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鈴木 浩氏:11年が経った今、復興と生活再建とのギャップは拡大している
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鈴木 浩氏:11年が経った今、復興と生活再建とのギャップは拡大している

2022-03-16 21:00
    マル激!メールマガジン 2022年3月16日号
    (発行者:ビデオニュース・ドットコム https://www.videonews.com/)
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    マル激トーク・オン・ディマンド (第1092回)
    11年が経った今、復興と生活再建とのギャップは拡大している
    ゲスト:鈴木 浩氏(福島大学名誉教授、ふくしま復興支援フォーラムよびかけ人)
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     ロシアのウクライナ侵攻でチェルノブイリやザポリージャの原発が攻撃にあったという報道に接し、日本でも不安に襲われている原発事故の被災者は多い。一度メルトダウンが起きるとその被害は苛酷で長期に及び、一度失った故郷は容易には取り戻すことができないことを、身を以て知っているからだ。
     原発災害から11年。被災地の復興が伝えられる一方で、福島第一原発の事故で被災した人たちは、今も様々な困難を抱えている。政府の統計によると現在の避難者は3万3,000人余りだが、その中には自主避難者や、避難指示が解除された後もまだ他の自治体の復興公営住宅に入居している人は含まれていない。避難指示が解除されて1年が過ぎると、もはや避難者としてはカウントされなくなるからだ。こうして避難している人たちの現実が、日に日に見えにくくなっている。
     県内各地の仮置き場に山積みにされていたフレコンバッグに入った除染土は、双葉町・大熊町に設けられた中間貯蔵施設に運び込まれ、ほとんど姿を消した。2045年に県外搬出と定められているが、その後のことはまだ何も決まっていない。廃炉の道筋もまだ見えない。
     3月に入って、原発事故被害者による集団訴訟で最高裁が東電の上告を退ける決定を相次いで出した。全国でおよそ30件提起されている集団訴訟のうち、6件で国の指針を上回る賠償を認める2審判決が確定したのだ。去年のマル激で大阪市立大学教授・除本理史氏が指摘しているように、故郷を追われ避難せざるを得なかった人たちが、さらに訴訟という手段を用いなくては被害の実態が認められないという事実を、われわれは重く受け止める必要がある。
     福島県の復興ビジョン検討委員会座長を務めた福島大学名誉教授・鈴木浩氏は、避難指示が解除された地域でも、生活・生業の再建にはほど遠く、多くの被災者がこの先どこで暮らすかを決められない宙ぶらりんの状態が続いていると語る。建築学が専門で住宅政策などに関わってきた鈴木氏はまた、国の復興政策は、除染→避難解除→帰還という“単線型復興シナリオ”となっていて、被災者に寄り添うものになっていないのではないかと疑問を呈す。 
     2011年8月にまとめられた福島県の復興ビジョンは、原子力に依存しない/復興の主役は住民/ふるさとの再生の3点を大きな柱としていた。さらに、2012年4月に施行された福島復興再生特別措置法の基本理念には「福島の地域社会の絆の維持及び再生を図ること」「住民一人一人が災害を乗り越えて豊かな人生を送ることができるようにすること」などという文言が入り、当時、鈴木氏は感動すら覚えたという。しかし、その後、国の事業が具体化していくなかでは、避難している住民に寄り添うよりも、現地の復興や大規模プロジェクトの誘致などに焦点があたり、当初の理念と乖離していったと鈴木氏は語る。
     2011年秋から呼びかけ人の一人として起ち上げたふくしま復興支援フォーラムを中心に県民版の復興ビジョン作成に取り組んでいる鈴木氏と、なぜ今、県民版の復興ビジョンが必要なのか、地域社会の再生に求められるものは何かなどについて、社会学者の宮台真司とジャーナリストの迫田朋子が議論した。

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    今週の論点
    ・被災者が置き去りにされた「単線型復興シナリオ」
    ・忘れ去られた、巨大システム依存型社会への反省
    ・日本はなぜQOLの議論ができないのか
    ・コロナを奇貨に孤独の自覚と、関係構築への一歩を
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    ■被災者が置き去りにされた「単線型復興シナリオ」

    迫田: 東日本大震災、原発災害からもう11年になります。福島の原発被災者の方々と話をすると、いまはチェルノブイリの被災者とさまざまな交流があり、ロシアの軍事侵攻に非常に心を痛めていらっしゃる。原発が攻撃されたりして、また大きな不安と恐怖の中にあるということをおっしゃる人がいます。

    宮台: マル激でも繰り返し扱ってきたように、原発というのは攻撃対象として見ると非常に脆弱で、上から鉄球を落とすだけでシステムが破壊される程度のものなんです。日本も安全保障にこれだけこだわってきているのに、原発だらけ。当時から問題にしていましたが、11年経って忘れかけていたところでウクライナ侵攻があり、われわれも思い出さざるを得なくなった。

    迫田: 原発災害から11年が経ち、復興ということは言われていますが、実は被災者の人たちにとってはさまざまな問題が置き去りにされていたり、ギャップが大きくなっているのではないかということで、今回はお話を伺います。福島大学名誉教授でいらっしゃいます、鈴木浩先生にお越しいただきました。鈴木先生は建築学がご専門で、震災直後に福島県復興ビジョン検討委員会の座長をされています。またふくしま復興支援フォーラムの呼びかけ人として、もう200回近く、話し合いを続けておられます。
     まず、福島の現状をおさらいしておくと、県全体の避難者の数は、県外で26,692人(2022年2月8日現在)、県内が6,668人(2022年2月28日現在)となっています。これは福島県が公表している数字ですが、現実の避難者の数は、実はもっと多いそうですね。 
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