マル激!メールマガジン 2015年4月22日号
(発行者:ビデオニュース・ドットコム http://www.videonews.com/
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マル激トーク・オン・ディマンド 第732回(2015年4月18日)
和歌山カレー事件に見る、科学鑑定への誤解が冤罪を生む構造
ゲスト:河合潤氏(京都大学大学院工学研究科教授)
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 以前に一連の原発問題の議論の中で、われわれの社会において「科学の民主化」と「民主の科学化」がいずれも大きく遅れている問題が指摘されたことがあった。
 「民主の科学化」については一般の市民が科学的な思考をする習慣が身についていないことを、「科学の民主化」では科学者が科学的に正しいことだけに目が行くことで、民主主義にとって何が正しいかの視点が欠けていることが問題になっていることを学んだ。
 どうもその問題が司法の世界にも持ち込まれているようだ。夏祭りの炊き出しのカレーに猛毒のヒ素が混入し、4人の死者と60人以上の怪我人を出した和歌山カレー事件で、既に死刑が確定している林真須美死刑囚の犯行を裏付ける唯一の物証となっていた科学鑑定の結果に今、重大な疑義が生じている。
 今週のマル激では死刑判決の根拠となった科学鑑定(中井鑑定)に最初に異論を唱えた、京都大学大学院教授で蛍光X線分析の専門家の河合潤氏をスタジオに招き、科学鑑定と司法が抱える重大な問題を議論した。
 林真須美氏は黙秘を貫くなどして、一貫して犯行を否認していたが、自白や動機の解明が行われないまま、裁判では、犯行に使われたヒ素の流通経路や組成の同一性が、いわゆる中井鑑定によって裏付けられたことで、真須美氏の犯行であったと断定されている。しかし、河合教授が中井鑑定の中身を検証した結果、この裁判では鑑定に対する大きな誤解があることが判明した。中井鑑定は事件の関係先9箇所から採取したヒ素がいずれも同じ起源であることを示しただけで、それはその地域で流通するヒ素がほぼ同じドラム缶に入って中国から輸入されたものだったために、当然のことだった。そして、河合教授が弁護側からの依頼で、単純に中井鑑定の結果を「林真須美氏が犯行を犯していない可能性」を裏付けるために再度検証した結果、不純物の組成などから、中井鑑定はむしろ真須美氏が犯行をしていないことを裏付けるデータを提供していたことがわかったのだという。
 「異同識別」だのヒ素の「同一性」などといった、実際には科学的ではない微妙な言い回しが誤解を招き、それが死刑という取り返しの付かない判決に行き着いていることを、果たして検察や鑑定を行った中井教授はどう理解しているだろうか。今こそ、「市民の科学化」が問われている。河合潤教授とともに、神保哲生と宮台真司が議論した。

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今週の論点
・あらためて振り返る、和歌山カレー事件の経緯と裁判の論点
・「中井鑑定」のポイントと、でたらめな判決文
・鑑定に「SPring-8」を使う必要はあったのか
・都合よく使われる「鑑定結果」――“科学の民主化”は遠く
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