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佐藤拓代氏:子育てを「自己責任」にしてはならない
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佐藤拓代氏:子育てを「自己責任」にしてはならない

2021-12-15 20:00
    マル激!メールマガジン 2021年12月15日号
    (発行者:ビデオニュース・ドットコム https://www.videonews.com/)
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    マル激トーク・オン・ディマンド (第1079回)
    子育てを「自己責任」にしてはならない
    ゲスト:佐藤拓代氏(医師、全国妊娠SOSネットワーク代表理事)
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     18歳以下への10万円の給付金をめぐり、混乱が続いている。そもそも、こどものための対策なのか、生活困窮対策なのか景気刺激策なのか、今回の給付金にはその理念がない。これでは来年の参院選を意識した単なる集票対策だと言われても仕方がないだろう。
     その一方で、「こども庁」をめぐる議論も活発に行われている。岸田政権は12月2日にまとめた「こども政策の新たな推進体制に関する基本方針」の中で、2023年度のできるだけ早い時期に「こども庁」を創設する方針を明らかにしている。岸田首相自身も所信表明演説で「こども中心の行政を確立するための新たな行政組織の設置に取り組んでいく」と述べるなど、長年の課題である縦割りをなくしたこども政策が確立できるのかどうかが、ここにきて大きな正念場を迎えている。
     これまでも政府は、いわゆる「こども政策」と言われる施策をいろいろと行ってきた。エンゼルプラン、待機児童ゼロ作戦、少子化対策基本法、子ども・子育てビジョン、子育て安心プラン等々。それでも日本の少子化に歯止めは掛からず、去年の出生数は約84万人と過去最少を更新している。内閣府が行っている国際比較では、「子供を生み育てやすい国だと思うか」という質問に、スウェーデンは97%が”そう思う”と答えているのに対し、日本は”そう思わない”が6割を超えている。
     子育てにかかわる市民団体の集まりである「子どもと家族のための緊急提言プロジェクト」の共同代表で、全国妊娠SOSネットワーク代表理事の佐藤拓代氏は、すべてのひとに妊娠・出産から育児までの伴走型支援を保障する「皆支援」と、すべての子どもに発達と成長の環境を保障し家族を孤立から守る「皆保育」が重要だと語る。 
     妊娠・出産が医療保険でカバーされていない日本では、妊娠したかどうかの診療を受ける瞬間から自己負担が発生する。妊婦が負担する出産費用の平均額は52万4000円(2019年度)で、保険から支払われる出産育児一時金の42万円を超えている。若い世代にとって妊娠、出産は経済的に大きな負担になっているのだ。
     婦人科や小児科の臨床医の経験を持ち、「にんしんSOS」事業の起ち上げにもかかわった佐藤氏は、子どもの虐待のなかでも、出産した日に子供の命を奪う「ゼロ日死亡」が、日本で突出していることを指摘する。「ゼロ日死亡」は、報告されているだけでこの17年で165例あるが、これはほんの氷山の一角かもしれないと佐藤氏はいう。多くの女性たちが、実家や親との緊張関係の中で、誰にも相談できないまま追い詰められている。実家のサポートをあてにしないでも、妊娠から切れ目のない支援が提供される仕組みを作る必要があると佐藤氏は訴える。フィンランドのネウボラ(相談の場)を参考に、子育て世代包括支援センターの仕組みが日本にもあるが、市町村によって取り組み状況も異なり、課題も多い。          
     子育て支援や子供への支援が叫ばれて久しいが、依然として日本の家族関係社会支出の対GDP比は1.73%と、先進国としては極めて低水準にとどまっている。まずこども政策にきちんと予算を割かなければ、小手先の対策にしかならない。子育てを自己責任から社会でささえる仕組みに変えられるのか、こども庁の議論が始まった今こそ、根本からこども政策を改革するチャンスだと語る佐藤拓代氏と、社会学者・宮台真司、ジャーナリストの迫田朋子が議論した。

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    今週の論点
    ・全体像が見えないこども政策
    ・日本の現実が表れた「ゼロ日死亡」という悲劇
    ・子育てを「自己責任」=「自業自得」にするな
    ・幸福感なく育った子どもが、どんな親になるのか
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    ■全体像が見えないこども政策

    迫田: ちょうど「こども庁」の議論が活発化してきており、今回は子ども政策をテーマにお送りします。現在、18歳以下の給付金についても議論されていますが、これが本当に子ども政策なのか、親のためなのか、経済効果を狙ったのか、理念がわからないところがあります。

    宮台: 日本の政治は事実上、社会指標の好転、つまり社会を健全にするということをほとんど考えたことがなく、経済政策、あるいは集票対策という発想しかないはずです。とにかく日本の子ども政策、家族政策は極めてお粗末で、さまざまなデータにおいて、両親は愛より金で、子どもは親を尊敬しておらず、家族と一緒にいても幸せでない、ということがわかっている。例えば、「親の死に目に会いたい」と答える子どもの割合は、アメリカや中国の半分しかいません。

    迫田: 流行語大賞に「親ガチャ」というのも相当驚きました。今日は子ども政策についてきちんと考えたいのですが、その都度いろんなことが言われるものの、全体が見えていないし、明確な理念が通っているのかということも検証しなければなりません。今回はこのテーマにふさわしいゲストとして、医師で全国妊娠SOSネットワーク代表理事の佐藤拓代さんをお迎えしました。佐藤さんは小児科産婦人科で臨床をされた後、保健所で勤務をされた母子保健のスペシャリストです。現在はこども庁に対する議論のなかで、緊急提言プロジェクトの共同代表をされています。冒頭にお話しした18歳以下への給付金について、どうご覧になっていますか?

    佐藤: 根本のところをどうしていこうということが見えてこず、非常に付け焼刃だと思います。家族自体が安定して、先に不安がなければ、子どもを持ちたいというのは本来の欲求のようなところもありますし、それに寄り添った方向を選べるような世の中になったらいいと思うのですが、やはり先行きが不安で、夢が持てない、という状況が続いてきたのが我が国ではないかと。第二次世界大戦後に、男性たちが帰ってきて、黙っていても子どもがたくさん生まれて育っていきましたが、それがずっと続くと思っているのはまったく間違いだということです。 
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