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【プロはこう見た】「天心vs堀口はキックであってキックではない。まさに異種格闘技戦でした」■鈴木秀明
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【プロはこう見た】「天心vs堀口はキックであってキックではない。まさに異種格闘技戦でした」■鈴木秀明

2018-10-03 18:57
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現役時代は「ムエタイキラー」として名を馳せ、「キックぼんやり層」にその面白さを解説してくる鈴木秀明氏。今回のテーマはもちろん那須川天心vs堀口恭司です! 

・天心vs堀口は「フェイクの天才」対決です/鈴木秀明




――鈴木さん!まずは率直な感想から聞かせてください!

鈴木 いやあ、やっぱり2人とも凄かったです。いままでいろんなキックボクシングの名勝負を見てきましたが「こういうタイプの試合」はこの2人しかできないと断言していいと思います。

――「こういうタイプの試合」ですか。

鈴木 はい。堀口選手がMMAファイターということもあるんですが、通常のキックボクシングの試合と違って決定的な違いがあったんです。それでいてハイレベルな格闘技として成立している。ホントに凄かったですね。

――その「決定的な違い」とはどういうことなんでしょうか?

鈴木 その前に試合内容から振り返りたいんですが……ボクの中ではこの試合展開は予想どおりというか、お互いに動きが早すぎるし、目がよすぎるので、なかなか攻撃が当たらないんじゃないか。そして天心選手がギリギリ競り勝つんじゃないか……というものでした。2人ともあれだけずっとフェイントかけまくって動き続けているのに、クリーンヒットがなかったのも凄いです。3ラウンドに天心選手の左ストレートがあったぐらいで。

――あのスピードの中で、おかしなことですよね(笑)。

鈴木 お互いにフェイントの掛け合いが本当に凄かった。一つの攻撃からその次、その次……と連動してるんですよ。相手の動きに合わせて攻撃も変えたり、天心選手はパンチの角度を微妙に変えて打ったりしますしね。

――将棋の名人は何十手先まで読むとは聞きますが、彼ら2人も先々まで読んで動いている。

鈴木 「あ、こっちをやるんだ」「そうくるのか」とリング上で会話をしていたんだと思いますが、そこは2人とも思考というより本能なんでしょうね。一つでもミスをしたり、何か選択を間違えたら負けに繋がってしまうという。

――単なる攻撃の「衝突」じゃないんですね。

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鈴木 天心選手に限って言えば、平常心を保ちながら、ジリジリと詰めていくのは難しかったと思いますよ。彼はまだ若いですしね。 

――今回の試合を迎えるにあたり、天心選手はちょっとナーバスになっていたようですね。

鈴木 距離を制して、技をたくさん出していたのは天心選手のほうなんですけど、精神的なプレッシャーを掛け続けていたのは堀口選手なんじゃないかって。

――その精神的なプレッシャーはどういうことなんですか? 

鈴木 堀口選手の距離の取り方であり、カウンターのカウンターを狙ってくるあたりの警戒ですよね。それは天心選手が「相手を見て戦った」からです。天心選手は真っ向勝負していたんですけど、「失敗しない真っ向勝負」。それでもあれだけの技を出してるのが天心選手の凄さなんですけどね。つまり武道でいうところの「後の先」です。天心選手は「後の先」の狙いがいつもより多かった。相手を罠に引き込んで、いつのまにか刺すタイプでもありますから。

――なるほど。一方で堀口選手はあらかじめ罠をセットして、そこに誘導するカウンター……と鈴木さんは戦前に評してましたね。

鈴木 はい。相手の動きに合わせて刺す天心選手と、何かしら一点モノで罠をはめ込んでいく堀口選手。たとえば堀口選手は右フックを軸にしたバリエーションがホントに凄いんです。堀口選手が左フックを打って、天心選手がスリッピング・アウェーで避けたあとに、左肩をショルダータックル気味に前に出して右のフックを打つ。あそこで堀口選手が左肩を入れることで、相手との距離が狭まり、天心選手のカウンターを入れづらくしてるんですよ。  

――ド素人にはそんな攻防はサッパリわかりませんでした(笑)。

鈴木 そして天心選手は、その堀口選手の連動を自然に壊しているんです。堀口選手必殺の右フックを見事に潰している。あの瞬間だけでも濃密な技術の応酬があったんですよね。

――素人目で見ると、遠い間合いから飛び込んでいくタイプの堀口選手が、やけに近距離で戦ってるように見えたんですが……。

鈴木 いや、これは天心選手が距離をうまくコントロールした結果ですね。じつは堀口選手はもっと近距離で戦いたかったんだと思いますよ。今回の距離から一つ遠いとお互いの攻撃が当たらない。そこが堀口選手のいつものMMAの距離なんですけどね。

――堀口選手はそこから飛び込んでくるイメージがあったんですね。

鈴木 堀口選手は遠い距離からのイメージが先行しがちですが、いやいやスクランブルも凄く上手なんですよ。さっきも言った左フックのあとにショルダーを入れて距離を潰したり、もしくはタックルする流れが大得意。

――決して近距離で戦えないわけじゃない。そんな穴があったらUFCで勝てないですよねぇ、たしかに。

鈴木 そこが一流のMMAファイターが「なんでもできる」恐ろしさですよね。で、今回の距離はMMAとキックの中間なんですね。なぜ中間距離で戦うことになったかというと、天心選手の右ジャブが今回の大きなポイントになったんだと思います。

――試合を作ったのは右ジャブ。

鈴木 はい。遠い距離だとお互いにスピードがあるから、なかなか当たらない。であるならば、近距離に入ってカウンターのエサを撒きたい。1点モノをセットする堀口選手は中に入りたかったんですが、天心選手は右ジャブでその距離を入らせることはしなかったんです。堀口選手が完全な射程距離に入る寸前に、右ジャブで潰していた。

――はあ〜!! 天心選手はそうやってあの距離を作り上げたということですね。

鈴木 しかも天心選手はインローや左ミドルが当たる距離をキープしてたんです。

――相手の攻撃は受けないけど、自分の攻撃は当たる。ズルい!(笑)。

鈴木 いずれにせよ堀口選手は射程距離の一歩前から攻めざるを得なかったところは感じましたね。もうちょっと近い距離で戦わないと天心選手のことは倒せないんじゃないか……と思っていたのかもしれません。


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試合前に色んな妄想を楽しみ、実際の試合で興奮。試合後は識者の解説でうなる。贅沢だなぁ。

No.1 74ヶ月前
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