
「真の「科学的思考力」を鍛えるクイズをやってみよう!」の続きです(#1)。
このシリーズでは、ポップサイエンスや科学の報道にありがちな落とし穴をチェックしつつ、「ものごとを科学的に考える」とはどういうことか?を説明しております。パレオチャンネルでは、「科学的な思考が大事!」と口を酸っぱくして言ってますけど、実際にどのように考えるべきなのか?って問題ですな。
そこで、こないだは「空腹の裁判官は判決が厳しくなる!」という話を取り上げました。簡単に言えば、前回のポイントは、
- それっぽい説明は、必ずしも正しいとは限らない
- 相関があっても、原因がわかったとは言えない
- 研究の“測っていないもの”に注目すると、別の仮説が見えてくる
というところでした。ということで、今回も同じく、昔からよく聞く科学っぽい話を検証してみましょうー。
珍妙な科学問題2:「ストレスで胃に穴があく」は本当か?
さて、今回のテーマは「ストレスで胃に穴があくは本当か?」であります。これは、かなり多くの人が一度は聞いたことがある話でして、仕事が忙しすぎる人に対して、
- 「そんなにストレスを溜めたら胃に穴があくぞ!」
みたいに言うことは、いまでも普通にありますからね。しかも、この話は直感的にもかなり納得しやすいところがありまして、誰でもストレスがたまると胃がキリキリするし、緊張すると食欲がなくなるし、不安が強いと吐き気がすることもあるはず。となると、
- ストレスが強い
- 胃酸が増える
- 胃の粘膜がやられる
- 胃に穴があく
という流れは、なんとなく自然に見えるわけです。実際のところ、「ストレスで胃に穴があく」って主張はネットでも普通にありまして、
「強いストレスが続くと胃酸の分泌が増え、胃の粘膜が傷ついて胃潰瘍になることがあります」
「責任感が強い人や神経質な人は、ストレスをため込みやすく、その結果として胃に穴があくこともあるので注意が必要です」
みたいな文章はいくらでも見つかるわけです。それぐらいベタな考え方だってことですな。
この説が広まったのは20世紀前半から中盤で、この頃の医学では、胃潰瘍の主な原因は、
- ストレス
- 性格
- 食生活
- 生活習慣
- 胃酸の出すぎ
あたりだと考えられていたんですよ。特に20世紀前半から中盤にかけては、「胃潰瘍はストレス病である」という見方がかなり強かったもんで、「忙しいビジネスマンが胃を壊す!」「神経質な人が胃を壊す!」「責任感が強い人ほど胃に穴があく!」みたいなイメージが強かったんですよ。なんとなく納得感のある説明ですよね。
が、ここで一歩踏みとどまって考えたいのが、「この説明は、本当に原因まで特定できているのか?」という問題であります。「ストレスで胃が痛くなる」はかなり実感しやすい話ですが、それと「ストレスが胃潰瘍の主因である」は別の話なので、ここを混ぜてしまうと、かなり雑な因果関係を想定しちゃうことになります。
ステップ1 まずは“常識”をちゃんと見てみる
ということで、この「ストレスで胃に穴があく」って説を検討してみましょう。「ストレスで胃に穴があく」という説明は、ざっくり言えば、
- 強いストレスを受ける
- 胃に負担がかかる
- 胃の粘膜が壊れる
- 胃潰瘍になる
という流れで構成されてまして、これは一見すると、かなり筋が通っているように見えるわけです。実際、ストレスがあると胃が痛くなる人はいますし、緊張で食欲がなくなる人もいるので、「ストレスが胃に悪い」というところまでは、体感的にも納得しやすいでしょう。
しかし、ここで注意したいのは、毎度おなじみ「相関が因果関係っぽく見える」って考え方であります。簡単におさらいすると、これはふたつの現象が同時に起きているからといって、一方がもう一方の原因だとは限らないって話でした。
では、この「相関と因果の混同」をもとに、「ストレスで胃に穴があく」って説を検討してみると、どのような論理的な穴が考えられるでしょうか? 以下のような文章を読んだときに、まず疑うべきことはなんでしょうか?
ある調査によれば、強いストレスを感じている人ほど胃の不調を訴える割合が高く、研究者は「ストレスが胃に大きな負担をかけ、胃潰瘍の原因になる可能性がある」と説明している。
答えを考えてみて、思いついたものを紙に書き出してみましょう。