私の著書でよく取り上げるのが、投資の本質を的確にあらわす「100人の村」と「20年サイクル」です。

 まず「100人の村」ですが、例えば日本の株式市場に100人の村人しかいないと仮定します。リーマンショック級の暴落が起こった後、大部分の村人は「株は危ないからやめた方がいいよ」と口を酸っぱくして言うでしょう。
 そのような「大衆」の意見をものともせず株式投資を続けるのは、バフェットのように洞察力が優れた10人程度の投資家でしかありません(100人の村の 図解は、「バフェットに学ぶ【永久不滅投資法】」―損を出さないで永遠に資産を増やすことは可能かー(同友館)の第3章・34ページなどをご参照くださ い)。

 彼らは「大衆が恐怖におびえているときには大胆に、彼らが熱狂しているときには臆病者のようにふるまう」というバフェットの言葉の本質を理解していま す。そのため、「大衆」である村人がささやく「株みたいに危ないことはやめた方がいいよ」という<親切な忠告>やマスコミの「世界が崩壊する」というよう な大げさな報道などまったく気にせず、将来を見据えて積極的な投資を行います。
 もちろん、投資は「安く買って高く売る」のが最高の戦略ですから、洞察力のある人々は、このような暴落時に最安値で株式を購入し大きな利益を上げることができます。反対に大多数の「大衆」は最高の投資チャンスを見送ります。

 そうこうしているうちに、<株式暴落>の記憶が和らぎ、株価も底値を固め上昇に転じます。すると「株は危ないからやめた方がいいよ」と言っていた人々の中から、「少しくらい試しにやってもいいんじゃない?」という人が現れてきます。
 このとき、株式投資を行う村人は20人から30人くらいに増えていますが、大多数の村人やマスコミは「今の株価上昇は見せかけだから、そのうちすぐに下がるぞ」とあくまでネガティブです。

 アベノミクスをきっかけに大幅に日経平均が上昇したものの、マスコミや大衆が株式投資に懐疑的な現在は、長期的なサイクルでいえばまさにこの20人から30人の村人が株式を購入している段階です。
 確かに世界情勢は混とんとして、いつ中国や韓国が崩壊してもおかしくはありませんし、その他の新興国、欧州、南米、中東等、どこを見ても厳しい状況で す。市場やマスコミも「株価が上昇する要素に注目するのでは無く、売り材料に素早く反応」する状態です。しかし、このような時はまだ十分投資余地があり 「市場(他の投資家)がビビッているときは買い」と言えるでしょう。

 例えば、共産主義中国や南北朝鮮に動乱があっても、ロシアが崩壊しても、心配はいりません。一時的に東京市場がつれ安になるでしょうが、短期間で上昇サ イクルに戻ります。<戦争は買い>という基本原則だけでは無く、現在の日本は<成長の20年サイクル>のど真ん中にあるからです。
 失われた20年で日本はバブル期の贅肉体質から筋肉質に見事に変身しました。ですから、少々のことにはびくともしません。

 この20年サイクルについては、『勝ち組投資家は5年単位でマネーを動かす』(PHP研究所)の第1章25ページの<図表3:日経平均株価とNYダウ平均株価の比較表>などをご覧いただくとよくお分かりになると思います。

 この表では、日経平均とダウの長期的推移を比較していますが、20年単位で両者が全く別の方向に向かっていることがよくわかります。例えば、日本のバブ ル崩壊後日経平均は4万円を目指す水準から8000円近辺まで下落しましたが、同じ期間にダウは1000ドル台から1万4000ドル近辺まで上昇していま す。
 日々の値動きを見ていると、ダウが下げると日経平均も下げる、逆にダウが上昇すると日経平均も上げている(連動している)ように見えますが、長期間の流れを見ればまったく逆方向を向いているのが明らかです。

 そして、米国が1990年代の前半から2010年代の前半までの20年間、ITバブルも含めた驚異的な経済成長を謳歌したのに対して、日本はバブル崩壊後の「失われた20年」に苦しみました。
 しかし今、サイクル的には両者が逆転する時期に入っており、現在ダウが上回っているポイント数(ダウが16000ポイント台に対して、日経平均は1万5000ポイント台)も、近いうちに逆転し日経平均のポイント数がダウを上回るでしょう。

 ですから、もしダウが急落してもあわてる必要はありません。それは長期的には日経平均に影響を与えないからです。

 そうこうしているうちに、日経平均が上昇し株式投資を始める村人が増えてきます。50人くらいになると市場の雰囲気も変わってきます。「乗り遅れるな」という声があちこちから聞こえてくるでしょう。

 さらに株価が上昇すると危険水域に入ってきます、俗に「主婦が証券会社に株を買いに来たらその相場は終わりだ」といいますが、サブプライムショック、リーマンショックの前の株式市場がまさにその状態でした。

 数か月前までどこで株を買ったらいいのか知らなかった、入社したばかりのOLが、「株で儲かったからヨーロッパ旅行に行ってくる」などと言い始めます。そして書店には株式投資の入門書があふれます。危ないと思っていると、案の定暴落が起こりました。

 これは理屈でいえば当たり前のことです、OLや主婦が株式投資を行うということは、村人のうち90人以上が株式を購入している状態です。その90人以上の人が「株は儲かる」「株をやらないやつは馬鹿だ」と騒ぐわけですから、市場はまさに「熱狂」しています。

 しかし、世の中には「家訓で禁じられているから株をやらない」、「株を買うお金が全くない」人もいますから、10人くらいの人は生涯株式投資を行わないでしょう。

 つまり90人以上の人が株を買って「上がるぞ」と騒いでいるときは、もうそれ以上株を買う人が村の中に残っていないということなのです。誰も買わない株の値段が下がるのは当然です。

 最初のうちは「すぐにまた上がるさ」と静観を決め込んでいた村人も、毎日株価が下がるのに耐えきれず、一斉に株を売り始めます。こうなるともうパニックです。暴落は必然で、再び最初の10人の村人しか株式を持っていない状態に戻るのです・・・

 繰り返しますが、現在の周辺の声を拾ってみるとまだまだ株式投資に懐疑的な声が多いようです。つまりまだまだ「株式投資のチャンスにあふれている」ということです。

(大原浩)

★10月17日の
メビウスの「資産倍増計画」
https://www.youtube.com/watch?v=qZWr0F6Ph9w&feature=youtu.be&t=2m55sに出演しました。テーマは「日本・世界経済、20年サイクル。
<日本人以外はなぜ反省しないのか>」です。


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(情報提供を目的にしており内容を保証したわけではありません。投資に関しては御自身の責任と判断で願います。)