
「感情知性を、あらためて学び直そう!」の続きです!(#1,#2)
このシリーズでは、AIの時代こそ感情知性が大事だよねーって話をしております。
というのも、文章の要約、企画のたたき台、情報収集などは、AIがかなりの速度でやってくれるようになった昨今。以前なら「知識が多い」「処理が早い」だけでどうにかなった場面が、いまや通用しなくなりはじめたわけです。となると、人間側に残る大きな仕事は、「自分は何を大事にしたいのか」「この状況で誰にどう関わるのか」「いま湧いている感情をどう扱うのか」といった部分になってくるじゃないですか。
ここで必要になるのが、ズバリ「感情知性」であります。ご存じのとおり、感情知性ってのは、自分と他人の感情を理解し、感情に振り回されず、必要に応じて行動や人間関係に活かす力のことでして、人間としての判断や関係づくりには欠かせないんですな。ここはAIには代替されにくいでしょうし。
で、前回まで感情知性について間違いやすいポイントを押さえてきまして、ここで皆さま「感情知性とは?」って問題について“あること”に気づいたんじゃないでしょうか。それは、ずばり「感情知性の出発点は、感情をコントロールすることではない」というものであります。
ここまでさんざん書いてきたとおり、感情知性というと「いつも冷静」とか「絶対に怒らない」とか「不安にならず行動できる」みたいな、感情に振り回されないような人のイメージがありますけど、そこは大事なポイントではなし。すべての根底にあるのは、
- 自分の内側で何が起きているのかに気づく
ってスキルなんですよ。ここは意外と指摘されないポイントなんですけど、自分の感情に気づけなければ、感情を調整することも、他人の感情を読むことも、感情を行動に活かすこともできない。
ってことで今回は、感情知性の根源である「感情に気づく力」を掘り下げてみましょう。
「なんかしんどい」を放置すると、感情は暴走しやすくなる
さて、「感情に振り回されない人」と聞くと、いつも冷静で、怒らず、不安にならず、淡々と行動できる人を思い浮かべるかもしれません。しかし、前回も見たとおり、感情知性において大事なのは「感情を感じないこと」じゃありません。むしろ逆で、感情に気づけない人ほど、感情に振り回されやすくなるものなんですよ。
これがなぜかと言えば、「感情を見ないぞ!」とがんばってみたところで、決して感情が消えるわけではないからです。たとえば、仕事で上司に軽く注意されたあとに、なんとなく気分が悪くなり、家に帰っても落ち着かず、スマホを見続けちゃったとしましょう。このとき本人の感覚としては、
「今日はなんか疲れてる」
「なんかしんどい」
「ちょっとイライラする」
であるケースが多いじゃないですか。しかし、実際にはその「なんか」の中には、いろいろな成分が混ざってるもんでして、
- 「自分は能力がないと思われたのでは?」という不安かもしれない。
- 「あの言い方は不公平だ」という怒りかもしれない。
- 「期待されていないのでは?」という悲しみかもしれない。
- あるいは、単純に睡眠不足で身体が緊張しているだけかもしれない。
みたいに、いろんな思考や感情がドバっと脳内を占めてるケースが多いはずであります。ここを全部まとめて「なんか嫌だなぁ」ぐらい処理しちゃうと、次に取る行動も雑になりまして、
- やけ食いする。
- SNSを見る。
- 人に冷たくする。
- 予定を先延ばしする。
- 不機嫌なまま黙り込む。
みたいな感じになってしまうわけですね。どれも一時的には楽になるかもしれませんが、問題の正体がわからないままなので、同じような問題が起きればまた同じ行動が起きることになるでしょう。いわゆる「感情知性が低い人」が、こういった自己破壊的な行動を取りがちなのは、こういうメカニズムがあるからなんですね。
その点で、ちゃんと「感情に気づく力」があれば、「自分はいま何を感じているのか」を細かく見ることができるため、感情の衝動と実際の行動のあいだに、少しだけ間を作れるでしょう。そしてこれは、感情知性の土台になるわけであります。
「感情に気づく」ときの4つのポイント
では、「感情に気づく」能力を鍛えるためには、どうすればいいのでしょうか? 感情に気づくってのは、過去に「無(最高の状態)」でも強調したポイントですが、ここでよく誤解されるのが「ハイハイ。感情のラベリングね」みたいに理解されるケースであります。「私は怒っている!」とか「私は不安だ!」って感じで、自分の感情に名前をつけてやるだけで、事足れりとしちゃうようなパターンっすね。
まぁ、これも大事な作業ではあるんですけど、実際に感情知性のレベルまで達するには、これだけじゃ不十分なことが割とあるんですよね。というのも、感情は単なるラベルではなく、思考や身体反応や行動衝動まで含んだ複合的な状態なので。
そこで考えたいのが、私たちの感情を構成するものはなにか?ってポイントであります。どんな分野でも対象の構造がわからないと、どこを見ればいいのかも、どう扱えばいいのかもわからないですからね。まずは対象の構成要素を理解するのが大事。
それでは、感情の構成要素を見てみましょう。私たちの感情は、たいていの場合、次の4つがセットになっております。
- 頭に浮かぶ考え
- 身体感覚
- 行動したくなる衝動
- 感情の強さ
この4つを見ると、ただのラベリングだけでは見えなかった部分までわかって、「なんか嫌だ」の解像度が一気に上がるはず。それでは、それぞれの要素をチェックしつつ、実際に「感情に気づく力」を高めるワークをしてみましょう。
要素1. 「頭に浮かぶ考え」に気づく
「何か嫌なこと」が起きたら、まずは、感情が出たときに頭の中で何を考えているかを見てみましょう。たとえば、不安なときには、
「失敗したらどうしよう」
「嫌われたかもしれない」
「自分には無理だ」
「また同じことになる」
みたいな考えが浮かびやすいでしょう。