マル激!メールマガジン 2018年1月3日号
(発行者:ビデオニュース・ドットコム http://www.videonews.com/ )
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マル激トーク・オン・ディマンド 第873回(2017年12月30日)
5金スペシャル
年末恒例マル激ライブ「ポスト・トゥルースをぶっとばせ!」
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2017年が終わろうとしている。2017年のマル激は、年初に哲学者の内山節氏を招き「座席争いからの離脱のすすめ」を議論したのを皮切りに、トランプ現象に代表されるナショナリズムやオルタナ右翼の台頭、日米同盟と北朝鮮情勢、格差問題、憲法、アベノミクスや働き方改革など安倍政権の諸政策、共謀罪、種子法、解散と衆議院選挙、司法制度や教育無償化等々、多くの問題を多角的に議論してきた。
一連の議論から見えてきたものは、グローバル化の進展やインターネットによる情報革命によって機能不全に陥った民主制度を立て直していくことの困難さと、そうした中で個々人が日々感じている生きづらさに手当をしていくことの重要性だった。
確かに状況はあまり思わしくない。これは日本に限ったことではないが、われわれがこれまで当たり前のように享受してきた民主的な社会の規範や制度が崩れ、それに取って代わることができる新しい理念が見えてこない状況の下で、多くの人が社会のあり方や将来に不安を覚えながら、どうすればいいかがわからずにいるのが現状ではないか。
しかし、何でもありのポスト・トゥルース(脱真実)の時代を乗り越えるためには、まず一つ一つのトゥルースを直視することから始めるしか方法はないというのが、マル激で議論を積み重ねてきた末の結論だった。
まずわれわれはこれまで長らく当たり前と考えてきた世界の秩序が、実は幸運な偶然の積み重ねの結果だったり、途上国や社会の中の特定の弱者からの搾取によってのみ成り立っていた不完全かつ不条理なものだったことを、認識する必要がある。その上で、豊かな社会を築いていくための必要条件を人為的に再構築していくことが、遠回りのように見えて、実はもっとも現実的な処方箋なのだ。
ポスト・トゥルースは、本当の問題から目を背けたまま、便宜的な建前に過ぎない制度や理念を当たり前のものとして、それにただ乗りしてきたことのつけが回ってきたものと見ることができる。
民主的な制度や習慣が前提としていた条件が崩れた中で、それを再構築することは決して容易なことではないだろう。しかし、逆風の中でこそ、長い歴史の中でわれわれが培ってきた「自由」や「平等」などの普遍的な価値の真価が問われる。
年末の恒例となったマル激ライブでは、2017年に起きた様々なニュースを通じて見えてきた世界と日本の現実と、そこで露わになった問題を乗り越えて前へ進むための2018年の課題を、ジャーナリストの神保哲生と社会学者の宮台真司が議論した。
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今週の論点
・ポスト・トゥルースと言葉の自動機械
・生まれながらに“障害”を負った、リベラルな民主主義
・スピードを緩めることでしか解決しない、問題の数々
・公共心のある人間を育てるか、KY嫌悪野郎を育てるか
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■ポスト・トゥルースと言葉の自動機械
神保: 年末恒例の公開収録で、『ゆく年、くる年』ではありませんが、一年を総括し、新年を展望するのが大きなテーマです。宮台さん、月並みですが、2017年はどうでしたか?
宮台: トランプさんといい、安倍政権といい、選挙が話題になった年ですね。2017年から2018年にかけて先進各国で行われる選挙で、従来のリベラル、オープンな建前が、クローズドで排外的な本音によって打ち砕かれ、僕らがアメリカや日本で見ているような方向に、すべての国が流れていくのか。それを占う期間でしたが、残念かどうかはみなさんの判断だけれど、やはり建前は本音によって打ち砕かれつつあります。予想通りになったな、ということだと思いますね。