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「Night Cruising」
コメ0 草の根広告社 23ヶ月前
ある月夜のことだ。娘を後部座席に乗せて車を走らせていた。海沿いの134号線は街灯もなく、ヘッドライトだけが頼りだ。波飛沫が上がるたびに仄かな月明かりで蛍みたいに発光する海面。ミラー越しに覗くとその光の明滅を見つめている娘の横顔があった。その無言の横顔に子どもの頃、父親が運転する車にひとりで乗ってい...
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「サンタクロースへの手紙」
コメ0 草の根広告社 25ヶ月前
妻と娘がクリスマスツリーを飾っていた。 立冬だった。陽射しがあるとまだまだ汗ばむくらいだけど、今年もあと二ヶ月を切っているのだ。ほんの半月前まで海水浴ができていたなんて信じられない。
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「夕日が泣いている」
コメ0 草の根広告社 25ヶ月前
夕焼けにもの悲しさを感じる季節になった。保育園の帰りに娘と手を繋いで精肉店へと歩いていく。夕食用に頼んでおいたチキンカツ三枚を受け取りにいくのだ。買った精肉を業務用の大きなフライヤーで揚げてくれるサービスの手軽さと美味しさを知ってしまうと家で揚げ物をするのが億劫になってしまう、と妻も苦笑いして...
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「正しさよりも大切なもの」
コメ0 草の根広告社 25ヶ月前
娘の相談事で答えに窮することが多くなった。理由は3つある。ひとつは話してもまだ理解できないかもしれないこと。2つ目は正解がないこと。そして3つ目は人間は愚かで信用するに値しない動物であるという現実も伝えていかなければいけないことだ。
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「なぜ乳歯が永久歯に生え替わるのかについて考えてみた」
コメ0 草の根広告社 26ヶ月前
娘が6歳になった。「おめでとう」と言ったら「歯がぐらぐらする」と下の前歯を見せて笑った。6歳になったと同時に乳歯から永久歯への生え替わりが始まったようだ。
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「子どもが自転車に乗れるようになる為に必要なもの」
コメ0 草の根広告社 26ヶ月前
娘の自転車の補助輪を外したのは八月の最終週だった。計画的なものではない。朝、海辺で自転車を走らせていたらパンクした。その日の午後、逗子の自転車店に修理に向かう途中で衝動的に思いついたのだ。「どうせだから補助輪取っちゃおうか?」「えー!」 娘にとって青天の霹靂だったのは間違いない。
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「可能性があるということは」
コメ0 草の根広告社 26ヶ月前
5歳の娘はでんぐり返しが苦手だ。最初は恐怖感があった。でんぐり返しなんてちっとも怖くないよ、と読んでいる誰もが思うかもしれない。でも、怖いものは怖いのだ。理屈じゃない。娘は人一倍怖がりだ。良く言えば慎重だ。石橋は何度も叩いてから渡る。懺悔すると、娘がそうなったのは父親であるぼくのせいでもある。...
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「今日ごはんなあに?」
コメ0 草の根広告社 27ヶ月前
夕方、迎えに来たぼくの顔を見るなり、娘が訊く。「今日ごはんなあに?」 朝、起こしに行った妻の顔を見るなり、娘が訊く。「朝ごはんなあに?」 朝、娘の髪を結っているぼくの顔も見ずに、娘が訊く。「今日給食なあに?」
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「もっと抱き締めてあげていればよかった」
コメ0 草の根広告社 27ヶ月前
子育てが一段落したという方に話を聞く機会があった。「小さいときは一瞬だったよ」 もっとたくさん抱きしめてあげていればよかった、と後悔の言葉を口にされていた。仕事をセーブして、家事を手抜きして、自分のことは後回しにして、子どもに向かう時間を少しでも多く捻出すればよかった、と。
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「2023年4月1日」
コメ0 草の根広告社 27ヶ月前
1回目のワクチンを接種したのは、ちょうど1年前の今日だった。その1年前の今日は何をしていたんだろう。すぐに思い出すことができない。その前の年に至ってはもはや紀元前のようにすら感じられる。もちろんアルバムやスケジュール帳、日記を手掛かりに記憶を手繰り寄せることもできるのだろう。そこには居酒屋で生...
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「どれだけ泣いてもいいから」
コメ0 草の根広告社 28ヶ月前
ある朝、大きな破裂音でぼくは目覚めた。娘が激しく泣き始めていた。「どうしたの?」 心配して駆け寄る。足下で赤いゴムの皮が皺苦茶になっていた。「ふうせんがぁー」 昨晩、妻に膨らませて貰ったお気に入りの風船だった。天井に向かって何度もトスしていたら割れてしまったそうだ。
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トヨタ生産方式について考える:その29(1,878字)
コメ0 ハックルベリーに会いに行く 28ヶ月前
豊田佐吉と豊田喜一郎の父子は、必ずしも円満な関係ではなかった。というのも、喜一郎の実母は喜一郎を生んですぐ、出て行ってしまったからだ。出て行った理由は、佐吉が研究に没頭するあまり、家庭を全く顧みなかったからというもの。佐吉は、子供にもそうだが、妻にも無関心だった。家庭を顧みない男性は、当時はけっ...
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「依存し過ぎないこと」
コメ0 草の根広告社 28ヶ月前
長葱が好きだ。毎日何らかの形で口にしている。蕎麦や納豆をよく食べるのも、長葱を食べたいがゆえだったのだと数年前に気づいた。にもかかわらず、長葱を栽培したことはない。菜園を始めてもう10年になるのにだ。どうやら自分では育てられないと思い込んでいるようだ。ぼくは農薬も化学肥料も使っていない。化学の力...
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「ぼくと父の二人旅」
コメ0 草の根広告社 28ヶ月前
「やだ、あんた覚えてないの?」 母が素っ頓狂な声を上げた。ぼくには父親と二人で旅をしたことが一度だけあると母が話してくれたときのことだった。ぼく自身には父と旅をしたという記憶さえなかったのだ。
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「なにもしない一日」
コメ0 草の根広告社 28ヶ月前
三連休の最終日、仕事に出掛けようとしたぼくに娘が言った。「つむちゃん、今日何するの?」 このところ休んでいない。年長になってからは保育園も休まなくなったし、週二日の休日のうち一日はバレエ教室に通い、残りの一日は友達と遊んだり、祖父母の家に行ったり、なにがしかの予定が入っていた。たまには家でゆっ...
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「ぼくらはみんな泳いでいた」
コメ1 草の根広告社 28ヶ月前
ぼくが子どもの頃の話だ。つまりは、50年近く前の話だ。アメリカでは生まれたばかりの子をプールに投げ込んで泳ぎを取得させると母が言っていた。羊水の中にいた頃の感覚を覚えているうちに原始反応、条件反射で泳ぎを取得させるのだという。作り話か、どこかで聞き囓った話を自分なりの解釈で再構成したのだろう。そ...
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「だるまさんがころんだ」
コメ0 草の根広告社 29ヶ月前
子育ては大人と子どもが共に育つ絶好の機会である。子どもと暮らし始めて強く実感した。教えて育てる、ではなく、共に育つと書いて「共育」。それは親と子だけの話じゃない。先生と生徒もだし、教育を司る行政と子どももまたそうあるべきだろう。