マル激!メールマガジン 2015年10月21日号
(発行者:ビデオニュース・ドットコム http://www.videonews.com/ )
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マル激トーク・オン・ディマンド 第758回(2015年10月17日)
米大統領選でダークホースが台頭する背景
ゲスト:渡辺靖氏(慶應義塾大学環境情報学部教授)
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来年11月の米大統領選に向けた序盤戦で、ちょっとした異変が起きている。民主・共和両党で、いずれも泡沫、あるいはダークホースと見られていた候補者が大健闘をしているのだ。共和党の指名争いでは、アメリカの不動産王として知られる大富豪のドナルド・トランプ氏が、行政経験が皆無で、また人種差別や性差別的な発言を繰り返し、暴論に近い政策論をまき散らしているにもかかわらず、支持率でトップに躍り出ている。また、世界的な外科医として有名なベン・カーソン氏が、やはり行政経験はなく、政策も一貫性を欠いているにもかかわらず、支持率で堂々の2位につける予想外の健闘ぶりだ。
一方の民主党でも、ヒラリー・クリントン元国務長官が、思わぬ苦戦を強いられている。全米の世論調査では辛うじてトップを維持しているものの、自らを民主社会主義者と公言し、富裕層への課税強化などを訴えるバーニー・サンダース上院議員が猛烈な追い上げを見せ、州によっては支持率がクリントン候補を上回るところまで出てきてる。
トランプ氏やサンダース氏が予想外の高い支持を集めている背景について、アメリカ研究が専門で、大統領選挙の動向にも詳しい慶應義塾大学の渡辺靖教授は、アメリカの有権者たちの間で広がるワシントンの既存の政治に対する幻滅や怒りの存在を指摘する。何かを変えてくれるだろうと期待したオバマ政権は共和党に議会を握られたこともあり、期待に十分応えられていない。もはや既存の政治には期待できないとの思いが、トランプ氏のようなアウトサイダーへの期待という形で現れていると渡辺氏は言う。
とはいえ、大統領選挙は長丁場だ。2010年の最高裁判決でスーパーPACと呼ばれる政治団体を通じた無制限の政治献金が可能になったことで、大統領選を勝ち抜くためには最低でも10億ドル(1200億円)の資金が必要になっていると言われている。それを自己資金で賄える大富豪のトランプ氏には資金の問題はないかもしれないが、サンダース氏やその他の候補にとってはこれが今後死活問題となってくる可能性は高い。
大統領序盤戦でダークホースが台頭した背景には、アメリカの有権者のどのような政治的意思が反映されているのか。この選挙では何が問われ、それはアメリカの歴史上、どのような意味を持つのか。今後の日米関係への影響も含め、米大統領選の序盤線の戦況について、渡辺靖氏とともに、ジャーナリストの神保哲生と社会学者の宮台真司が議論した。
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今週の論点
・アメリカに広がる、“ワシントンのインサイダー”への不信感
・民主党:バーニー・サンダースの台頭が示すこと
・共和党で注目される、トランプ、ルビオ両候補の政策
・アメリカにとって、今回の大統領選は何を意味するか
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■アメリカに広がる、“ワシントンのインサイダー”への不信感
神保: 今日は久々にアメリカの大統領選挙についてとりあげます。選挙戦自体はまだまだ予備選なども始まっていないし、本選の投票日は来年2016年11月8日なのですが、すでにかなりニュースになっていて、討論会なども開かれています。そういう意味では羨ましいです。大統領選で投票するアメリカ国民は長丁場の選挙戦を通じてそれだけいろいろなことを聞くことができるわけですから。しかし、この序盤は、大統領選挙戦線異状アリといった様子です。宮台さんはどう見ていますか。
宮台: おっしゃるとおり、大統領選挙のたびに羨ましいなと思います。それは人々がいろいろなものを共有できるチャンスだということですが、そもそも共有できるのは大統領選が「お祭り」だからです。人類学者のラドクリフ=ブラウンが、宗教の機能について論じる時に、やはり祝祭や儀式による社会統合の意味合いが大きいということを言っていました。そういう意味では、アメリカの社会統合の非常に重要なチャンスが大統領選挙なのだと思います。
神保: さて、2008年大統領選のあと、オバマが選ばれた意味について番組でも議論を重ねましたが、
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