マル激!メールマガジン 2014年3月5日号
(発行者:ビデオニュース・ドットコム http://www.videonews.com/ )
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マル激トーク・オン・ディマンド 第672回(2014年03月01日)
ディオバン事件と利益相反という日本の病理
ゲスト:谷本哲也氏(内科医・東京大学医科学研究所客員研究員)
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東京地検特捜部が2月19日に製薬会社のノバルティスファーマや京都府立医大に対して家宅捜索に入った。表向きの容疑は薬事法で禁じられている医薬品の誇大広告ということだが、この事件は期せずして9.3兆円産業と言われる医薬品をめぐり、業界と大学・研究機関の間の根深い癒着構造を白日の下に晒すことになった。
京都府立医大をはじめ慈恵医大など5大学の研究チームは臨床試験の結果、降圧剤バルサルタン(商品名ディオバン)には血圧を下げるだけでなく、他の降圧剤に比べて脳卒中を予防する効果が確認されたとする論文を発表していた。しかし、研究データに不自然な点が指摘され、調査が行われた結果、この研究には何と薬の販売元のノバルティスファーマの社員が、身分を隠して関わっていたことが明らかになり、自社にとって都合の良い結果が出るようにデータを不正に操作したのではないかという疑いが出てきているというのだ。
しかし、京都府立医大らの研究結果は国際的に評価の高い高級医学論文誌『Lancet』にその研究結果が掲載されたために、大きな広告効果があったとみられている。
内科医で医療ガバナンスの問題に詳しいゲストの谷本哲也氏は「今回の問題は、海外論文誌を巻き込んだ新しいタイプの問題だ」と指摘する。多額の寄付を行っている大学や研究機関に自社の薬の臨床研究を依頼し、その結果を高級医学誌に掲載することで、国際的に薬効を宣伝し、販売広告にもつなげるという仕組みで、製造元のノバルティスファーマはディオバンで累計1兆円以上という莫大な売上げを手にしている。
薬事法は医薬品の許認可については厳しい基準が設けられているが、認可後の臨床研究についてはほとんど規制がないため、仮に今回の事件で薬事法違反が確定したとしても、課される罰金は200万円の科料に過ぎないという。医療関係者の性善説に立った薬事法は元来、悪意を持って臨床研究を薬の販売促進に使う行為を想定していないのだと、谷本氏は言う。ディオバンの高血圧治療薬としての効果は既に認可を受けているため、仮に今回、販促目的でプラスαの薬効を謳うために論文の捏造が行われたことが明らかになったとしても違法性が問われない可能性もあるのだという。
しかし、それにしてもある商品の販売元の社員が、身分を隠して研究に関わり、データにも直接タッチしていたというような、あからさまな利益相反が放置されているとすれば、日本の臨床研究そのものの信頼性が問われることになりかねない。
今や日本の至るところに巣くう利益相反の罠を、われわれはどう考え、これにどう対応すべきか。まずは医療の現場からゲストの谷本哲也氏とともに考えた。
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今週の論点
・現役医師も驚愕した、ディオバン問題の経緯
・薬事法の穴をつく研究と癒着
・日本医学の権威を失墜させる、利益相反問題
・臨床研究を変えるのは、規制強化か、第三者によるチェックの仕組みか
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