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中島淳一氏:地震活動期に入ったとみられる日本列島の下でいま起きていること
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中島淳一氏:地震活動期に入ったとみられる日本列島の下でいま起きていること

2021-12-22 20:00
    マル激!メールマガジン 2021年12月22日号
    (発行者:ビデオニュース・ドットコム https://www.videonews.com/)
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    マル激トーク・オン・ディマンド (第1080回)
    地震活動期に入ったとみられる日本列島の下でいま起きていること
    ゲスト:中島淳一氏(東京工業大学理学院地球惑星科学系教授)
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     最近やや大きな地震が増えていると感じている方も多いのではないか。
     今年に入ってから震度5以上を記録した地震が既に10回発生している。うち6回は震度5強だった。直近では12月9日にトカラ列島近海を震源とする震度5強・M6.1(マグニチュード6.1)の地震が、12月3日には富士山麓の山梨県富士五湖地方と紀伊水道地方でそれぞれ震度5弱・M4.8、震度5弱・M5.4が、10月6日~7日には岩手県沖と千葉県北西部でいずれも震度5強・M5.9の地震が発生している。
     世界地図と地震の発生図を重ね合わせて見たとき、国土の全体が地震多発地帯に入っているのは世界でも日本くらいだ。日本列島が、太平洋プレート、オホーツクプレート、ユーラシア(アムール)プレート、フィリピン海プレートの4つのプレートが重なり合う、まさにプレートのスクランブル交差点のような位置にあり、それぞれのプレート間の沈み込みによって発生する地震が多発するのは、どうあがいても避けられないことだが、そんな日本に住んでいる以上、地震について最低限のことは知っておく必要があるだろう。
     地震大国の日本では約100年周期で地震活動期と静穏期が繰り返されてきた。地震学者の中島淳一・東京工業大学理学院地球惑星科学系教授によると、一旦大きな地震が起きると、そこで大量のエネルギーが放出されるため、暫くその地域は地震の静穏期に入る。しかし、静穏期が100年ほど続くと、プレートの移動によって少しずつ地盤に歪みがたまり、そのエネルギーが断層のずれという形で放出され始めることで、再び地震の活動期に入る。
     地震学に基づく観測が実際に行われるようになったのは明治に入ってからだが、それ以前の地震についても古文書などを通じてある程度の年代、震源域、規模などは推定できているという。それによると、まず関東地方では推定マグニチュード8を越える元禄関東地震が1703年に発生し、その後日本は地震静穏期に入ったとみられる。そして、1800年頃から再び活動期に入り、1923年の大正関東地震(いわゆる関東大震災)で大量のエネルギーを放出したことで、再び静穏期に入ったと考えられている。
     これは関東地方に限ったことではないが、日本の地域の多くでは、概ね100年に1回のペースで大きな地震に見舞われ、それによって大きなエネルギーが一旦放出されると次の100年は一旦、静穏期に入る。そしてまた100年程で活動期が始まり、次の大きな地震まで活動期が続く。そんなことが繰り返されているのだという。
     そうした中、今日本で一番懸念されているのが、ひと頃はテレビなどでも随分と特集が組まれたりしていたのに、最近とんと耳にしなくなった感のある南海トラフ地震だ。しかし、これが起きる確率は依然として非常に高いと中島氏は言う。
     伊豆半島の西から紀伊半島沖を通って四国の高知県沖から玄界灘、そして九州東岸にいたる「南海トラフ」は、フィリピン海プレート(海洋プレート)とユーラシア・プレート(大陸プレート)がぶつかり合う場所で、ここで海洋プレートが大陸プレートの下に年間数cmから10cm程度のゆっくりとしたペースで沈み込んでいる。ここで引きずりこまれた大陸プレートの先端部にひずみがたまり、それが100年~200年ぐらいの周期で跳ね返る現象によって引き起こされるのが「海溝型地震」というもので、これは非常に大きな地震になる可能性が高い上、大津波を発生させる恐れがあるため、南海トラフ地震では大きな被害が出る可能性が懸念されている。
     古文書などの解析を通じた推定では、南海トラフでは紀元684年の白鳳地震(推定M8.3)からマグニチュード8を越える地震がほぼ200年おきに発生しており、その周期は紀元1300年以降はほぼ100年ごとに短縮されている。1605年に慶長地震(M7.9)、1707年に宝永地震(M8.6)、1854年に安政南海地震(M8.4)、1946年に昭和南海地震(M8.0)と言った具合だ。国土交通省の地震調査研究推進本部地震調査委員会では南海トラフで過去1,400年の間に約90~150年の間隔で大地震が発生しているため、次の地震までの間隔を88.2年と予測した上で、南海トラフを震源とするマグニチュード8~9クラスの地震が30年以内に発生する確率を70~80%(2020年1月24日時点で)としている。これは、かなり高い確率だ。
     東日本大震災から10年が経ち、コロナ禍のせいもあってか、最近は大地震のリスクはあまり話題にならなくなっているが、依然として南海トラフに相模トラフを加えた東南海地震のリスクが非常に高いことは、しっかりと認識しておく必要があるだろう。
     地震への備えを怠らないためにも、また地震を正しく恐れそのリスクを正しく見積もるためにも、中島氏に地震のメカニズムの基本から、最近の地震はどのくらい懸念すべきものなのか、今日本列島の下で何が起きているのかなどについて、ジャーナリストの神保哲生と社会学者の宮台真司が聞いた。

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    今週の論点
    ・断層、プレート、マントル・・・・地震に関する基礎知識
    ・“プレートのスクランブル交差点”に存在する日本
    ・「水」が地震に与える意外な影響
    ・今後30年で、震度6強の揺れに見舞われる確率は
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    ■断層、プレート、マントル・・・・地震に関する基礎知識

    神保: 今回はブルーバックス少年だった宮台さん的には興味深い、地震という自然科学系のテーマでお送りします。

    宮台: テレビに関して言うと、以前と比べて地震についての番組が少なくなったような気がします。

    神保: 記憶が薄れてきた、ということでしょうか。

    宮台: そうですね。東日本大震災の後しばらく経って、皆さんあまり聞きたくないのかもしれませんが、南海トラフ大地震が30年以内に起こる確率が8割、などの話もほとんど聞かなくなりました。日本の財政が破綻するのとどちらが早いか、という話があって、明日起きても不思議ではないと。 
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