マル激!メールマガジン 2016年3月2日号
(発行者:ビデオニュース・ドットコム http://www.videonews.com/ )
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マル激トーク・オン・ディマンド 第777回(2016年2月27日)
イランの国際舞台復帰で変わる中東の勢力図
ゲスト:高橋和夫氏(放送大学教授・国際政治学者)
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中東でイランの存在感が増している。昨年7月に核開発をめぐりイランがアメリカなどとの間で合意したことを受けて、長年同国を苦しめてきた制裁が解除され、イランの国際舞台への復帰がいよいよ本格化してきた。
イランとアメリカは長年、対立関係にあった。1950年代からアメリカはイランの内政に干渉を続け、53年にはCIAが中心となってクーデターを起こさせ、傀儡政権を打ち立てている。こうした過剰な干渉がイラン国民の反発を招き、1979年、イランではイスラム原理主義革命が起こる。それ以降、イランとアメリカの関係悪化は決定的となった。経済制裁が幾度となく発動され、イランは長年にわたり、国際社会から孤立させられた上に、経済的にも苦境を味わってきた。アメリカは隣国イラクのサダム・フセインを支援し、間接的にイラン・イラク戦争まで仕掛けている。
一方、国際的な孤立を余儀なくされたイランが、その後、核開発に着手したことで、北朝鮮、イラクと並びブッシュ大統領から「悪の枢軸」とまで罵られるようになった。
放送大学教授でイラン情勢に詳しい高橋和夫氏は、イラン側にはアメリカが仕掛けたクーデターによって自分たちが選んだ政権が潰されたことへの恨みが染みついている一方で、アメリカは原理主義革命時に大使館を占拠されたことで覇権国としてのプライドをずたずたにされた経験が尾を引き、両国の和解はこれまで一向に実現しなかったという。
それがここに来て、イラン側では、強硬路線だったアフマディネジャド前大統領に代わって穏健派のロウハニー氏が大統領に就任し、アメリカ側も「悪の枢軸」演説をしたブッシュ大統領に代わり、オバマ政権が誕生したことで、ようやく関係改善の環境が整った。
しかし、国土、人口、石油資源、そして歴史とプライドと、あらゆる面で中東の盟主の条件を兼ね備えたイランが、制裁解除によって国際舞台に復帰すると、中東の勢力図に大きな変化が起きることが避けられない。特に、米・イラン関係の悪化を後目に、親米国として中東の盟主の地位を享受してきたサウジアラビアへの影響は大きい。
イランの台頭によって中東の勢力図はどう塗り変わるのか。アメリカの後ろ盾で強権的な王政を維持してきたサウジアラビアには、これからも現体制を維持できるのか。混乱するシリア情勢や中東の歴史などを参照しながら、ゲストの高橋和夫氏とともに議論した。
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今週の論点
・イランとサウジによるアメリカの取り合い
・イランの大国意識と被害者意識
・アメリカとイランの憎悪の歴史
・イスラエル問題はどう位置づけられるか
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■イランとサウジによるアメリカの取り合い
神保: 今回はイランについて議論がしたくて、このテーマを設定しました。主演イラン、助演サウジアラビア、くらいの企画です。
宮台: 僕たちがマル激をスタートした直後に9.11の事件が起こりました。そして、アメリカがけっこうダメな国だという議論をする際に、例の筆頭として取り上げていたのがイランです。アメリカはモサデク政権を倒し、パーレビ傀儡王朝を作り、革命をやられて、ファナティックな「原理主義」だというレッテル貼りをして、イラクのフセインを応援して・・・というように、イランとの関係にアメリカの愚昧な政治が顕著に出ているのです。似たようなことがシリアにも言えるのではないかという気もしています。