マル激!メールマガジン 2015年11月25日号
(発行者:ビデオニュース・ドットコム http://www.videonews.com/
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マル激トーク・オン・ディマンド 第763回(2015年11月21日)
沖縄をこれ以上追い詰めてはならない
ゲスト:松元剛氏(琉球新報編集局次長)
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 安倍政権は政府が強権を発動し続ければ、いずれ沖縄が力の前に屈服するとでも思っているのだろうか。米軍普天間基地の辺野古移設をめぐり、政府と沖縄県の対立が退っ引きならない状態に陥っている。
 政府は11月17日、沖縄県の翁長雄志知事を相手取り、ついに法廷闘争に打って出た。知事が辺野古沿岸域の埋め立て承認を取り消したのに対抗し、これを代執行によって撤回するための提訴だった。沖縄の県紙「琉球新報」の松元剛編集局次長は、翁長知事に会おうともしなかった安倍首相の反応を見て、政府と沖縄県の全面対決は避けられないと当初から見ていたというが、一方で、これほど早く政府側が強権を発動してくるとまでは予想していなかったという。
 今回、性急に法廷闘争に打って出たことで、安倍政権は新基地の建設が、安全保障上の理由からの必然ではなく、単なる沖縄に対する差別意識に根差したものであることを、多くの人に気づかせてしまった可能性がある。安全保障上、どうしても沖縄に作らなければならないというのであれば、ここまで明確に新基地建設に反対している沖縄側の言い分にもう少し耳を貸し、何らかの妥協を探る姿勢があってしかるべきだからだ。
 そうした中、妥協点を探る動きも出てきている。米ジョージ・ワシントン大学教授で米・民主党政権に近い知日派のマイク・モチヅキ教授と桜美林大学大学院の橋本晃和特任教授は「沖縄ソリューション」と呼ばれる妥協案を提唱している。これはアメリカ側の軍事的必要性を満たしつつ沖縄の立場にも配慮した現実的な妥協案と言えるものだ。
 しかし、松元氏はまた、沖縄の状況はかなり切羽詰まっており、そう悠長なことを言ってもいられないとして、沖縄問題がこれ以上拗れた場合、日米関係にも深刻な打撃を与えるような事態に陥りかねない空気が沖縄県内に燻っていることへの警鐘を鳴らす。それは政府の非情な強権発動に対する沖縄の怒りが爆発した時、沖縄の民意が単に辺野古の基地建設への反対運動では収まらなくなる恐れが、現実的なものとして出てきているからだ。
 これ以上沖縄を追い詰めることは日本全体にとっても得策なのか。そもそも安倍政権の沖縄の民意との全面闘争に勝算はあるのか。米軍普天間基地の移設をめぐる辺野古の状況などについて、ゲストの松元剛氏とともに神保哲生と宮台真司が議論した。

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今週の論点
・顕在化した、沖縄への「差別意識」
・「差別」と「自己決定権」が問題なら、日本よりアメリカを動かしやすい
・ひとつの出口を示す沖縄ソリューション(プランB)
・マスメディアはいったい何をやっているのか
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■顕在化した、沖縄への「差別意識」

神保: 今回は宮台さんもずっと関心を寄せてこられた沖縄についてです。ただ“沖縄問題”ではなく、沖縄をどうするかという“われわれの問題”というテーマでなければ意味がないと思います。記者会見で翁長知事が「沖縄はどうするのですか」と聞かれた際、「そういうあなたたちはどうするのですか」と質問者に聞き返したのが、まさにそれです。今回は、国が沖縄県知事を提訴するということを受けての議論になりますが、宮台さん、最初に何かありますでしょうか。

宮台: 露払い的な前振りや技術論に傾かないお話をすると、今回の沖縄の問題に関する内地の側の利得は、やはり「気づいた」ということなのです。それは僕の本でも最近繰り返し書いているけれども、日本の安保条約は日米地位協定や、安保条約を運用するための日米合同委員会の枠組みに則っています。ですが、事実上、安全保障条約の負の部分、簡単に言えば危険を背負う部分をすべて沖縄に押し付けているのです。9条、安全保障条約、日米地位協定、日米合同委員会――これはワンパッケージですが、いわば沖縄を犠牲にして成り立っている。