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第357号 2020.5.19発行

「小林よしのりライジング」
『ゴーマニズム宣言』『おぼっちゃまくん』『東大一直線』の漫画家・小林よしのりが、Webマガジンを通して新たな表現に挑戦します。
毎週、気になった時事問題を取り上げる「ゴーマニズム宣言」、『おぼっちゃまくん』の一場面にセリフを入れて一コマ漫画を完成してもらう読者参加の爆笑企画「しゃべらせてクリ!」、著名なる言論人の方々が出版なさった、きちんとした書籍を読みましょう!「御意見拝聴・よいしょでいこう!」、読者との「Q&Aコーナー」、作家・泉美木蘭さんが現代社会を鋭く分析「トンデモ見聞録」や小説「わたくしのひとたち」、漫画家キャリア30年以上で描いてきた膨大な作品群を一作品ごと紹介する「よしりん漫画宝庫」等々、盛り沢山でお送りします。(毎週火曜日発行)

【今週のお知らせ】
※泉美木蘭の「トンデモ見聞録」…3か月間に渡って「市中感染がかなり広がっているはず!」「肺炎死の中にたくさんのコロナ死が紛れている!」などと吹聴し【人を見たらコロナと思え】路線で突っ走ってきたテレ朝『羽鳥慎一モーニングショー』。そこへ【抗体検査、東京の陽性率0.6%】という驚くべき情報がもたらされた。検査キットの精度や検体数がまだ少ないという前置きはつくものの、ほとんど感染が広がっていなかったということがわかったのだ。生放送中の出演陣に走る動揺…。どうなる、PCR真理教の信者たち!?
※「ゴーマニズム宣言」…想像力の欠如した人間ほど、恐ろしいものはない。PCR真理教に染まった者たちは「徹底的なPCR検査を実施し、陽性者は全員隔離せよ」と平気で言うが、「隔離」とはどういう状況なのか理解しているのだろうか?現在、新型コロナで隔離されている人々の実態はどんなものなのか?感染者を隔離したことで差別や偏見を助長してしまった、痛ましい歴史の先例である「ハンセン病患者の隔離」から我々は学ぶべきである!!
※よしりんが読者からの質問に直接回答「Q&Aコーナー」!種苗法改正についてどう思う?自粛で離れてしまった客を取り戻すには何に気を付けるべき?玉川徹にコメンテーターとしての自覚と責任ってあるの?一時期は真っ向から批判していた人でも、意見が合う部分があればあっさりと評価してしまう先生…当時腹が立っていたことは気にならなくなるの?政府が大学や研究所でのPCR検査の拡充の検討に入るそうだけど、これって大丈夫なの?芸能人が政治意見を表明することをどう思う?…等々、よしりんの回答や如何に!?


【今週の目次】
1. 泉美木蘭のトンデモ見聞録・第167回「コロナはまだ流行していなかった!? 迷走モーニングショー」
2. ゴーマニズム宣言・第373回「隔離という人権無視」
3. しゃべらせてクリ!・第314回「御坊家のソーシャル・ディスタンス晩餐ぶぁい!の巻〈前編〉」
4. Q&Aコーナー
5. 新刊案内&メディア情報(連載、インタビューなど)
6. 編集後記




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第167回「コロナはまだ流行していなかった!? 迷走モーニングショー」

 テレ朝『羽鳥慎一モーニングショー』が、いま、揺れに揺れている。
 5月15日(金曜)の放送は、まずはいつもの流れで「PCR検査体制が甘い」「緊急事態宣言の解除の基準が甘い」「専門家会議の見解が甘い」と次から次へと文句をつけはじめることからはじまった。流れのなかで、岡田晴恵教授が何気なくこう発言した。

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「(新規感染者数は)夏は上がりようがないと思うんですね」
「本番は秋冬の大流行が来るか来ないかですから、ここで良くなったなとか、終わりなんだなとか、そういう風にはあまり考えない方がよろしいかと思います」(岡田晴恵)

 夏は上がりようがない。つまり「自粛解除後の6月以降に大きなリバウンドが起こり、感染爆発となって指数関数的に感染者数が上がるなんてあり得ない」という見解を、岡田教授は、はっきりと表明してしまっているのだ。
 だが、「だから安心していつも通りの生活を送りましょう」とは言わない。「コロナの恐ろしさはこんなもんじゃない。これで終わったとは思うなよ」という暗雲漂う未来をうかがわせて次回作へとひっぱる、「to be continued..」的な手法で、秋冬の感染爆発と、それに乗じた『玉川とコロナの女王2』に向けた意欲を燃やしたのだった。

 だが実はこの日の未明、テレ朝よりも早く、TBSが「独自入手」として驚くべきニュースを報道していた。厚労省と日本赤十字社が協力して、4月半ばに行い、公表を予告していた抗体検査の結果だ。『モーニングショー』では、パネル解説のさなか、午前9時になってスタジオ内に情報がもたらされた。
『速報:抗体検査、東京の陽性率0.6%』
 生放送中の出演陣に、にわかに動揺が走った。
 この検査は、献血協力者の血液を利用するため、「市中の健康な人の中で、どれほど感染が進んでいるか」を知る目安になるものとして待たれていた。結果は、0.6%。検査キットの精度や、検体数がまだ少ないという前置きはつくものの、ほとんど感染が広がっていなかったということがうかがえる。
 2月半ばからつい先ほどまで、3か月間に渡って「市中感染がかなり広がっているはずだが、PCR検査が絞られているので全貌がわからない」「肺炎死の中にたくさんのコロナ死が紛れている」などと、陰謀論にまぶした恐怖をさんざんばら撒いてきた岡田教授は、この速報を見て、咄嗟にこう発言。

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「かかった人が0.6%ということは、99.4%の人がかかってないということになります。ですから、まだ流行が来てない、と」

 おおおおーーーい! 脳内どないなっとんねん!
 これまで岡田教授が唱えつづけ、「PCRシーヤ派」と「自粛警察」の教義となり、人々を委縮させてきた「人を見たらコロナと思え」は、一体なんだったの? むしろ「人を見てもほぼほぼノー・コロナ」、検査数を絞ってきたこともぜーんぜん問題なし! という話になっているじゃないか。
 こんなもののために、店舗を休業させ、倒産させ、文化を消滅に追い込み、人々の活力を奪い、絶望させ、自殺者まで出しているわけだが、岡田教授は自身のオオカミ熟女っぷりについて、一体どうお考えなのでありましょうか? 
 このとき、私の脳裏には、これまでの番組出演者たちの数々の発言が走馬灯のようによみがえっていた。

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「隔離期間をもっと伸ばす。2週間じゃ不十分」「極力別居する」(倉持仁)

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「どこかひとつの子供専用の隔離施設を作る」「物流の人が感染しているかも」(浜田敬子)

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「全国民に週1回ずつ、3回PCR検査を行って陽性者を隔離すればいい」
「感染者が公共交通機関を使った場合、法律で罰することが必要」(玉川徹)

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「4月10日の時点で東京の実効再生産数が0.5だったなんて、僕ら市中に暮らしてる人間の危機感とは合致しない」(石原良純)

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「1億3000万人、いっぺんに検査して陰性と陽性を分ければ、一番の解決策になる」(長嶋一茂)

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「誰が見ても、PCRを増やすことに反対するという人はいない」(吉永みち子)

 こ、これはもしや、1カ月間つづけてきた私の「モーニングショーいじり芸」のエンドロールなのか!?
 と思いきや、さすがのコロナの女王、打たれ強い……というよりも、打たれるような芯がなかった。おもむろに、ある図の前に立つ。