マル激!メールマガジン 2018年7月11日号
(発行者:ビデオニュース・ドットコム http://www.videonews.com/ )
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マル激トーク・オン・ディマンド 第900回(2018年7月7日)
世界がこれだけサッカーに熱狂するわけ
ゲスト:吉田文久氏(日本福祉大学スポーツ科学部教授)
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サッカーのW杯ロシア大会の決勝トーナメント1回戦の日本対ベルギーの試合は、試合開始が日本時間で午前3時という悪条件にもかかわらず、テレビ中継の瞬間最高視聴率が42.6%を記録したという。
実際、ワールドカップの人気は凄まじい。今大会はまだベスト4が出揃っていない段階だが、既に前回大会を上回る関心が集まっているそうだ。前回のブラジル大会では、全試合のテレビの延べ視聴者数が世界207カ国で260億人に達した。これは平均すると毎試合10億人以上が視聴している計算になる。
なぜ世界中のこれだけ多くの人々が、サッカーにこうまで熱狂できるのだろうか。サッカーの起源と言われる「民俗フットボール」に詳しい日本福祉大学スポーツ科学部の吉田文久教授は、サッカーは極端に点が入りにくいルールにしたことが、世界的に人気を博している理由であると同時に、サッカーを退屈だと感じる人が多い原因にもなっていると指摘する。
確かにサッカーほど点が入らないスポーツは、他に例を見ないかもしれない。90分テレビにかじりついていても、せいぜい2~3回しか得点シーンを見ることができないのがサッカーだ。無論、だからこそ、点が入った時の喜びも、点を取られた時の絶望も大きくなる。
吉田氏によると、サッカーが点が入りにくいスポーツになっていることには、歴史的な経緯も関係しているという。イギリスには今日のサッカーの原型と言われ、街全体を舞台に街中が参加して行われる「民俗フットボール」が、今も多くの地域に残っているが、その多くは、どちらかが点を取った段階で勝者が決まるサドンデス方式なのだそうだ。
実は後から加えられたオフサイドルールだけは、点がより入りやすくするための措置だったというのが意外だ。オフサイドは攻撃側にとって大きな制約になっているように見えるが、実は伝統的なフットボールではボールを持った選手の前にいる選手は全員がオフサイド扱いだったそうだ。つまりボールを持った選手は、ボールを前に進めるためには自分自身がドリブルで前進するしかなかった。
今もラグビーはボールホルダーよりも前にいる選手は全員オフサイドでプレーができないが、一切手を使えず、ゴールは狭く、しかもゴール前には自由に手が使えるゴールキーパーがいるサッカーは、多少オフサイドのルールが緩和されても、最も点が入り難いスポーツであることに変わりはない。
また、一切手を使えなくしたことで、ラグビーのように身体的に大きな民族が必ずしも優位にならない点も、サッカーが多くの国で盛んになった理由に数えられるかもしれない。ルールが単純で誰にもわかりやすく、ボール一つあれば誰もがプレーでき、体が小さくでも大選手になる夢を持つことができる。そう考えてみると、民俗フットボールから枝分かれした数々のフットボールの中でも、サッカーはもっとも多くの人に受け入れられるルールを採用したと言っていいのかもしれない。
これから佳境に入るW杯を横目に、民俗フットボールから生まれたサッカーがいかにして現在のような世界で最も人気のあるスポーツに成長していったのかなどについて、数ある民俗フットボールの中でも最も伝統的なシュローブタイド・フットボールを現地で取材してきた吉田氏と、ジャーナリストの神保哲生、社会学者の宮台真司が議論した。
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今週の論点
・フットボールから枝分かれした、サッカーの歴史
・今も残る「民俗フットボール」とは
・“シンプル”かつ“不自由”な、サッカーのルール
・人々はなぜ、サッカーに熱狂するのか
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■フットボールから枝分かれした、サッカーの歴史
神保: 日本がW杯で負けた次の週にわざわざサッカーを取り上げるなんてどういうことだ、と思われるタイミングで、あえてサッカーをテーマに選びました。もちろん、日本が負けたことを喜んでいるのではなく、宮台さんが「サッカーがとにかくつまらない」と言うので、きっとそう思っている人も他にたくさんいるのだろうと思いました。
宮台: 子供の頃はみんなサッカーをやるし、やっている方としては、野球のように休んでいるところがないから楽しかったです。しかし、試合を観ていると非常に時間の無駄感があるんです。球回しの時間がイライラします。僕にとって観るのに一番いいのは格闘技ですね。
神保: 格闘技であれば、トイレなんか行ったらその間に試合が終わってしまいますよね。サッカーは延々と球を回し、一瞬だけ盛り上がりますが、そのときに観ていなかったら終わり、みたいなところが嫌だということでしょうか。
宮台: 嫌ですね。そういう人も絶対多いでしょう。
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