
     それらとのやり取りについて聞いた話を書いた訳ですが、小職も以前それら業務に係わっていた頃の記憶があります。
     例えば、膨大な伝票類のうちの幾つかで検印が漏れていることが検査で分かり「どうして検印漏れが起きたのか?今後発生させないための対策は?」などにつ いて全て文書で提出させられ、“てにをは”まで細かく文書校正をさせられていた管理部門の人達を見てきました。言わば、人がする仕事ですからケアレスミス の類です。しかも複数の検印のうちどれかが漏れても業務には何ら支障なく、誰かに迷惑をかけるという類のミスでもありませんでしたが、業務手順書に書いて ある通りにやってないのはどういうことだ?と詰められていました。
     確かに漏れは漏れですが、たとえ悪意を持って手抜きをしても業務に支障が無い程度の事柄にもかかわらず膨大な時間をかけ報告書を提出させます。その必要 性の説明については、横で聞いていてもまるで屁理屈でしたが、自分の意見を押し通すあたりなど正に役人によるパワハラでしたね。言う事を聞かないと業務停 止や注意勧告を恣意的にされてしまいますし、そんなことをされたらその担当者は左遷されますので、役人が満足するまで、顔色を窺いながら泣く泣く徹夜でそ のゴミ仕事をしていました。
     そんなゴミ仕事(パワハラ)をしている間に大手証券のインサイダー事件やAIJ事件が膨張し続け破裂した訳ですが、発覚したらしたで、今度はその無策の 責任を特定の業者に擦り付けるための仕事を開始します。こうやってどこの業界でも業務が停滞し日本の国力が失われていく構図です。

     本来なら悪いことをしたときの罰則を強化することこそが抑止力になり、意味の無い検査に人手をかけるよりずっと効率的なはずですが、そんなことをしては 自分達の仕事が無くなります。そこで未然防止と称して事前指導強化のための仕事(組織)を作るという名目で予算を獲得する。これこそが役人がする最優先の 仕事でした。
     件の知り合い曰くは、彼らとのやり取りは録音してあるので、自分がこの業界を離れた暁には暴露本を書くと言っておりました(笑)。その際には私も喜んで協力すると伝えた次第です。楽しみです(^^)。

     ところで、先週の日銀の政策決定会合について「幾らなんでも無茶な国債買い入れなどは発表出来ないでしょうから、大凡の見当は付きます。」と書きましたが、結構無茶な緩和策がリリースされました。やはり小生は相場に向いていないのか…(苦笑)。
     小生は経済学者でも何でもありませんので、本当に日銀の政策が無茶なのか否かを論じる立場におりませんが、戦時中レベルの対GDP比国債残高と言われ、 依然としてプライマリーバランスの目処すら立たない中で、リスク資産だろうが超長期債だろうが何でも日銀券で買い付ける…と市場を煽ることが果たして正し いのか?…と、どちらかと言えば不安な気持ちにもなっています。その一方で超円高局面を脱せたことは良かったと思いますが、これは貿易収支赤字が拡大して いたことなどで円安へのきっかけ待ちであったからとも感じています。酷過ぎた民主党が撤退するとともに、日銀総裁選任へのストーリーや安部政権誕生のタイ ミングが良かったのでしょう。

     一昨年末頃から銀行の融資態度が一気に緩和されたことで不動産は首都圏の優良物件を中心に値上がりしておりますし、株式市場は半年間で50%も値上が り、債券市場では国債利回りが1%から0.4%へと急落しました。黒田総裁は金融の世界の方ですから、金融市場を使って景気回復をと考えているのでしょ う。
     とは言え、確かに株式は上がっていますし首都圏の大型不動産などの資産保有者には朗報なのでしょうが、これで国民の生活が豊かになり、納税額も増える… などと言うことがあるのでしょうか。確かに、資金調達に不安がなくなれば企業の設備投資や事業拡大の意欲が出てきたり、富裕層の消費意欲が増進したり…な どもあるのでしょうが、大半の国民はバブルの恩恵を受けるほどの資産は持っていません。全体感として円安が一定以上進めば消費者物価などが上がるため、一 般的な消費者目線からは給与水準が上がらない限りそれらの生活コスト増加が景気回復メリットを上回ってしまうと感じます。

     「しばらくは株が上がった、土地が上がった」とのニュースが頻繁に流れるのでしょうが、原宿を歩く若者達にとっては「それが何なの?」「銀行や不動産会 社が儲かるだけ?」との印象ではないでしょうか。今年がバブルの始まりの年なのでしょうか。60代以上の既得権者の資産が膨らみ、若年層の生活がより厳し くなるだけで終わらないよう、規制緩和等による産業活性化にどこまで踏み込めるのか?が大事です。
     が…、まだ自民党の政策からは具体像が見えてきません。たった5つの選挙区を減らすだけで「すったもんだ」しているレベルです。個々の政治家の裏側では 既得権団体や後援会が大騒ぎしているようで、ある関係者からはそれらの関係会合だけでも大変だと聞きました。ついでに参院の5倍以上の格差から目を逸らし たまま参院選に突入させたい戦術もありそうです。本来なら今の政治家は「両院とも2倍以下」と言わねばいけないはずですが。

     1990年代以降、資産デフレに悩まされ続け、不動産や金融資産などが毀損することで経済を低迷させた大きな要因であると思われますから、資産減価によ る景気圧迫要因は取り除くべきですが、それ以上に国内産業が振興せず、不動産や海外への短期的な投資ばかりに目がいってしまう現状を何とか出来ないものか と感じています。

     先月から電子部品の採算性が戻りつつあるとの記述をしていましたが、いかんせん民生用の伸びが芳しくないところに産機市場も予想以上に不振が続いていま すから、最近のデータ等からは現在のところ円安で生産が伸びている(販売が増加している)とは全く言えない状況で、為替益を除いた実需面の恩恵は一部の企 業に留まっているようです。自動車部門は相当の勢いで回復しつつあるものの、民生用電気部門はまだ厳しさが続きます。

     ちょっと考察ですが、昨年の8,000円台半ばのインデックスレベルで東証一部時価総額は約250兆円でしたから、本日4月10日時点の東証一部時価総 額は約390兆円です。随分戻ったと感じるとともに増資も相当多かったなぁ~と感じました。仮にリーマンショック直前ピーク時の約550兆円まで戻ったと すると今のインデックスから引き直して、日経平均で約19,000円になります。2000年ITバブル時の450兆円で計算すると約15,500円です。
     今回は長期資産デフレの後で不良資産の解消が相当進んでいますから、確かに資産再膨張への期待は大きい(なり易い)とも思われます。日銀のサプライズ緩 和だけではなく産業活性化(雇用増加)にも結び付くようなら、直ぐにではないものの、数年内に時価総額500兆円=17,200円辺りまでは行けるか なぁ~?と感じている今日この頃です。

    (街のコンサルタント)

    (情報提供を目的にしており内容を保証したわけではありません。投資に関しては御自身の責任と判断で願います。)
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