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月尾嘉男氏:日本が生き残るための処方箋
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月尾嘉男氏:日本が生き残るための処方箋

2016-03-23 23:30

    マル激!メールマガジン 2016年3月23日号
    (発行者:ビデオニュース・ドットコム http://www.videonews.com/
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    マル激トーク・オン・ディマンド 第780回(2016年3月19日)
    日本が生き残るための処方箋
    ゲスト:月尾嘉男氏(東京大学名誉教授)
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     「そんなことをやってたら、国が滅びるぞ。」何かおかしなことが起きた時に発せられるこんなセリフは、少なくともこれまでは半分冗談で語られてきたものだった。国が本当に滅びることなんて、ありっこない。われわれの多くが、そう考えていたに違いない。
     しかし、東日本大震災から5年。日本という国の統治機能が、根本的な問題を抱えていることが明らかになっている。にもかかわらず、われわれはそれらの問題を何一つ解決することができていない。そろそろわれわれはこの国の生存を真剣に心配しなければならないところまで来ているのではないか。そのような問題意識の上に、マル激では震災5周年を機に、2週にわたって、日本が存続するための条件を真剣に考える番組をシリーズで企画した。
     その2回目となる今週は、日本の存続に対する危機感を表明してきた東京大学名誉教授の月尾嘉男氏と、現在の日本が置かれた危機的状況と、日本が世界地図から消えてしまわないために何をしなければならないかを議論した。
     月尾氏は現在の日本の姿が、ローマ帝国に滅ぼされるまでのカルタゴや、7世紀から18世紀まで続いたベネチアといった、一時は世界に冠たる繁栄を謳歌しながら、時代の潮流に乗り遅れたために没落し、最後は消滅にいたった国々と酷似していると警鐘を鳴らす。
     しかし、まだ日本にもチャンスはあると、月尾氏は言う。日本が近代以後推進してきた諸政策は、むしろ日本の伝統に反するものが多かった。近代化を実現するために、日本は身の丈に合わない西洋的な価値を無理やり日本に移植してきた面が多分にある。今、その西洋的な価値に逆転潮流が起きているのだとすれば、日本はむしろ自分たちが本来得意とする伝統的な路線に立ち戻ればいいだけではないか。近代化のために捨ててきた日本的な価値を今一度見直し、再興することが、日本が逆転潮流に乗り、再浮上するチャンスを与えてくる可能性があると月尾氏は言う。
     このままでは日本は逆転潮流に乗り遅れた結果、人口は減り続け、経済的にも没落した、貧しいアジアの小国として生き残る道しか残されていない。いや、隣国に100年計画で世界支配を目論む国があることを考えると、カルタゴやベネチアのように、消滅の道を辿ることになるかもしれない。消滅国家の教訓と日本の現状を対比しつつ、これからも日本が生き残るための処方箋を、ゲストの月尾嘉男氏とともに神保哲生と宮台真司が議論した。

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    今週の論点
    ・震災から学ぶべきだった、道徳的連帯
    ・繁栄しながら消滅した、カルタゴ・ベネチアと日本の共通点
    ・「潮流逆転」に対応できていない日本
    ・中国100年の計は、着実に進んでいる
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    ■震災から学ぶべきだった、道徳的連帯

    神保: 震災から5年の節目ですが、政治状況にしても何にしても、日本は何も変わっていません。これはいよいよヤバいなということで、先週に引き続き、日本という国の存続・消滅というレベルの話をきちんと考えていきたいと思います。

    宮台: 先週も話したことですが、基本的に問題は、5年前の東日本大震災をどう理解するか、ということです。そこで明らかになったことを前提に、例えば街づくりをどうするのか、防災・減災、エネルギーの供給、通信のシステムをどうするのか、考えなければいけない。首都圏や大阪圏で同じことが起これば、もっと大きな災害になるわけですから。

    神保: まだあれで済んでよかった、ということになる可能性もあります。

    宮台: 同様の災害、あるいはそれ以上のことが起こったときに、僕たちがあのような破滅的な事態に陥らないための新しいシステムづくりをはじめなければいけなかった。つまり、「今まで乗っている船はこのままでは沈むから、新しい船を造って乗り換えよう」という話にならなければいけなかったのに、高浜原発の運転を差し止めた大津地裁の決定について、関西の経済界から「なぜ一地裁の裁判官によって、国のエネルギー政策に支障をきたすことが起こるのか」などと筋違いの批判が出ていることなどからも明らかなように、「今まで乗っていたのだから、この船でいいんだ」と言っている。

    神保: 沈んでいく船のなかで、座席争いをしているということですね。

    宮台: しかも、僕の考えでは、彼らは「本当にこの船は沈まない」と信じているのではなくて、「逃げきれる」と思っている。例えば自分の預金の大半をドル預金に替えるなど、そういうことを平気でやっているのです。基本的に「この船で大丈夫なんだ」と言っている連中のなかに、そのことについて責任を取れるだけの人間、責任を取ろうという覚悟のある人間、それがまったくいないと思います。

    神保: 今回はいよいよ、日本の生き残り/存続のために考えなくてはいけないことは何か、というテーマでゲストの方をお願いしました。

    宮台: 今回のゲストは、月尾嘉男先生です。東京大学の建築学科で都市工学を学ばれたのですが、そのあと、特に通信行政に非常に詳しいお仕事をされていて、政府に関係するようなさまざまな委員会・審議会等を歴任した先生でいらっしゃいます。

     
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