主張
辺野古埋め立て申請
県民認めぬ計画は実行不可能
安倍晋三政権が、米海兵隊の普天間基地を「移設」するとの口実で沖縄県名護市の辺野古(へのこ)に米軍の新基地を建設するため、公有水面の埋め立て申請を沖縄県に提出したことに、怒りが沸騰しています。
辺野古新基地の建設も普天間基地の「県内移設」も沖縄県民は認めていません。普天間基地は即時無条件で撤去、沖縄から米軍基地をなくせというのが願いです。安倍政権が県民の認めていない計画を、だまし討ち同然のやり方で進めようとするのは、絶対に許すことができない暴挙です。
だまし討ち同然の暴挙
沖縄県民が新基地建設と「県内移設」を拒否していることは、普天間基地の「移設」に絡めて辺野古への新基地建設が持ち出されてから10年以上になるのに、県民が建設のための杭(くい)1本打たせていないことを見ても明らかです。つい最近も沖縄県内41市町村の首長、議会議長、県議会議員がそろって安倍首相に、「県内移設」反対の「建白書」を提出したばかりです。沖縄県の仲井真弘多(ひろかず)知事も埋め立て申請に対し「不可能だといっているのになぜそれを考えないのか」と、政府に強い不満を表明しているのは当然です。
週末の金曜夕方近くをねらって申請書を提出したこと自体、県民をだまし討ちしたに等しいものです。同日午後になって申立書の提出を決断したという小野寺五典防衛相は午前の記者会見では「申請の時期は未定」と答えていました。週が明ければ県議会が終わり、提出反対の運動が高まることを恐れていわば抜き打ちで強行したとすれば、その卑劣さもきびしく批判されなければなりません。
安倍首相は提出直後、「普天間基地の固定化はあってはならない。沖縄の負担軽減に全力をあげる」と発言しました。これこそ県民を欺くものです。市街地の真ん中にあり、米国防長官でさえ「世界一危険」と認めた普天間基地の撤去を日米で合意してから17年もたつのに、「代替基地」が必要だと撤去を遅らせてきたのは日米両政府です。辺野古の美しい海を埋め立て、2本の滑走路を持つ巨大な新基地を建設するのがなぜ負担軽減になるのか。まさに欺まんです。
安倍首相は2月の日米首脳会談で基地問題での「具体的な対応」を約束しました。埋め立て申請を米国防総省が「計画実現への重要な一歩」と歓迎していることからも、安倍政権が中止を求める県民の声にこたえるより、米側の要求を最優先したのは明らかです。
安倍政権が先日の沖縄県との「沖縄政策協議会」で、沖縄振興策と絡めて基地問題を前進させる姿勢を露骨に示したのは、まさに県民の反対を札束で押さえつける県民愚ろうのやり方です。
国民からの孤立深める
沖縄県民がどんなに反対しても新基地の建設や「県内移設」を進めるというやり方は、文字通り民主主義を踏みにじるもので、民主国家で通用するものではありません。安倍政権が国民の反対を押し切って環太平洋連携協定(TPP)への参加交渉を進め、東電福島原発事故も収束しないのに原発再稼働を策動しているのと同じです。
主権者である国民の意思に逆らう政治が長続きするはずはありません。国民の運動と参院選挙などでの審判で、安倍政権にその事実を思い知らせることが重要です。