マル激!メールマガジン 2020年7月1日号
(発行者:ビデオニュース・ドットコム https://www.videonews.com/ )
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マル激トーク・オン・ディマンド 第1003回(2020年6月27日)
ポストコロナが問う、日本は外国人と共生できる国なのか
ゲスト:指宿昭一氏(弁護士)
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 今、日本では165万人の外国人が働いている。そのうち永住者を除くともっとも多いのが、建設、縫製、農業、介護の現場などで働く技能実習生でその数は41万人にのぼる。しかし、彼らが新型コロナウイルスの感染拡大とそれにともなう自粛の嵐の中で、軒並み解雇されるという事態が起きている。
 既に日本で働き始めていた実習生たちは、まだ実習途中のため帰国するわけにもいかず、その一方で、毎月1万人の新規の実習生たちの来日もストップしたままになっている。
 長年、外国人労働者の相談にあたっている弁護士の指宿昭一氏は、技能実習生の場合、まだ弁護士や支援団体になどに相談するところまでたどり着いていない人が大勢いる可能性があると話す。日本語もままならず、職場以外には日本国内にほとんど人脈を持たない彼らにとっては、外部に相談すること自体のハードルがとても高い。リーマンショックの時も、外国人労働者の窮状が認識されるようになるまでには、数か月の時間を要したという。指宿氏はこのままでは今後、仕事がない、住むところがない、帰国もできない彼らの多くが、命にかかわるような事態を迎える恐れがあると指摘する。
 こうした事態を受けて出入国在留管理庁は、在留資格を延長したり、仕事を失った技能実習生たちの農業や介護の分野への転職を認めるなどの救済措置を設けているが、「国際貢献」の名目で始まったこの制度が、実際は人手不足の日本社会の雇用の調整弁となっていたことの矛盾が、ここに来て明確に表面化してしまっている状態だ。労働者としての基本的な権利を守るためのトータルな仕組みは、国籍、働き方の区別なく保障されるべきであり、外国人労働者への支援は、日本人の非正規労働者に対する考えと地続きであると指宿氏は指摘する。
 今、日本がこの問題にしっかりと対応できなければ、日本で働いていた外国人たちが帰国した後、日本のことを批判したり悪く言う可能性が高く、その国の日本に対する印象が悪化する恐れがあることも懸念される。日本の在留資格は排除の発想が強く、新型コロナウイルスのために外国人の配偶者の入国が認められないなどの事例が頻出したため、今や外国人の間では“ジャパン・リスク”という言葉が常套句になっているという。
 アフターコロナを見据えて、外国人労働者政策をどうするか。移動の自由を保障しながら日本に定住したいと考える外国人と共生する施策をとるのか、これまで通り雇用の調整弁のような一時的な労働力として都合よく使い捨てにし続けるのかが問われていると、指宿氏は語る。
 「生存のためのコロナ対策ネットワーク」のメンバーとして、現場に根差したさまざまな活動や提案をしている指宿昭一氏と、社会学者の宮台真司、ジャーナリストの迫田朋子が議論した。

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今週の論点
・外国人労働者の“現場”を知らない入管庁
・“労働人口の調整弁”として使い捨てられる外国人労働者
・「それでも日本は魅力的で、人は来る」という傲慢さ
・“ジャパンリスク”を解消し、共生への道を
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■外国人労働者の“現場”を知らない入管庁

迫田: 本日は6月26日。緊急事態宣言全面解除から1ヶ月経ちましたが、東京の感染者数は54人ということで、いまはどういう状況だと捉えたらいいのでしょうか。

宮台: 東京アラートが最初に出たのは34人で、どういう理由で基準が緩和されているのか説明すべきですね。もちろん僕や皆さんが首長であれば、説明できます。つまり、コロナだけが問題であるはずがなく、それによって廃業や失業に追い込まれてしまった人たちが非常に困った状態になるからです。特に日本は失業率と自殺率が高い相関を示しており、「死者」でいうのであれば、コロナ死と経済死としての自殺者数の合計が最小になるようにしなければいけない。そういうバランスの観点から、経済的に第一次の東京アラートのときと比べると、はるかに経済的に困窮している人が増えているから、と説明すればいいんです。なぜこれほど簡単な説明をしないのか、という問題です。

迫田: 緊急事態宣言が解除され、社会がもとに戻っていく、というようなニュースばかり出ていますが、その陰で非常に厳しい状況に置かれている人たちがたくさんいるということですね。そういう人たちの姿が見えてきません。