マル激!メールマガジン 2016年8月31日号
(発行者:ビデオニュース・ドットコム http://www.videonews.com/
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マル激トーク・オン・ディマンド 第803回(2016年8月27日)
子宮頸がんワクチン提訴に見る薬害の連鎖が止まらないわけ
ゲスト:花井十伍氏(全国薬害被害者団体連絡協議会代表世話人)
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 薬害の連鎖が止まらない。スモン、サリドマイド、薬害エイズ、薬害肝炎・・・。そしてこのたび、子宮頸がんワクチンが、新たに薬害裁判の歴史に加わることとなった。
 2016年7月27日、子宮頸がんワクチンの接種を受けた15歳から22歳の63人の女性たちが、国と製薬会社を相手に訴訟を提起した。問題となっている子宮頸がんワクチンは正式にはHPV(ヒトパピロマウィルス)ワクチンと呼ばれるもので、これまで10代の女性を中心に340万人がワクチンの接種を受けている。
 子宮頸がんは、厚生労働省によると、今、若い女性の間で増えていて、一年間で新たに約1万人が発症し、毎年約3000人が亡くなっているという。性交渉によって感染し、すでに感染している人には効果がないとされるため、性交渉を経験する前の10代の少女たちへの接種が、2010年頃から、公費の助成などによって積極的に実施されてきた。
 ところが、ワクチンの接種を受けた少女たちの中から、副反応と思われる症状を訴える人が出始めた。多くが手足や身体に痛みを訴え、失神、歩行障害、記憶障害などで学校に行けなくなったり、車椅子での生活を強いられるようになった。
 ワクチンと副反応の因果関係については、正確なことはわかっていないことから、これが「薬害」だと決まったわけではない。しかし、自身が薬害エイズの被害者で、現在、薬害被害者団体の代表を務める花井十伍氏は、HPVワクチンをめぐるここまでの経緯は、日本が過去に経験してきたさまざまな薬害の構造と酷似している点を強調する。被害者が薬害を訴え出ても、科学的に証明されていないという理由から国にも製薬会社にも相手にされず、やむなく訴訟となり、随分と時間が経ってから、ようやく被害者たちが救済されるという、一連の薬害の構造のことだ。
 日本ではなぜ薬害が繰り返されてきたのか。その歴史の中で、今回のHPVワクチン問題は、どのような位置づけになるのか。薬害根絶のために何を考えなくてはならないのか。子宮頸がんワクチンの副反応被害に対する訴訟が起こされた今、薬害エイズの当事者で薬害の歴史や薬事行政に詳しいゲストの花井十伍氏とともに、ジャーナリストの迫田朋子と社会学者の宮台真司が議論した。

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今週の論点
・ワクチンと保険療養の大きな違い、社会防衛という概念
・「子宮頸がんワクチン」問題は、どのように起こったか
・“科学的根拠”という勘違い
・薬害問題をなくすには、市民のコミットメントしかない
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■ワクチンと保険療養の大きな違い、社会防衛という概念

迫田: 今日のテーマは「薬害根絶」です。これまでもスモン、サリドマイド、薬害エイズなどがありましたが、先月7月27日、HPV(ヒトパピロマウィルス)ワクチン――子宮頸がんワクチンと言われていますが、この副反応の被害に遭っているという人たちが裁判を起こしました。

宮台: 薬害が繰り返されている背後にある共通の構造がどういうものなのか。プラス、もし新しい要素、あるいは新しい側面や局面であるのであれば、それについてもきちんと注目をしておきたいところです。

迫田: ゲストとして、全国薬害被害者団体連絡協議会、通称「薬被連」の代表世話人であります花井十伍さんにお越しいただきました。花井さんはご自身が薬害エイズの当事者でいらして、しかも代表世話人としてずっと活動してこられました。