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(ほぼ)毎週月曜日は、大手文具メーカー・コクヨに勤めながら「働き方改革アドバイザー」として活躍する坂本崇博さんの好評連載「(意識が高くない僕たちのための)ゼロからはじめる働き方改革」を大幅に加筆再構成してリニューアル配信しています。
働き方について複数の選択肢を得ようと情報収集するためには、「偶然」の出会いから自らの世界を広げることが大切です。今回は偶然の出会いを計画的に増やしていくコツを、坂本さんがコミケ通いに勤しんでいたころの習慣を交えながら紹介します。

(意識が高くない僕たちのための)ゼロからはじめる働き方改革〈リニューアル配信〉
第16回 選択肢拡張術 ②偶然を計画する

あらすじ

 アンテナ脳を鍛えて様々な情報に興味を持って調べる習慣がついて、より「多様」な世界に触れられるようになれば、ますます知識の幅は広がり、選択肢が浮かぶ確率や浮かぶ件数も増えていきます。
 しかし、人はなかなか「自分の興味の範囲外の世界」には立ち入りにくいものです。それは悪いことではなく、ある意味合理的な判断です。つまり、世界が広がらないことは「必然」なのです。
 ではどうすれば自分の知らない異世界に入ることができるかというと、「偶然」に依存することになります。
 ただし、単に偶然を待つのではなく、計画的に偶然に出会えるように行動する習慣をつくることが可能であり、そうすることで、より広い視野・選択肢を得ることができると考えます。

世界を広げることができれば、ますます選択肢は増える

 アンテナ脳が鍛えられれば、目や耳に飛び込んでくるいろいろな情報に関心を持つことが無意識的に習慣化されます。それによって多様な知識が脳内に蓄積され、いざというとき活用できるようになります。
 その効果をいっそう高める上では「目や耳に飛び込んでくる情報」の拡張も重要です。
 それをせず、常に同じような情報しか流れてこない世界に身を置いていると、目・耳にする情報がだんだん画一的なものになってしまい、新しい選択肢につながる多様な情報が入ってこなくなってしまうかもしれません。
 この、目や耳に飛び込んでくる情報を拡張することを、私は「世界を広げる」と表現します。
 自分が今いる世界(職場だったり、家だったり、交友関係だったり)から得られる情報は、長期的には固定化されており、どんなにアンテナ脳が育っていても、「そもそも新しい情報が飛び込んでこない」ということになりがちです。
 そこで、自らその世界から出て、新しい職場に飛び込んだり、引っ越して生活環境を変えたり、新しい交友関係を広げるような「世界を広げる」機会を設けることで、新たに関心を持つことができる情報の総量を増やすということが重要になるわけです。

自分の世界の限界

 第13回で、自分の視野を広げてやりたいことを見出すための手法として「他人探し」についてご紹介しました。これも一つの「新たな世界」を広げる行為です。そしてこのやり方としては、いくつかあります。
 たとえば、講演会やセミナーに参加することが挙げられます。また、自伝などの本を読むことも、他人の体験を自分の中に取り込むよい機会になるでしょう。最近では、FacebookなどのSNSやYouTubeを開けば、いろいろな他人に出会うこともできます。TVのドキュメンタリー番組も他人と出会う機会として生かせます。
 ただし、注意したいことがあります。それは、そうしたセミナーや読書、SNSやTV番組などで他人を探し続けていると、「次第に同じような人ばかりが目に留まるようになる」ということです。
 人は、無意識的にリスクを避ける傾向があります。ランチをとる店を選ぶときにも、美味しいと分かっている定食屋と、一度も入ったことがなく見た目からは美味しそうな料理がでてくるかどうかわからない寂れた店とでは、なかなか後者を選ばないものです。そのため、セミナー案内サイトや書店、TV番組表などを見るときにも「これを見れば役立ちそう」というコンテンツに目がいきやすいですが、なんだかわからない・自分にとって関係がなさそうな人が登場するコンテンツは「ひょっとすると時間の無駄になるかもしれない」と、除外されてしまいがちです。
 SNSやYouTube、Amazonなどのテクノロジーを駆使した情報プラットフォームは、本来はあらゆる可能性に開かれているはずなのですが、漫然と使っていると、さらにその傾向が強まります。フォローしている人の投稿しかタイムラインには流れてきませんし、オススメ動画やオススメ本は過去の閲覧履歴や登録されたお気に入りチャンネルの種類をもとにしてサジェストされるので、自分の視野を大きく広げるような「これまで興味を持たなかったコンテンツ」にはなかなか出会いづらくなってしまうからです。
 これでは、せっかく時間をかけて他人探しに勤しんでいても、結局は同じような人ばかりにしか出会えず、選択肢が広がりません。それどころか、その同じような体験をしている人ばかりが目に飛び込んでくることで、自分のやりたいこともその方向性しかないと錯覚してしまうかもしれません。
 他人探しは、ワンパターンな他人ではなく多様な人に出会うことが重要です。ときには「食わず嫌い」をしてきたような、自分の性格に合わない人や自分の人生とはまったく関係のない世界の人に出会うことで、新しい性格が芽生えたり、新たな世界が開けたりするかもしれません。
 しかし、そうした「自分の『チャンネル登録』に入ってこない人」に出会おうという行為は、ともすれば時間の無駄になったり気分を害するなど、損をする結果につながりかねないリスクの大きな選択です。
 たいていのビジネスパーソンは合理的な判断が好きですので、こうしたリスクがある選択はなかなかとりづらいものです。
 つまり、自分の視野や選択肢を広げてくれる人・本などに出会うという機会は、必然的(合理的)には起こりづらいわけです。


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