主張

アフガニスタン

米国最長の戦争に終止符を

 アフガニスタン戦争は米軍の侵攻開始から12年を超える、米国にとって最長の戦争です。オバマ米政権は戦争で膨れ上がった軍事費の削減や国民の厭戦(えんせん)気分の強まりで戦争の収束を迫られており、来年中に米軍戦闘部隊を撤退させようとしています。

 しかし、その前提として米政権が重視するアフガンとの2国間安全保障協定は宙に浮いたままです。そこに米国の覇権主義的な対テロ戦略の矛盾が表れています。

治外法権的特権に固執

 米国は戦闘部隊を撤退させる一方、治安を引き継ぐアフガン国軍の訓練などのため、2015年以降も一定規模の米軍事力を残す計画です。12年には両国首脳が「戦略的パートナーシップ協定」を締結し、米国はアフガンを「NATO(北大西洋条約機構)非加盟主要同盟国」に指定して、軍事支援の準備を重ねてきました。

 01年の米同時テロへの報復として侵攻した米国は、アフガンを二度とテロリストの発進基地にさせないとしています。恒久的な米軍基地は設置しないものの、アフガンの安定には米軍事力が不可欠だとみています。これには米軍特殊部隊による対テロ作戦も含まれ、戦闘部隊の撤退後も実質的に戦争を続ける恐れがあります。

 安全保障協定は1年近い交渉で草案が作成されましたが、アフガンのカルザイ大統領は調印を拒否しています。米側が軍事・経済援助をテコに締結を迫り、国内有力者らによる国民大会議(ロヤ・ジルガ)も調印を求めたにもかかわらず、同大統領の姿勢は固く、来年4月に予定される大統領選挙後に対応を先送りする姿勢です。

 大きな理由が米軍の治外法権的特権です。協定案は米兵の地位について、アフガンで違法行為を犯した米軍人・軍属の裁判権を米側がもつと規定し、米国はこれを「交渉余地のないもの」だとしています。米軍は無人機攻撃や奇襲作戦によって、子どもを含むアフガン市民に犠牲を出し続け、カルザイ大統領は再三にわたって抗議しています。米国が確保しようとする米兵の免責特権は、アフガン国民にとって耐え難いこの犠牲の容認につながるものです。

 一昨年に米軍がイラクから全面撤退したのも、イラクが米兵の治外法権的特権を認めなかったことが大きな理由でした。オバマ政権はアフガンでも“全面撤退”をちらつかせますが、対テロ戦略上の重要性から、カルザイ政権への脅しにすぎないとみられています。

 安全保障協定案は、アフガンの主権と独立の回復をうたうものの、重大な制限を課しています。占領状態は、反政府武装勢力タリバンとカルザイ政権との交渉の可能性も閉ざしています。

主権回復が不可欠

 和平を実現するにはアフガンの主権回復が不可欠です。米国はアフガンへの干渉をやめ、米軍を撤退すべきです。無人機攻撃や特殊作戦などの戦争行為もきっぱりやめるべきです。

 長い戦争は、軍事力でテロはなくせないことを物語っています。逆に軍事力の行使はテロの拡大を招く危険があります。テロをなくすには、法による裁きを国際協力によって実現することが必要です。同時に、貧困や不正義などテロの温床になっている問題の解決に力を注ぐことが重要です。