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第319号 2019.6.18発行

「小林よしのりライジング」
『ゴーマニズム宣言』『おぼっちゃまくん』『東大一直線』の漫画家・小林よしのりが、Webマガジンを通して新たな表現に挑戦します。
毎週、気になった時事問題を取り上げる「ゴーマニズム宣言」、『おぼっちゃまくん』の一場面にセリフを入れて一コマ漫画を完成してもらう読者参加の爆笑企画「しゃべらせてクリ!」、著名なる言論人の方々が出版なさった、きちんとした書籍を読みましょう!「御意見拝聴・よいしょでいこう!」、読者との「Q&Aコーナー」、作家・泉美木蘭さんが現代社会を鋭く分析「トンデモ見聞録」や小説「わたくしのひとたち」、漫画家キャリア30年以上で描いてきた膨大な作品群を一作品ごと紹介する「よしりん漫画宝庫」等々、盛り沢山でお送りします。(毎週火曜日発行)

【今週のお知らせ】
※「ゴーマニズム宣言」…安倍政権は現在、北朝鮮の弾道ミサイルから日本を守るためとして、米国製の地上配備型ミサイル迎撃システム「イージス・アショア」の配備を進めている最中だ。配備予定地は、秋田県秋田市の陸上自衛隊新屋演習場と、山口県萩市の陸上自衛隊むつみ演習場の2カ所とされているが、なぜ秋田と山口なのか?そもそもイージス・アショアをアメリカから購入し、配備する必要などあるのか?
※「泉美木蘭のトンデモ見聞録」…国際政治学者の三浦瑠麗氏が、5月に出版した自伝『孤独の意味も、女であることの味わいも』で、14歳のときに受けた集団レイプの被害について告白し、この件についてBuzzFeedNewsが掲載したインタビュー記事「14歳の帰り道、車でさらわれた。あれが『魂の殺人』だと、今の私は思わない」が話題になっている。体験に対して気の毒に思う気持ちとはまた別に、そこから登場する何点かの言説については、違和感や不快感を持った。「レイプは魂の殺人だ」は洗脳なのだろうか?
※よしりんが読者からの質問に直接回答「Q&Aコーナー」!野田佳彦元首相の「消費税減税はポピュリズム」発言をどう思う?執着と愛着の違いとは?自分の子供が「芸能人になりたい」「漫画家になりたい」と言ったら反対する?陸上のサニブラウン選手は日本人?「男系継承のために側室制度を復活させるべき」と言う父をどう説得すれば良い?「少年ジャンプ」ではギャグ漫画が連載しづらい?顔は人格の判断の目安になる?…等々、よしりんの回答や如何に!?


【今週の目次】
1. ゴーマニズム宣言・第329回「イージス・アショアは媚米購入」
2. しゃべらせてクリ!・第276回「突進、突撃、総攻撃!茶魔が戦車でやって来た!の巻〈後編〉」
3. 泉美木蘭のトンデモ見聞録・第131回「三浦瑠麗『あれが魂の殺人だと、今の私は思わない』に思うこと」
4. Q&Aコーナー
5. 新刊案内&メディア情報(連載、インタビューなど)
6. 編集後記




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第329回「イージス・アショアは媚米購入」

「アングロサクソンについていけば、日本は100年安泰」
 安倍晋三は師匠・岡崎久彦の遺訓を忠実に実行しているようだが、これを非難できる日本国民は、いったいどれだけいるだろうか?

 安倍政権は現在、北朝鮮の弾道ミサイルから日本を守るためとして、米国製の地上配備型ミサイル迎撃システム「イージス・アショア」の配備を進めている最中だ。
 「アショア(Ashore)」とは「岸に、海岸に、陸に」という意味で、「Aegis Ashore(イージス・アショア)」は「陸地のイージス」という意味である。
 これまで日本の対北朝鮮ミサイル防衛は、海上自衛隊のイージス艦に搭載されたミサイル「SM3」が大気圏外で迎撃、撃ち漏らした場合は地上配備型の「PAC3」が高度十数キロで迎撃するという構想だったが、新たにイージス・アショアを導入することにしたのである。

 イージス・アショアの配備予定地は、秋田県秋田市の陸上自衛隊新屋演習場と、山口県萩市の陸上自衛隊むつみ演習場の2カ所とされている。
 しかし、なぜ秋田と山口なのか? 
 防衛省は5月27日、青森、秋田、山形3県の国有地計19カ所を調査した結果、秋田の新屋演習場が東日本で唯一の適地だとする報告書を公表した。
 だがこの報告書に対して、「『新屋ありき』で数値を改竄した」との疑念が噴出。
 報告書では19カ所のうち9カ所を、弾道ミサイルを追尾するレーダーを遮ってしまう山が周囲にあるという理由で「不適」としたが、その根拠である山頂を見上げた「仰角」が、いずれも実際より大きく記されており、仰角15度としていたところが、実際には4度しかなかった箇所まであったのだ。
 6月8日に秋田市で行われた住民説明会では、このような重大事態が発覚した後だというのに、出席していた東北防衛局の職員が居眠りをして、怒号の飛び交う大紛糾となった。
 このため、もうひとつの配備地である山口県萩市でも、「結論ありき」で進められているのではないかという不信感が広がっている。

 そして実際に、これはあまりにも呆れた理由による「結論ありき」だったことが明らかになった。
 6月13日放送のテレビ朝日系「羽鳥慎一モーニングショー」の「そもそも総研」で、玉川徹氏が軍事ジャーナリストの田岡俊次氏と共同通信社編集局編集委員の石井暁氏に取材したところ、両者の見解は全く一致していた。
 北朝鮮からハワイに向けての弾道ミサイルを撃ったら、秋田がちょうどその軌道の真下。グアムに向けて撃てば、山口がその真下になる。
 ミサイルは真正面から来た方が迎撃しやすいため、イージス・アショアは予想される軌道の真下にあることが望ましい。
 つまりイージス・アショアは日本を守るためではなく、ハワイとグアムを守るために配備されるのだ!

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 イージス・アショアの射程は2500kmもあるから、1基あれば、どこに置こうが日本全体をカバーできる。できるだけ真正面から迎撃した方がいいということを考えれば、理想的な配備地は、東京を守るためなら能登半島、大阪を守るためなら隠岐諸島あたりである。
 ところがわざわざ、秋田と山口に1基ずつ置くのだから、これはハワイとグアムの防衛が目的としか考えようがないのだ!

 しかも何より危険なのは、イージス・アショアが敵の攻撃対象になるということである。
 北朝鮮からすれば、イージス・レーダーがある限り、ミサイルをいくら飛ばしても迎撃されるわけだから、まず先にこれを破壊しなければならない。
 移動式のイージス艦と違い、イージス・アショアは地上配備型であり、一定の地域に固定されているから、当然その場所が攻撃される。
 戦争のセオリーとしては、「誤爆」として基地周辺の街を破壊するのが効果的とされているともいうから、地域住民がその巻き添えで殺されることも十分ありうる。地域住民が怒るのは、あまりにも当然なのである。

 また、住民にとっては、レーダーの電磁波による健康被害も不安要素である。