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人間はなぜAIにキャラクターを欲望するのか|三宅陽一郎
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人間はなぜAIにキャラクターを欲望するのか|三宅陽一郎

2021-10-27 07:00
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    今朝のメルマガは、PLANETSのインターネット番組「遅いインターネット会議」の登壇ゲストによる自著解説をお届けします。
    本日は、ゲームAI開発者として知られる三宅陽一郎さんをゲストにお迎えした「人間はなぜAIにキャラクターを欲望するのか」(放送日:2021年1月19日)内で紹介された、『人工知能が「生命」になるとき』について。
    アカデミズムの場で語られるような、人間の知的機能の再現を追求する「人工知能」と、ポップカルチャーの中でイメージされるキャラクター的な「人工知能」との間には大きな乖離が存在します。両者を掛け合わせるには何が必要なのか、そしてそれは、未来社会にどのような変革をもたらすのでしょうか?
    実践的なゲームAIのアルゴリズムの開発手法を説いた先頃刊行の新著『戦略ゲームAI解体新書』と併せてご覧ください。
    (構成:徳田要太)

    人間はなぜAIにキャラクターを欲望するのか|三宅陽一郎

    ゲームAI開発者として数々のゲームタイトル制作に携わりながら、人工知能研究者としても活躍する三宅陽一郎さん。
    2020年12月に刊行された『人工知能が「生命」になるとき』(PLANETS)では、東洋思想をもとにした三宅さん独自の視点から、単に機能を果たすものではなく「生命」としての人工知能のあり方について語られています。
    本稿では、「人間はなぜAIにキャラクターを欲望するのか」という切り口から、本書のポイントについて詳しく解説していただきます。

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    三宅陽一郎
    人工知能が「生命」になるとき
    PLANETS/2020年12月16日発売/ソフトカバー 304頁

    【目次】
    第零章 人工知能をめぐる夢
    第一章 西洋的な人工知能の構築と東洋的な人工知性の持つ混沌
    第二章 キャラクターに命を吹き込むもの
    第三章 オープンワールドと汎用人工知能
    第四章 キャラクターAIに認識と感情を与えるには
    第五章 人工知能が人間を理解する
    第六章 人工知能とオートメーション
    第七章 街、都市、スマートシティ
    第八章 人工知能にとっての言葉
    第九章 社会の骨格としてのマルチエージェント
    第十章 人と人工知能の未来──人間拡張と人工知能

    「生命」としての人工知能

    自分は人工知能を作る側の立場にいるのですが、ただ単に技術的に作るのではなく、一度「人間とは何か」とか「社会とは何か」といったことを哲学的に考え、そこから持ち帰ったものをエンジニアリングするという形を取っています。知能のあり方を深く探求して遠くを目指すようなスタンスで開発を続けてきたのですが、その試みはこの5、6年、『人工知能の哲学塾』という一連の書籍で展開してきました。それに加えて、「次の人工知能のステージとは何か」についてさらに具体的に突き詰めたいという問題意識もありました。

    このことを考えるために、私は「東洋」と「西洋」という二つの対立軸をあえて持ち出しております。もちろん東洋と西洋といっても単純にそれらが対立するというわけではありませんが、人工知能というものの姿を具体的に浮かび上がらせるための例として、「東洋思想の中にある人工知能のエッセンス」と「西洋思想の中にある人工知能のエッセンス」を方法論的に対立させているというわけです。例えば、単純にいうと、西洋の人工知能は機能的で東洋の人工知能は存在的。つまり東洋の考えでは人工知能は「いかに存在するか」と問うということです。このようなものを人工知能とあえて区別して「人工知性」と呼んでいます。

    つまり「人工知能」と「人工知性」というものを方法論的に対立させて、東西の人工知能の対立の先にあるものを掴むことが私のビジョンの最終到達点なわけです。そのための青写真として、「人工精神」や「人工生物」と呼ばれるものの研究が形になっていますが、私は存在であり、機能でもある、すなわち一つの「生命」であるような人工知能を作りたいということです。

    「人間」と「人工知能」の関係

    「人間」と「人工知能」と言ったとき、人工知能は、基本的には人間をリファレンスします。もちろん動物とか昆虫を参照しても構わないのですが、実は西洋の人たちにとってそこの境目は厳密で、人間と人間ではないものを明確に区別します。

    「人工生命」といえばどちらかというと、虫や鳥などのさまざまな生命を模倣するものですが、「人工知能」というものは人間をリファレンスとして知能の構築を目指すということが、その発祥の時代から求められています。そのためにはまず人間というものを深く突き詰めて、人間の中の意識構造や無意識構造をデジタルな形で理解し、それを人工物である機械の上に再現しましょう、というところから出発しており、そしてそれを考えることは人工知能と人間の間の相互作用や、コミュニケーションについて考えることにもなります。

    ただ、一般に人工知能と人間同士のコミュニケーションというと、言葉やサインなどが持ち出されますけれど、実は人間同士でも無意識のレイヤー、あるいはボディータッチといった非言語の領域にもさまざまなレイヤーのコミュニケーションがあります。

    人工知能も人間との関係を築こうとすると、実は単に言葉だけでコミュニケーションを行うのでは不十分で、上述したような無意識をも含めたさまざまなレイヤーのコミュニケーションが必要になってきます。

    「知能」とは何か

    では「知能とは何か」を改めて問うと、身体と意識からなる階層構造としてモデル化することができます。まず世界というものがあって、身体がそれを知覚することで我々はこの世界に住み着いているということが、現象学で有名なメルロ・ポンティによってよく言われていることです。つまり我々の存在のあり方は、実は身体がいかに世界に根ざしているかによって定まるということです。
    例えば植物の場合はすごくわかりやすいですよね。根があってそれが大地を掴むことで存在し、その上に幹があり葉がある。人間も実は身体というものでこの世界に深く棲みついていて、それが知能の形を決めているということです。身体が得た知覚の集積として頂点に存在するのが、意識というものになるわけです。


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