香港の社会運動家・周庭(アグネス・チョウ)さんの連載『御宅女生的政治日常――香港で民主化運動をしている女子大生の日記』。3月11日の補欠選挙への出馬を正式に表明した周庭さん。その決意をするまでには様々な葛藤がありました。(翻訳:伯川星矢)
御宅女生的政治日常――香港で民主化運動をしている女子大生の日記
第13回 わたしが補欠選立候補を決意するまで
2018年になりました。まずは新年のご挨拶をさせていただきます。みなさん、あけましておめでとうございます。昨年の12月、わたしは今年の3月11日に行われる立法会選挙香港島区への出馬を「前向きに検討する」と発表しました。そのときから、わたしとわたしのチームは休む間もなく様々な準備活動や宣伝活動、公約の準備などを進めてきました。この原稿を書き始めた今日はすでに1月10日、あと3日で選挙出馬を発表し、正式に選挙戦へ突入することになります。
今思い返してみると、「選挙出馬」はわたしにとって手が届くはずのないものでした。正直なところ、わたしは自分が選挙に出ることはあまり考えたことはなかったのです。これまでネイサン・ロー立法会議員事務所の政策研究補佐として働いていましたが、まさか自分が議事堂に立ち、議会戦争の最前線に立つと思いませんでした。去年の8月のわたしの戦友の収監をきっかけに、この考えは変わることになりました。
わたしは考えました。今この険しい政治情勢の中、わたしは自分たちの政党のために何ができるのか。わたしは香港の民主活動に何ができるのか。どうしたら刑務所にいる戦友たちの負担を減らせるのだろうか。そこで心の奥底から湧き上がった選択肢は「選挙に出る」ことでした。ネイサン・ローを含む6人の民主派議員が議員資格剥奪となり、補欠選挙が目前でした。わたしの戦友で2人が禁固刑になり、被選挙権が5年間剥奪となりました(編注:香港では条例により、3ヶ月以上の実刑判決を受けた場合はその後5年間議員選挙に立候補できない)。戦友たちとこれまでやってきたことを発展させるため、これまで民主派が目指してきた議会方式を継続させるためにも、わたしはこれまでした中で一番の覚悟を持って、一番大きな決断を下さなければなりませんでした。
長い間悩んだ末、わたしは決心し、覚悟を決めました。この思いを党の皆に話す前に、わたしは両親と食事の約束をしました。その席で、わたしが悩み辿り着いた考えと自分自身の変化をぶつけることにしました。意外にも、両親はあまり驚きませんでした。まるで心の準備ができていたかのように穏やかでした。大賛成とまではいきませんでしたが、それでも「OK」と言ってくれました。親の支持はわたしにとっては最大の心の支えになります。この攻撃的で、憎しみに満ちた茨道でも、背筋を伸ばして歩き続ける力を与えてくれる。多忙な宣伝活動や会議のために、わたしは家族と食事することもあまりできなくなりました。それでも両親はときおり「頑張れ」「祈っている」とメッセージを送ってくれます。
2017年を振り返ってみると、香港人の尊厳が踏み弄られ続けている年でした。民選議員が議員資格を剥奪され、前線に立つ活動者が収監されました。立法会では民主派議員が欠員している隙に、香港境内での中国入管手続き案と立法会規則の変更が可決されました。2018年はより多くの悪法や無駄なインフラ工事審議が行われます。例えば国歌法や、香港内の中国入管エリアに関する法律や、香港・マカオ・珠海を跨ぐ越境大橋の超過建設費などがあげられます。わたしは議会に入り、香港人のために悪法を退け、血税の守護者になります。
選挙まであと2ヶ月足らず、この期間中にわたしは引き続き若者の活力ややる気、政策や議会に関する知識、そして堅実な地域活動経験を基盤にして、市民の支持を勝ち取っていきたいと思います。
(続く)
▼プロフィール
周 庭(Agnes CHOW)
1996年香港生まれ。社会活動家。17歳のときに学生運動組織「学民思潮」の中心メンバーの一員として雨傘運動に参加し、スポークスウーマンを担当。現在は香港浸会大学で国際政治学を学びながら、政党「香港衆志」の副秘書長を務める。
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