マル激!メールマガジン 2024年6月26日号
マル激!メールマガジン
白鳥浩氏:空疎な「政治とカネ」論争の裏で国家100年の計に関わる重大な法律が次々と作られている
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(発行者:ビデオニュース・ドットコム https://www.videonews.com/ )
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マル激トーク・オン・ディマンド (第1211回)
空疎な「政治とカネ」論争の裏で国家100年の計に関わる重大な法律が次々と作られている
ゲスト:白鳥浩氏(法政大学大学院公共政策研究科教授)
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通常国会が6月23日に閉会する。
この国会は自民党の裏金スキャンダルに端を発する政治改革、とりわけ政治資金を巡る論議に多大な時間とエネルギーが費やされ、メディア報道も自ずと政治とカネ問題に集中した。しかし、その裏では国家100年の計に関わると言っても過言ではない重要な法律が、さしたる審議も経ずに次々と成立していた。
国民の生殺与奪に関わる意思決定を行う政治が国民の信頼を得ているかどうかは、民主主義の国にとっては死活問題ではある。しかし、その論議に目を奪われて、その間に国民の生殺与奪に関わる重大な意思決定がさしたる審議も経ずに次々と下されてしまうのは、まったくもって本末転倒だ。ましてや史上最低水準の支持しか得ていない政権に、そのような重大な決定を委ねて本当にいいのだろうか。
悪法も法なり。法律ができてしまえば、それは善し悪しにかかわらず執行される。また、一旦作られてしまった法律や制度は一度走り出してしまえばそう簡単には変えられないものも多い。その意味で、今国会で可決したいくつかの重要法案は、できるだけ早くその危険性や問題点を十分に周知させ、修正が必要なものは速やかに修正する必要がある。
今回のマル激では改正された政治資金規正法、経済安保情報保護法(セキュリティクリアランス法)、次期戦闘機条約、自衛隊統合作戦司令部設置法、農業基本法の改正と食料困難対策法、地方自治法と入管法の改正、共同親権を導入した民法の改正、日本版DBS法、NHKのネット業務を必須事業に引き上げる放送法の改正などを取り上げ、
それぞれの法律の内容とその問題点、それがなぜ国民生活に大きな影響を及ぼし、日本という国の形を変えかねない重大な法律なのかなどについて白鳥浩・法政大学大学院公共政策研究科教授とジャーナリストの神保哲生、社会学者の宮台真司が議論した。
また、裏金問題で複数の逮捕者まで出す一大政治スキャンダルに塗れながら、事実上ゼロ回答となる政治資金規正法の改正案しか通せない岸田政権と自民党の限界や政治資金以外の重大法案を争点化できない野党の問題意識の低さ、国の形が変わろうとしているにもかかわらず旧態依然たる政治報道を続けているメディアの体たらくについても、厳しく検証した。
更に、6月20日に告示された東京都知事選について、明らかな売名を目的とした候補者が乱立している問題や、1期目と2期目の間の小池知事の180度の変節と経歴詐称問題との関係などについても議論した。
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今週の論点
・都知事選に見る政治の劣化と軽薄化
・政治資金規正法改正という茶番
・どさくさに紛れて進む国権の拡大-経済安保情報保護法・食料困難対策法
・国権強化の歯止めになっていない立憲民主党
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■ 都知事選に見る政治の劣化と軽薄化
神保: 今日は政治を扱います。まず都知事選が6月20日に告示され、7月7日に投開票があります。次に、国会が事実上今日6月21日で閉幕となります。そして、この国会は稀に見る酷い国会であったのではないかということですね。政治資金規正法改正案が不備だらけの状態で通ってしまった一方、他にもあまりにも問題の多い法律が、メディアや世の中の目が政治とカネの問題に向かっている裏で通ってしまいました。
いざ法律ができると、悪法も法なりということで執行されてしまいます。今回は、それらの法律の問題点と何を覚悟すべきかをお伝えすることを目指しています。今日は法政大学大学院教授でYahoo!ニュースの公式コメンテーターも務めておられる白鳥浩さんにいらしていただきました。
まず6月20日に告示された都知事選です。情勢としては、現職の小池百合子さんと蓮舫さんが有力とされていますが、石丸伸二さんも支持率を伸ばしています。田母神俊雄さんも、その3人と一緒に日本記者クラブでの討論会に参加しました。
都知事選について2人にまずお聞きしたいのは、候補者についてです。今回は56人出馬しているのに掲示板が48個しか用意されておらず、最後の8人は掲示板がないから東京都の選管が無料で配布したクリアフォルダーに入れて掲示板に留めてくださいということになっています。
また奇抜なポスターが問題になっています。立候補するとまず、ポスターと政見放送が出せます。そしてネットに詳しい人に聞くと、自分のチャンネルなどを持っていればそのページビューだけで供託金300万円は楽に元が取れるということです。日本の供託金は高すぎて立候補するためのハードルになっているという批判がありますが、300万円などはネット時代においては目ではないというわけですね。そのような候補は当選する気もなく供託金を没収されることも前提で、大勢にも影響しないでしょう。このような状況をどのようにご覧になりますか。
白鳥: これまで立候補者数が最多だったのは前回の都知事選で、22人でした。それを考えると、今回用意した48という掲示板の数は随分多いとは言えます。ですが、事前審査の段階で50人以上が来ているのだから48人以上来る可能性はあって、足りない場合はどうするかということを選管は考えておかなければならなかったはずです。
民主主義というときに真っ先にイメージされるのは選挙です。その選挙の時に、ある候補はちゃんとベニヤに貼ってあるが、同じだけ供託金を払って同じ選挙に出ているにもかかわらず、49番目以降は補助席みたいな扱いをされている。これは不平等です。
民主主義にはコストがかかるということを分からなければまずいだろうと思います。49番目以降で落選した人の中には、不平等な条件を作られたから私は落ちたのだ、だから選挙は無効だと裁判を起こす人もいるかもしれません。
宮台: 行政官僚のレベル低下は著しいと思います。それとは別に、選挙が非常に軽薄になっています。人々の共通感覚がなくなってくると、正義を語る奴はただうざいというイメージになってくる。そうすると、全体として政治がフラッシュモブ化、ユーチューバー化します。そこではビューを稼げば儲かるため、社会の構成員全体を拘束する決定を出す政治という営みにおいて、人々をどのようにまとめていくかということを考えなければならないはずが、ただの一時のお祭り騒ぎになってしまいます。
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