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西川芳昭氏:日本の豊かな食文化を守ってきた種子法を廃止してどうする
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西川芳昭氏:日本の豊かな食文化を守ってきた種子法を廃止してどうする

2017-04-19 23:00

    マル激!メールマガジン 2017年4月19日号
    (発行者:ビデオニュース・ドットコム http://www.videonews.com/
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    マル激トーク・オン・ディマンド 第836回(2017年4月15日)
    日本の豊かな食文化を守ってきた種子法を廃止してどうする
    ゲスト:西川芳昭氏(龍谷大学経済学部教授)
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     われわれが食べる食料のほとんどは、必ずといっていいほど、種から作られている。そして、それぞれの国が保有する種には、その国が育んできた食の文化や歴史が凝縮されている。その意味で種は各国の食の根幹を成すものといっても過言ではないだろう。ところが安倍政権は、これまで日本の種子市場、とりわけ米、小麦、大豆といった主要農産物の種子市場を法的に保護してきた「主要農作物種子法」を、今国会で廃止しようというのだ。
     戦後の食糧難のさなかにあった1952年に制定された主要農作物種子法は、その後の日本の食料の安定供給に重要な役割を担ってきた法律で、米、麦、大豆などの種を都道府県が管理し、地元の農家に安定的に提供することを義務づけている。それは日本に豊かな食文化をもたらし、地域の農家は安心して穀物の生産に従事することができた。
     ところが政府は種子法が民間の種子市場への参入を妨げているとして、種子法を廃止することで民間の参入を促し、農業の効率化を促進したいとしている。しかし、こと種子に関しては、保護を撤廃して市場を民間に開放すれば効率化が図れるというのは、種子市場の実情を知らない素人の机上の空論に過ぎないとの指摘が、多くの専門家からあがっている。
     そもそも種子市場は1986年の種子法改正によって、すでに民間の参入が可能になっている。それでも、これまで民間企業が主要作物の種子市場に参入してこなかったのは、それほど大きな利益が望めないからだったに過ぎないと、龍谷大学経済学部教授で種子問題に詳しい西川芳昭教授は指摘する。コシヒカリなどの一部の例外を除き、一つひとつのブランド米の市場は決して大きくないため、民間企業にとっては利益が望める市場ではなかったことが、種子市場への民間の参入が進まなかった本当の理由であり、種子法が民間の参入を妨げていたという政府の主張は間違っていると西川氏は言う。
     では、今、種子法の廃止を急ぐ政府の真意は、どこにあるのだろうか。
     実は種子法の廃止法案と並び、今国会では、農業改革法案と称して合計で8つの法案が審議されているが、それらはいずれも「総合的なTPP関連政策大綱」の一環として首相官邸に設置された規制改革推進会議の後押しを受け、TPPありきの改革法案として議論がスタートしたものだ。アメリカでトランプ大統領がTPP離脱を表明したことで、TPPそのものは宙に浮いてしまったが、なぜか日本ではTPPの成立を前提として策定された法案や施策が、今も粛々と審議され推進されているという、何とも気持ちの悪い状態が続いているのだ。
     種子法廃止によって日本はどのようなリスクを抱えることになるのか。種子法の廃止によって、そもそも政府が喧伝するようなメリットは本当にあるのか。一体、誰が何のために種子法の廃止を進めようとしているのか。
     「タネは戦略物資であり、軍艦を持っているよりタネをもっている方が強いというくらい大事なもの」と語る種子の専門家の西川氏とともに、ジャーナリストの神保哲生と社会学者の宮台真司が議論した。

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    今週の論点
    ・「種」について社会的研究が進まない理由
    ・種子法廃止で失われる、品種の多様性
    ・「都道府県が強くて民間が弱い」という、事実とは逆の理屈
    ・市場とコミュニティを結ぶ稀有な法律を切り捨てる“コスプレ愛国”
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    ■「種」について社会的研究が進まない理由

    神保: 森友問題の裏で、数々の悪法が通過、あるいは審議が進んでいるという話をしてきました。一連のリストもあらためて出しておきます。

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    ○種子法廃止法案
    ○水道民営化法案
    ○家庭教育支援法
    ○親子断絶防止法
    ○共謀罪(組織犯罪処罰法改正案)
    ○医療ビッグデータ法案(次世代医療基盤法案)
    ○放射線障害防止法改正案
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    宮台: きちんと審議しないと、悪法になり得る法案です。

    神保: 大義もあったりするのですが、いろいろと毒が盛り込まれていて、先週取り上げた家庭教育支援法などは、どちらかというと毒がメインという(笑)。

    宮台: そもそもが勘違いからできている。

    神保: 国が思っている方向に持っていこうとしていて、しかも前提が間違っている、という話をしましたが、今回もそのなかから「種子法」を取り上げます。すでに衆参両院を通過してしまっていますが、実施は1年後ですし、種子法という法律自体がどのような機能を果たしていたのか、ということをきちんと理解すれば、残さなければいけない部分には別の法律を作ることもできる。通ってしまったから仕方がない、ということではないんです。
     私自身も『食の終焉』(ポール・ロバーツ著)を翻訳したこともあり、マル激では「種」に非常にこだわってきました。われわれが食べているすべてのものは、種から来ている。肉だって、穀物を餌にして育っていますから、食における一番根っこです。しかし、そのわりにはみなさん、あまり関心がない。

    宮台: この番組での扱いとしては、種を知財というふうに見てきました。例えば、F1種に代表されるように、大幅な収量アップが期待できるような種を企業から買う。ところが販売している企業が、世界全体で見ると、モンサントに代表されるような独占企業体、あるいは巨大な企業が多いということです。そうすると、下手をした場合には、F1種を1つ2つの企業に依存してしまい、自らの都合で高い価格をつけてきたり、あるいは政治的な思惑で販売を渋ったりする可能性がある。そのときに僕たちが、昔からの在来種――固有種ともいいますが、それに戻ろうとしても、もうないということになりかねない。

    神保: 「主要作物種子法」というが正式な名前で、主要作物とはつまり、米、麦、大豆等のことです。この法律を廃止することにどんな問題があるのか、議論したい。ゲストは龍谷大学経済学部教授の西川芳昭さんです。実は西川先生は、まさに今日の午前中、参議院の委員会に呼ばれて話をされたと。

     
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