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藤森和美氏:ジャニーズの被害者たちが教えてくれた子ども時代の性被害の深刻さ
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藤森和美氏:ジャニーズの被害者たちが教えてくれた子ども時代の性被害の深刻さ

2023-08-23 20:00
    マル激!メールマガジン 2023年8月23日号
    (発行者:ビデオニュース・ドットコム https://www.videonews.com/ )
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    マル激トーク・オン・ディマンド (第1167回)
    ジャニーズの被害者たちが教えてくれた子ども時代の性被害の深刻さ
    ゲスト:藤森和美氏(武蔵野大学名誉教授、公認心理師、臨床心理士)
    ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
     故ジャニー喜多川氏による性加害が次々と明るみとなり、大きな社会問題となっている。
     今月4日には、国連「ビジネスと人権」のワーキンググループが、日本の実態を調査した際の記者会見でもジャニーズ事務所の問題に触れ、「同社のタレント数百人が性的搾取と虐待に巻き込まれるという深く憂慮すべき疑惑が明らかになった」と述べた。
     この問題がこれまで黙殺されてきた背景には、業界やメディアの責任が大きいことは言うまでもない。その一方で、性被害、特に、子ども時代に受けた被害については、当事者が語ることが難しく、トラウマとして様々な形となってそれぞれの被害者の心の奥深くに秘められてきたことが推察される。
     国連の記者会見に続いて行われた記者会見における「ジャニーズ性加害問題当事者の会」の7人の被害者たちの発言は、言葉を選びながらそれぞれに強い思いがこめられており、被害が深刻で複雑であることを窺わせた。
     子どもへの性被害の実態を明らかにすることは困難だ。性犯罪として検挙されている事例は氷山の一角にすぎず、ただでさえ事件化することは難しいうえに、さらに男子の場合は真剣に受け取ってもらえずに声を上げることすらできない状況だったと、武蔵野大学名誉教授で子どものトラウマと心のケアに長年携わってきた藤森和美氏はいう。
     「魂の殺人」とまで言われる性暴力被害はどんな年代でも大きなトラウマを引き起こすが、特に被害者が子どもの場合は、起きている事態が理解できなかったり言語化できなかったりするため、被害が潜在化・長期化する。グルーミングとよばれる子どもを手なずけるやり方は、世話をしたり、教育や指導を利用したり、時には愛情や恋愛と思わせ子ども自身が納得したように勘違いをさせたりすることで、加害者の暴力行為が放置されてしまうことが大きな問題だと藤森氏は指摘する。
     今年7月に施行となった改正刑法では、これまで強制性交等罪や強制わいせつ罪と呼ばれていた罪名が不同意性交等罪や不同意わいせつ罪に変更され、新たに性的グルーミング罪も導入された。政府は先月26日「こども・若者の性被害防止のための緊急対策パッケージ」を決定し、改正刑法の周知や男性・男児のための性暴力被害者ホットラインの開設などを打ち出している。
    また子どもに関わる仕事に就く場合に性犯罪歴などについて証明を求める仕組み、いわゆる日本版DBS(前歴開示・前歴者就業制限機構)も議論されており、この秋にも法案提出が検討されているという。
     ジャニーズ問題が引き金となってこうした対策の検討がさらに進むことは重要だが、それだけですべてが解決するわけではない。子ども自身に何を伝えていったらよいのか、親や周囲の大人たちはどう考えたらよいのか、カウンセリングの現場経験が豊富な藤森和美氏と、社会学者の宮台真司とジャーナリストの迫田朋子が議論した。

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    今週の論点
    ・ジャニーズ問題は子どもへの性被害が減るきっかけになるのだろうか
    ・幼い頃の性被害はその後の人生に深刻な悪影響を与える
    ・トラウマを抱える子どもたち
    ・大人こそ子どもの性暴力被害について学ばなければならない
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    ■ ジャニーズ問題は子どもへの性被害が減るきっかけになるのだろうか
    迫田: 今日は2023年8月18日の金曜日、第1167回目のマル激トーク・オン・ディマンドになります。今日は故ジャニー喜多川氏による性加害問題から、子どもが受ける性加害がいかに深刻で複雑なものなのかということを心理の専門家に聞きたいと思います。

    宮台: この問題は僕が1994年から話し始めたことです。今は同意年齢と言いますが、当時は性交合意年齢と言いました。日本では13歳で、これはいわゆる先進各国と呼ばれる国の中で最も若く、近代化すればするほど初交年齢はどんどん上がるんです。昔は元服や割礼などを経た後は性交も結婚もして良いとされ、また当時の日本は富国強兵の近代国家という体裁でありながら性に関しては西洋の方々からすればエキゾチックに見えました。
    その理由は、西洋でもどこでも近代化以前は性交が早い時期にされていたからです。

     これが人類のユニバーサルなあり方だったのですが、近代化以降、通過儀礼で子どもがいきなり大人になるというのはおかしいということで、思春期という概念が生まれました。その間、子どもは将来選択のために学校の勉強をしたり社会に出るための経験を積んだりということをしていきます。この試行錯誤が妨げられないように思春期の期間に性交をしてはならないとして、思春期は性交同意年齢に達しない年齢というふうに考えられるようになりました。

     僕たちが特に注意すべきことは、ある種情報過多な状況と、地域や異なる年代との繋がりが希薄になっている中で以前にもまして情報の非対称性が大きくなっていることです。性犯罪者はその手口をインターネット上でいくらでも学べるんです。しかし義務教育課程の多くの子どもはスマホを持っていても学校や親のガードで自由に情報を摂取できない状況なので、思春期の人間とそれ以降の人間との情報の非対称性があります。 
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