マル激!メールマガジン 2018年12月12日号
(発行者:ビデオニュース・ドットコム http://www.videonews.com/
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マル激トーク・オン・ディマンド 第922回(2018年12月8日)
外国人材拡大に日本の医療のセーフティーネットは大丈夫か
ゲスト:沢田貴志氏(医師・港町診療所所長)
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 日本に、急増する外国人材を受け入れる態勢は整っているのか。
多くの課題が積み残されたまま、12月8日の未明、改正出入国管理法(入管法)が成立した。来年4月から、新たな在留資格で外国人労働者の受け入れが始まる。政府は年内に総合的な対応策を決めるとしているが、具体的な中身についてはまだ何一つ決まっていない。
 受け入れる外国人労働者の人数も、首相が国会で5年間で34万人を上限とすると答弁したかと思えば、ただちに法務大臣がそれを否定してみせるなど、実際は今後何が起きるかは誰にもわからない状況だ。
その一方で、法案採決の直前になって、外国人技能実習生たちの悲惨な実態が明らかになった。年間5000人前後の失踪者がいることは伝えられていたが、法務省の聞き取り調査の内容を野党議員たちが精査した結果、最低賃金以下で働いていた実習生が67%、10%は過労死ラインをこえて働いていた。さらには、2015年から2017年までに69人が、脳出血、急性心筋梗塞、自殺、溺死といった原因で亡くなっていたこともわかった。
 外国人医療に取り組んできた医師の沢田貴志氏は、外国人労働者が急増した1990年代、ビザなしの不法滞在の外国人が重症になって医療機関に担ぎ込まれてくることが多かったが、今後、同じようなことが頻発するのではないかと危惧する。今の技能実習生やアルバイト目的の留学生たちが置かれた状況では、病気になっても、解雇を怖れて医者にかかろうとしない人が多い。また、そもそも長時間労働で病院に行く時間がない人もいる。
 現行制度の下では技能実習生も、3カ月を超える在留資格をもつ留学生も、一応日本の健康保険でカバーされることになっているが、自己負担が大きかったり、保険料を滞納すると使えないなどの理由から、セーフティーネットとして機能しているとは言いがたい。無論、失踪してしまえば、健康保険そのものから外れてしまう。
 沢田氏によれば、外国人労働者の不法滞在が社会問題化し、ビザの整備など外国人の受け入れ態勢が進んだ結果、2000年代初頭には、日本にも多文化共生社会が生まれるのではないかとの期待が持てた時期もあったそうだ。ところが、2006年頃から、技能実習生やアルバイト目的の留学生などが急増したため、既存の制度では対応が追いつかなくなってきた。
 また2020年には東京でオリンピック・パラリンピックが開催され、多くの外国人が日本を訪問することが予想される。しかし、ここにも危惧すべき問題があると沢田氏は言う。政府は今、五輪開催をにらみ、インバウンドの外国人診療における医療通訳養成の事業に力を入れ始めている。外国人医療全体の底上げになればよいが、旅行保険でカバーされる裕福な外国人のための通訳が中心となって、日本在住の外国人患者への対応が置き去りにされることになりかねない。医療ツーリズムなど成長戦略の一環として医療をビジネスとしてとらえる流れに抗うのは容易ではない、と沢田氏はいう。
 外国人材の受け入れが決まった今、日本が整備しなければならない受け入れ態勢とはどのようなものか。何が政府・国会の議論に欠けていたのか。30年間外国人医療に取り組んできた医師の沢田貴志氏と、社会学者の宮台真司、ジャーナリストの迫田朋子が議論した。

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今週の論点
・外国人医療の暗黒期に逆戻りしかねない、改正入管法
・現在の外国人労働者への扱いは、日本人の行く先である
・通訳がいるだけで、外国人労働者のコストは劇的に下がる
・医療ツーリズムへの懸念
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■外国人医療の暗黒期に逆戻りしかねない、改正入管法

迫田: 本日は12月7日、国会は10日が会期末ということで、与野党の最後の攻防が繰り広げられています。入管法の改正案の議論を中心に対立の構図ですが、今回は外国人材拡大の問題を医療のセーフティーネットというところで考えていこうと思います。

宮台: 基本的には、安倍政権が経済団体の要求する生産人口減への対処として、「女性の活躍」というものがありましたが、要するに、同じように外国人労働者にも活躍してもらおうという流れです。ネトウヨという支持層を怒らせないように、外国人労働者は使うが移民扱いはしない、あるいは国民として扱わない、としています。つまり、社会保険は別として、社会保障や教育の権利については、ほんの少ししか認めないということです。そんなご都合主義があるのか、またその上に介護労働などで高度な技能を持った人材が入ってくると思っている時点で思い違いがあり、非常にみっともないなという気がします。