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井手英策氏:コロナ危機を日本のセーフティネットを張り替える機会に
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井手英策氏:コロナ危機を日本のセーフティネットを張り替える機会に

2020-05-27 20:00
    マル激!メールマガジン 2020年5月27日号
    (発行者:ビデオニュース・ドットコム https://www.videonews.com/ )
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    マル激トーク・オン・ディマンド 第998回(2020年5月23日)
    コロナ危機を日本のセーフティネットを張り替える機会に
    ゲスト:井手英策氏(慶應義塾大学経済学部教授)
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     東京での新規感染者が一桁台になるなど、新型コロナウイルスの感染拡大も当面は収束しつつあるかに見える。早ければ来週25日にも首都圏と北海道の緊急事態宣言が解除される見込みで、世界中で市民生活を一変させた新型コロナウイルスは、感染リスクがゼロにはならないまま、これから社会がどういう形で活動を再開してゆくのかに焦点が移りつつある。
     一方で、緊急事態宣言下の経済への打撃はリーマンショック時よりも大きいと言われ、今後、倒産や失業がさらに増えることが危惧されている。財政学が専門の井手英策・慶應義塾大学経済学部教授は、経済活動を休止することの影響が十分に考慮されないまま、もっぱら感染症対策としての自粛要請を優先させてきた結果、今後その影響が市民社会に大きく降りかかることは避けられないだろうと語る。
     安倍首相は日本が欧米諸国並の厳しいロックダウンをせずにコロナの抑え込みに成功しつつあることが、あたかも日本の美徳であるかのように自慢をするが、そもそも政府の自粛要請に国民が応じることが事実上の義務となっている日本のロックダウンのあり方は、権利としての休業補償を受けられることが前提にある欧米諸国のロックダウンとは根本的な違いがある。補償がないまま経済活動の凍結を強いられる今回の日本の「自粛要請」は、いみじくも日本のセーフティネットの脆弱さを浮き彫りにする結果となった。
     5月22日には、首相が議長を務める全世代型社会保障検討会議が開催され、今後の社会保障について議論が交わされているが、その議事内容を見る限り、緊急事態宣言下で露わになったセーフティネットの根本的な欠陥を本気で補修していこうとしているとは到底思えない。
     コロナ以前から毎年セーフティネットを縮小しつづけてきた日本は、ポストコロナの時代に入ってもその路線を踏襲し続けるのでいいのか。仮に公助を削るのであれば、その間、日本はより大きな自助や共助が可能な社会を作ってきたのか。これからの日本にはどのような選択肢があるのか。税と社会保障のあり方について提言を続けてきた井手氏と社会学者の宮台真司とジャーナリストの迫田朋子が議論した。

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    今週の論点
    ・コロナ対策から抜け落ちた、根本的な議論
    ・社会が分断され、個人化する不安
    ・「成長しない」という前提から議論を始めよう
    ・「税」の意味を正しく伝えるために
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    ■コロナ対策から抜け落ちた、根本的な議論

    迫田: 新型コロナウイルスについて、首都圏と北海道の緊急事態宣言も解除するという判断になり、またフェーズが変わってくると思いますが、これまでかなり日本の社会が痛んできたという感じがします。先週は自立生活サポートセンター・もやいの大西連理事長をゲストにお招きしましたが、セーフティネットがあっても住所のない人にはまったく使えないサービスになっているというお話もありました。

    宮台: 特に印象的だったのは、コロナ禍においてやはり支援活動の困難な部分が増えたということです。生活困窮者はWi-Fiなんか使えないし、Zoom対面なんて恵まれた人間の話で、ソーシャルディスタンス問題で寄り添うことができません。こなせる対応の量も限られてきて、キャパシティが増えなければいけないところが、コロナによって減少してしまっているということです。
     また関連していうと、外出自粛という擬似ロックダウンには、科学的根拠がまったくありません。発表されている感染者数はただの「感染判明者数」であって、どういう条件でどういう数調べたのか、分母がわからないことには意味づけのしようがありません。若干参考になるのは感染死者数ですが、これも肺炎で亡くなった人や行き倒れた人などを調べていないことはわかっており、明らかではありません。
     疫学者は最終的に、超過死亡数というデータを使います。つまり、病死者数には毎年、季節ごとの平均があり、インフルエンザなどの流行を差し引いた上で、病死した人がどれくらいだったかを計測します。すると、超過死亡数がもっとも高かったのは、おそらく3月下旬から4月上旬ではないかと言われています。つまり、1ヶ月のロックダウンの延長に意味があったのかということです。それによって多くの人が困窮に追いやられ、しかも十分に支援できない状況になっているので、最終的には行政訴訟に結びつく可能性があると思います。

    迫田: コロナ禍で日本のセーフティネットの脆弱さが露わになったなかで、これを奇貨として新しい社会を作るにはどうしたらいいのか。その意味で、ずっと発言を続けてこられた、慶応義塾大学経済学部教授で、財政学がご専門の井手英策先生をゲストにお迎えしました。さっそくですが、現在の疑似ロックダウンの現象について、どんな風に見ていらっしゃいますか。

    井手: やはり経済的にはショックが大きかったですね。 
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