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早川英男氏:アベノミクスが露わにした日本経済の病理
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早川英男氏:アベノミクスが露わにした日本経済の病理

2014-08-06 23:30

    マル激!メールマガジン 2014年8月6日号
    (発行者:ビデオニュース・ドットコム http://www.videonews.com/
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    マル激トーク・オン・ディマンド 第694回(2014年8月2日)
    アベノミクスが露わにした日本経済の病理
    ゲスト:早川英男氏(元日本銀行理事・富士通総研エグゼクティブフェロー)
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     政府は7月25日、消費者物価が前年の同月比で3.3%上昇していると発表した。ただし、物価の上昇自体は13カ月連続しているが、エネルギー価格の上昇率が若干低下してきたため、4月以降の消費税増税の影響を差し引くと純粋な伸び率は鈍ってきているという。安倍政権は2年間で物価上昇率2%というインフレターゲットを設定してこの1年半余り、アベノミクスと呼ばれる経済政策を実施してきたが、その効果はどれほどのものだったのか。
     元日本銀行の理事で金融政策に詳しいゲストの早川英男氏は、物価の下落が止まり、デフレから脱却しつつあるというのは間違いないと分析する。ただし、現在の物価上昇は、原材料価格の高騰や、商品・サービスの価格上昇、そして消費税増税など、明らかにコストプッシュ型の物価上昇であって、景気回復の結果、賃金が上がって物価が上昇するという自立的な経済成長とは異なると指摘する。
     たしかに物価の上昇に関しては異次元金融緩和が一定の効果をあげているようだ。しかし、リフレ派が主張するような、物価が上昇すればすべてがバラ色になるということはないと早川氏は釘を刺す。異次元金融緩和は物価が2%上昇したらやめるのか、果たしてやめられるのかという問題も大きく、日銀が金融緩和をやめたとたんに、国債の金利が上昇し、借金まみれの日本の財政を直撃することになると早川氏は分析する。
     確かに物価の下落は止まっている。しかしこれは内需が中心の景気回復傾向に過ぎず、膨大な財政赤字や労働力の減少、労働市場の逼迫など供給面での制約は強まる一方だ。しかも日本の潜在成長率はゼロに等しい。これでアベノミクスがうまくいっていると評価するのは楽観的過ぎる。それでも早川氏は資本や人材を投入すべき分野は、改訂版の成長戦略で示された医療改革分野や女性の労働関係分野などまだ残されているという。こうした分野にこそ、より効果的な成長戦略が必要であり、相応の資本を投入すべきだろう。
     このまま見せかけの景気回復に踊らされ、財政赤字は積み上がったまま、物価の上昇率が2%に到達し、金融緩和政策をやめる局面に直面した場合、本当の意味でのインフレが発生してしまいかねないと早川氏はいう。国債価格が下落したからといって日本経済が即死するわけではないが、財政事情の悪化はより深刻化し、必要な改革が行われないまま日本全体が「静かなる危機」に突入していくというシナリオは十分に考えられるというのだ。
     アベノミクスで日本経済はどう変わったのか。そしてこの先、どうなっていくのか。金融政策や成長戦略を参照しながら、アベノミクスによって明らかになってきた日本経済の今後について早川英男氏とともに、経済学者の小幡績と社会学者の宮台真司が議論した。

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    今週の論点
    ・違和感ばかりの「経済財政白書」
    ・「短い20世紀」に適応しすぎた日本
    ・「生産性を伸ばす」か「働く人を増やす」か
    ・「静かなる危機」を迎えないために
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