
「ドーパミン過剰時代に正気を保つ方法」の続きです!(#1,#2,#3)
このシリーズでは、
「生活はそこそこ安定している」
「別に不幸なわけでもない」
「なのに、なぜか物足りない」
といった現代人にありがちな“謎の空虚感”をテーマに、その正体と対処法をドーパミンの視点から掘り下げております。前回は「ドーパミンを適度に増やす方法」の話をしましたんで、今回からはその逆の方向に取り組んでみましょう。つまり、ドーパミンを適度に減らす方法について、であります。
「ドーパミンを下げる」とはどういうことか?
さて、ここまでは「ドーパミンが少なくてやる気が出ない」って問題に取り組んで来たわけですが、それと同じぐらい厄介なのが、「刺激が多すぎて落ち着けない」って問題であります。SNS、ニュース、買い物、動画、ゲームなどなど、現代は“ドーパミンを出せる装置”がそこら中に転がってますからね。そこで大事なのが「ドーパミンを下げる(=過剰刺激から回復させる)」技術なわけです。
が、その具体的な方法を説明する前に、大事なポイントとして「ドーパミンが高い=幸せ」ではないってポイントを押さえておきましょう。ここまでのシリーズで何度か触れた話ですが、ドーパミンってのは「快楽をもたらす物質」というよりは、「もっと欲しい!」って気持ちを作る物質でした。新しい可能性を見つけると、「ほら!飛びつけ!」と私たちをうながす仕組みなんですな。
で、もちろんこれは生存に欠かせない仕組みなんですが、現代のような安全性が高まった世界では、この仕組みが暴走しちゃうのが問題なんですよね。というのも、私たちの祖先が暮らした原始の環境では、
- 見慣れない音=捕食者かもしれない
- 新しい場所=食料があるかもしれない
- 未知の人物=敵か味方か分からない
みたいに、「新しいもの」や「見慣れないもの」に飛びつけるかどうかが生存に直結しておりました。だからこそ、未知の刺激に強く反応する神経回路が進化したわけです。
ところが現代がどうかと言いますと、
- 1日中、命の危険はほぼゼロ
- 食料は冷蔵庫にある
- 天候も屋内なら関係ない
- 外敵もほとんどいない
みたいな感じじゃないですか。つまり、本来なら「ドーパミンシステム」を常時フル稼働させる必要はないはずなんですよ。
にもかかわらず現代社会は、安全さが増えた代わりに、「人工的な新規刺激」が無限に供給されるようになったわけです。たとえば、
- SNSの無限スクロール
- ショート動画の連続再生
- 速報ニュース
- ガチャやランダム報酬設計
- ワンクリックで買えるECサイト
これらはすべて、「これは新しいかもしれない!」「次は当たりかもしれない!」という報酬予測誤差を連続発生させる装置として設計されております。
これらの装置がやっかいなのは、いずれもが“命がけで探索する必要がない”ように作られているところです。原始の世界においては、「獲物の探索」ってのはエネルギーをめっちゃ消費する活動であり、それゆえにリスクも高かったはず。これに対して、現代ではスマホ上で指を動かすだけで「探索」ができてしまうため、昔と比べてコストが極端に低いんですよね。
つまり、現代の環境では、
- 危険がない
- コストがない
- 刺激は無限
という状態が普通になっており、そのせいでドーパミン回路もつねに働き続けるハメになってるわけです。つまり、かつては希少だったはずの“新規性”が、現代では過剰供給されているんですな。
その結果、何が起きるかと言いますと、
- 刺激に慣れて、同じことでは満足できなくなる(ドーパミンに耐性がついちゃうから)
- 快楽は薄れるのに、激しい欲求だけ残る
- 結果、“気持ちよくないのにやめられない”が発生する
みたいな困った問題につながっていくわけです。なので、ここで言う「ドーパミンを下げる」ってのは、別に「気分を低下させよう」や「やる気を下げよう」って話ではなく、過度な刺激でオーバーヒートしちゃった報酬系を回復させるのが主目的になります。
言い換えれば、ドーパミンを下げるのは「人生をつまらなくするため」ではなく、むしろその逆。ドーパミンを下げることにより、“普通の刺激で満足できる状態”を取り戻すためとも表現できるでしょう。
強い刺激を浴び続けると、私たちはドーパミンに慣れちゃって、やがて弱い喜びでは満足できない体になってしまいます。しかし、ここで刺激を整えると、コーヒー、散歩、会話、読書みたいな地味な快楽が復活してくれるんですな。こういった、日常の刺激にまた喜びを見いだせるようになるのが、ドーパミンを下げる大きなメリットだと言えましょう。
ドーパミンを下げるには「3つの要素」が必要である
では、ドーパミンを正しく「下げる」ためにはどうすればいいのか? ドーパミンの影響から自由になるためには、大きく3つの要素をコントロールする必要があります。すなわち、