主張

14年世界大会閉幕

「核抑止力」論のりこえてこそ

 今年の原水爆禁止世界大会は9日、被爆70年にあたる来年2015年の核不拡散条約(NPT)再検討会議を「核兵器のない世界」への決定的転機とすること、とりわけ核兵器禁止条約の交渉を開始することを訴える「長崎からすべての国の政府への手紙」を採択して閉幕しました。

情勢に応えた大会

 核兵器廃絶はいまや世界の圧倒的な世論です。世界大会は、被爆者を先頭とする運動が、この点で大きな役割を果たしてきたことをあらためて浮き彫りにしました。

 潘基文(パンギムン)国連事務総長はメッセージで、多くの政府が「核兵器使用のもたらす壊滅的な人道的影響」に危機感を持つようになったのは、「被爆者の尽力のおかげ」だと述べ、アンゲラ・ケイン国連軍縮問題担当上級代表は、「日本で始まった署名運動が数百万人分を集めていることは大きな励ましです」と発言しました。

 大会は、「核兵器のない世界」へ前進するには「核抑止力」論をのりこえることがますます重要であることを明らかにしました。

 大会の討論では、核保有国などが「核抑止力」論で核戦力を正当化していることに批判が集中しました。核兵器の非人道性を追及してきたオーストリアのアレクサンダー・クメント大使は、「一部の人の安全保障のために他の人の安全保障を犠牲にしてはならない」と「核抑止力」論克服の重要性を訴え、インドネシアのデスラ・プルチャヤ国連大使もメッセージで「『核抑止力』の概念は、もはや通用しません」と断じました。

 国際会議宣言は「核抑止力」論に「一片の道理も道義もない」ことを徹底して明らかにすることを呼びかけ、そうしてこそ「核保有国の抵抗をのりこえ、『核兵器のない世界』への展望を切りひらくことができる」と強調しました。

 ウクライナ問題、イスラエルのガザ地区攻撃、北東アジアや南シナ海での緊張など、軍事紛争・対立のなか、「核兵器のない世界」へ前進するには、これらの平和的解決が必要であると、大会が訴えたことも重要です。

 いま被爆国日本に求められているのは、「核抑止力」論、米国の「核の傘」から離脱し、核兵器廃絶の先頭にたつことです。広島市の「平和宣言」は核兵器という「『絶対悪』による非人道的な脅しで国を守ることを止め」るよう訴え、長崎市の「平和宣言」も「核兵器によって国の安全を守ろうとする考え」を批判しました。政府はこれら被爆地のメッセージに真摯(しんし)に耳を傾けて、行動すべきです。

 「ノーモア・ウオー」「ノーモア・ヒバクシャ」をかかげてきた世界大会が、集団的自衛権行使容認に反対し、憲法を守り生かす運動、原発再稼働に反対する運動など、安倍晋三政権の暴走にたいする国民的なたたかいと連帯し、合流する場となったことも大きな特徴でした。そして、これまでにもまして若い世代が躍動しました。

ニューヨーク行動へ

 世界大会は、核兵器廃絶デー(9月26日)、国連総会、「核兵器の人道的影響に関する国際会議」(12月)を節目に国際共同行動にとりくむことを呼びかけました。来年4月に再検討会議が開かれるニューヨークでの行動にむけ核兵器廃絶の圧倒的なうねりをつくりだすことが求められています。